
1着でゴールしたアオラキ&加藤聡一騎手。得意の笠松で3勝目を飾った
「ラキちゃん、やった~」「キャー」とアイドルホースの快走に絶叫。「一陣の白い旋風」が先頭でゴールを駆け抜け、ラチ沿いファンらを熱狂させた。
この夏、猛暑で苦戦続きだったアオラキだが、秋風で涼しくなった9月25日、白毛のまぶしい馬体を躍動させた。笠松競馬のスターホースは見違えるような圧巻の走りを見せ、6馬身差で完勝。得意の笠松マイル戦で3勝目を挙げ、JRA復帰条件をクリアした。この日はアオラキの母カスタディーヴァの11歳誕生日でもあり、最高のバースデープレゼントになった。
■笠松コース、1600メートル戦が得意
アオラキはゴールドシップ産駒で牡5歳。JRAでは17戦3着3回と勝ち切れず。地方・名古屋に移籍し、笠松を主戦場にA級で2勝を飾った。その後、浦和→名古屋→高知を経て、8月から笠松の笹野博司厩舎に所属。コース適性はバッチリ。特に3コーナー奥のスタート地点からすぐ4コーナーへと向かう1600メートル戦が大好き。コーナリングのフットワークが良く、4戦2勝と良績を残していた。

1周目ゴール前は4番手で追走した
笠松移籍後は1400メートルで6着、5着。渡辺竜也騎手、塚本征吾騎手のトップジョッキーとのコンビでも馬券圏内に突っ込めなかった。それでも暑さが和らぎ、体調もアップ。陣営では「マイル戦でもうひと押しが利くかも。この馬なりに頑張っている」と手応えを感じていた。
レースの1時間ほど前には「アオラキ推し」の熱狂的ファンの支持を集め、単勝1番人気だったが、結局5番人気。昨春にはA級7組と「下剋上特別(A4)」で勝利を挙げており、B4級なら実績上位。気分良く走れば、勝機十分の一戦となった。
■アオラキファンが熱い視線、いつもより落ち着いてパドックを周回

パドックを落ち着いて周回するアオラキ
この日のアオラキはパドック周回からいつもと様子が違っていた。頭や首などをグネグネさせる姿はほとんど見られず。スタンドからも「いつもよりも落ち着いているな」との声が聞こえてきた。「そろそろ勝たないと」。何か期するものがあるような静かなる闘志。こんな時こそ「一発やってくれそうだ」という気配が充満。馬券は単複の「アオラキ頑張れ馬券」を購入した。
パドックでは2人引き。返し馬はいつものように正面スタンド前から西スタンドがある4コーナーへと向かい、ファンサービスは忘れず。乗り役は中央、地方を含めて加藤聡一騎手で実に17人目となった。
ラチ沿いに駆け付けた熱烈なアオラキファンはカメラやスマホを手に熱い視線を注ぎ、「応援タオル」などを掲げて「ラキちゃん、頑張れ~」と懸命に声援を送った。
■抜群の手応え、1コーナーで一気に先頭を奪った
レースは7頭立てで、4枠から好スタート。ラシアスが先手を奪い、1周目のゴール前でアオラキは4番手につけた。スローペースで流れ、抜群の手応えで1コーナーの残り1000メートル地点では押し出されるように一気に先頭を奪った。マイペースで逃げる形になり、3コーナーでは後続を引き付けて半馬身ほどリードした。

ゴール手前、後続を一気に引き離して突き抜けたアオラキ
■直線一気のスパート、勝利を確信した女性ファンら大歓声
そのまま4コーナーを回り、最後の直線では一気にスパート。後続を6馬身も突き放す圧倒的なパフォーマンスを見せ、昨年5月以来19戦ぶりの勝利を飾った。ゴールの瞬間、ラチ沿いやスタンドからは勝利を確信した女性ファンらが大興奮。「いとしいラキ君」の快走をたたえる歓声が響き渡った。まばゆい白毛のアイドルホースは、やっぱり「白星」がよく似合う。
2着にラシアス(筒井勇介騎手)、3着には1番人気のラントリサント(渡辺竜也騎手)が入った。アオラキの単勝は1260円、複勝490円。3連単は6810円で決着した。

ゴール後、久々の勝利の余韻を味わう白い馬体
■加藤聡一騎手「強かったですね。ペースが遅かったからハナに行った」
ゴール後、装鞍所に戻ってきたアオラキと加藤聡一騎手に勝因などを聞いた。
1コーナーを過ぎて早めに先頭を奪った。「強かったですね。ペースが遅かったからハナに行っただけです。同厩舎の馬もいましたし」。アオラキはこれまでは差しの競馬も多かったが、レースプランについては「全然何も考えていなかった。きょうは展開が遅かったこと、それに尽きますよ」と出たとこ勝負で好走につなげた。

