岐阜県内の高校の校長先生へのインタビュー企画「ぎふ高校研究」ですが、今回取材したのは高校ではありません。岐阜工業高等専門学校(岐阜高専)です。工学や建築などものづくりの基礎知識を学ぶ5年制の岐阜高専。大塚友彦校長(59)は「私たちが育てているのは『ソーシャル・ドクター』」と言います。大学への受験勉強に縛られず、ロボットや小型衛星など好きなことに没頭できる環境があると強調します。高校でも大学でもない「高専」、その独自の学びとは。(岐阜新聞デジタル独自記事です)

岐阜高専=本巣市上真桑
 岐阜工業高等専門学校 所在地は本巣市上真桑。機械工学科、電気情報工学科、電子制御工学科、環境都市工学科、建築学科があり、各学科とも1学年1クラス40人。愛称は「ぎふこうせん」。5年制。

 ―岐阜高専の特徴は。

 本校は15歳で入学し、科学や技術を使って人々や社会に貢献できる理系のエンジニアを育成する学校だ。「社会のお医者さん」という意味で「ソーシャル・ドクター」を育てている。社会が病気になったら技術で治し、また社会が病気にならないよう予防する。

 テクノロジーの進化で世の中はどんどん変わってきた。社会がよりよい方向に進むよう、また悪くならないようにするのが「ソーシャル・ドクター」の役割だ。

 今までにないテクノロジーで新しい常識、考え方を生み出すこともできる。クリエイター的な側面も高専の学びにはある。そこが高校とは違う点だ。

 
 おおつか・ともひこ 東京都出身。博士(工学)。東京工業高等専門学校電子工学科教授、釧路工業高等専門学校校長などを経て本年度から現職。

 ―「ソーシャル・ドクター」を育成するのに大事にしていることは。

 三つある。一つが「理論と実践力の育成」だ。授業で理論を学ぶだけでなく、実験で自分の手を動かして確かめる。理論と実践を組み合わせ、セットで学ぶことで必要なときに使いこなせるレベルまで力を伸ばす。

 二つ目は「知恵の教育」。本物のフィールドワークに挑戦することで、知識が知恵にレベルアップする。3、4年生は仲間とチームを組み、地域や企業の課題解決に挑戦する。高校などで行っている探究学習とは違い、本校の学生は実際にモノを作ったり実証実験をしたりする。

 三つ目は「好きなことにトコトン夢中になれる校風」だ。高校では大学受験の勉強をせざるを得ないが、本校は15歳から20歳までの5年間、好きな活動に没頭できる。自動車設計や、ロボット、...