2025年夏の甲子園ベスト4の礎を築いた県岐阜商前監督の鍛治舎巧さん。「No.1への道」と題し、アマチュア球界の第1人者である名将がチームづくり、選手育成、戦略・戦術のすべてをあますところ公開する。(岐阜新聞デジタル独自記事です)

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~理想の指導者像を考える~

 私の指導理念は、自主・自立・自治。試合中もベンチ前の円陣(車座ミーテイングと呼んでいる)に入ることはほとんどない。極めて不利な展開になった際、簡潔に指示を出す程度だ。

 言いたいことは山ほどあるが試合をするのは選手。必要なことは日々の練習で伝えてある。

 ピンチを迎え、マウンドに内野手とバッテリーが集まり、ベンチから監督の指示を伝える伝令が走る。審判が歩み寄り早く終えるよう促す…高校野球でよく観られる光景だが、万事、監督主導のチームでは、底が知れている。

岐阜県が甲子園でナンバーワンになるためのノウハウを語る鍛治舎巧さん

 MLBで本格導入されたピッチクロック(投手の投球動作に入るまでの時間制限&牽制球制限・打者の制限時間内での打つ準備完了)にピッチコム(投手・捕手の腕やグラブに付ける九つのボタンからなる通信機器によるサイン交換)は、次回WBCで確実に導入されるだろう。

 日本球界でも球場の施設整備が必要だが、近々にはNPBをはじめとして間違いなく導入されると思う。これまでのように間を取るためのタイムや、マウンドに集まっての徹底事項の共有など、悠長なことは出来にくくなるのは必定だ。

 アマ球界にも、この流れは順次スピードを増して下りてくる。心技体に未熟さが残る中学・高校の指導者にとっては頭の痛いことだ。そうなれば、勝敗の行方は選手の主体性・思考レベルが決め手となる。

 選手は駒ではなく、主体的に考えプレーする主役だった。それを一歩も二歩も深化させるべき状況が、目の前に迫っている。ことは急を要する。それらを踏まえた上で、指導者はいかにあるべきか、熟考する必要がある。

 理想の指導者像とは何か?私は、先人の教えの中で、とりわけ老子の教えが一番だと思う。

『老子曰く、最善の指導者について言えば、衆人は、その存在に気付かない。
次善の指導者について言えば、衆人は、栄誉と称賛を贈る。
その下の指導者は、おそれられる。
そのまた下の指導者は、きらわれる。
最善の指導者が、仕事を成し遂げた時、衆人曰く「俺たちが俺たちだけでやったのだ」と』