装鞍所へ戻り、スタッフに迎えられて1着の枠場に入ったアオラキ
結果的には完勝だった。「ふたを開けてみればですよ」とスローペースになった展開がはまったという。人気馬で笠松に転入してきて苦戦していたが、加藤聡一騎手の好騎乗で勝つことができた。「競馬なんで、しょうがないんじゃないですか。印が付いていても勝つ時もあれば、負ける時もあるんで。取りあえず勝って良かったですよ」と笑顔で語った。
アオラキは名古屋にも2度所属して走っていた人気馬。笠松ではファンの声援もすごかった。「この馬のファンはいっぱいいますよね。僕は初めて騎乗しましたが、背中の感じはすごくいい馬ですよ」。名古屋の騎手ではあるが、意欲的に笠松に出向いてアオラキの追い切りにも乗り、好調さを感じ取っていた。

パドックを出て、気合満点のアオラキ
■笹野調教師「騎手がうまく乗って気分良く行かしてくれた。調子も良かった」
ゴール前はすごく強い勝ち方だった。アオラキを管理する笹野調教師は「きょうは騎手がうまく乗ってくれました。レースは初騎乗でしたが、追い切りにも乗ってくれていたんで感触はつかんでいた。ああやって気分良く行かしてくれたのが一番良かったです。早めに先頭に立ったのが大きかったですね。調子も良かったんで」と、やはり好仕上げが素晴らしいレースぶりにつながった。
そんなに人気はなかったが「ここ2回がもうちょっとの出来だったから。でも勝てて良かったです」。これで3勝目となったが「中央へ行くかどうか、一応帰るかもしれないですね。僕が決めることじゃないんで、まだ分からないですが」。JRA復帰条件は笠松での3勝目でクリアしたので、あとはオーナーさんの判断次第となる。
■ファン「ベストの1600に延びてスムーズな競馬ができた」
スタンドのファンからも「距離がベストの1600に延びてスムーズな競馬ができたし、1コーナーからすんなりハナに行けたのが良かった。パドックでは前2回よりもすごく落ち着いていた。前はメチャ入れ込んでいたが、今回はおとなしくてスムーズに回っていたので一発あるかなあと思った。スタートから押していったのでなく、すんなり4番手につけて、そこからの流れでまくっていって勝つことができた」

返し馬でスタンド前を駆けるアオラキに熱い視線を送るラチ沿いのファンたち
■「これで中央に帰れる、みんな大喜び」
女性ファンも「きょうは、ぐねぐねしてなかったよね。聡一君が返し馬もいい感じで動かしていた。駆け付けたファンは『これで中央に帰れる』って、みんな大喜びでしたよ。毎回来ている人たちが応援タオルを持つなどして。ゴールでは『ラキくーん』とか叫んでいましたね」
「きょうは聡一君だったし、(純白のアイドルホースに)『名古屋の貴公子』が乗ったんで勝てたのでは。みんなアオラキを見ている時の表情がすごく生き生きしていて、アイドルを見るような感じで目をキラキラさせていいね」
アオラキはパドックでもキョロキョロせずに本当に落ち着いていた。やはり競走馬は当日の気配が大事で、こんな時は「意外と勝つかもしれない」といった予感もあった。

アオラキと共に笠松で人気を集めたハルオーブ(手前)。パドックを周回、同じレースで走った
■いつかハルオーブとの「アオハル」対決再現あるかも
一時笠松に所属していて、アオラキと同じレースでも走った人気馬ハルオーブは、一足早く3勝を挙げてJRA復帰を果たした。初戦は3着だったが、その後やや苦戦。それでも元気いっぱいで、次は新潟で走りそうだ。
笠松では昨年4月、アイドル2頭の直接対決でファンがラチ沿いをびっしりと埋めた。「アオハル」のスターホースとして人気を集め、ハルオーブ3着に対してアオラキは5着だった。もしアオラキもJRA復帰を果たせば、美浦所属で再戦が実現する可能性もある。いつかハルオーブとの「アオハル」アイドルホース対決がまた見られるかもしれない。

アオラキとハルオーブの「アオハル」アイドルホース対決
笠松ファンとしては、地元でもう少しアオラキを見たい思いもあるが、次走はどこでどんな走りでファンを楽しませてくれるのか。「芦毛・白毛」限定のウマ娘シンデレラグレイ賞も開かれているオグリキャップの聖地から新たなストーリーが動き始めた。
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(筆者・ハヤヒデ)電子メール ogurinosato38hayahide@gmail.com までお願いします。
☆最新刊「オグリの里4挑戦編」も好評発売中
「1聖地編」「2新風編」「3熱狂編」に続く第4弾「挑戦編」では、笠松の人馬の全国、中央、海外への挑戦を追った。巻頭で「シンデレラグレイ賞でウマ娘ファン感激」、続いて「地方馬の中央初Vは、笠松の馬だった」を特集。
林秀行(ハヤヒデ)著、A5判カラー、196ページ、1500円(税込み)。岐阜新聞社発行。笠松競馬場内・丸金食堂、ふらっと笠松(名鉄笠松駅)、ホース・ファクトリー(ネットショップ)、酒の浪漫亭(同)、岐阜市内・近郊の書店、岐阜新聞社出版室などで発売。岐阜県笠松町のふるさと納税・返礼品にも。