「練習こいよ」「えっ、もう帰るの」。先輩の3年生捕手小鎗稜也にため口で話しかけていた新チームの主将2年内山元太が、「先輩たちとまた試合ができて、うれしくてたまらない」というあふれる思いを3安打4打点で爆発させ、甲子園覇者を撃破した。国民スポーツ大会高校野球硬式は29日、大津市のマイネットスタジアム皇子山で1回戦4試合を行い、今夏甲子園ベスト4の県岐阜商が沖縄尚学を5―1で下し、準決勝に駒を進めた。(岐阜新聞デジタル独自記事です)

◆秋県大会で発揮できず…先輩と培った打席での対応力、新主将が国スポで見事に実践
今夏甲子園ベスト4に躍進し、岐阜県はおろか全国に感動の渦を巻き起こした県岐阜商。同校16年ぶり、岐阜県としても6年ぶりの夏4強の成果をいかに今後につなげるかが期待された新チームだったが、県大会初戦で岐阜総合に4―5のまさかの敗退を喫し、センバツへの道を閉ざされた。
4強躍進のキーワードだった各選手の〝打席での対応力の高さ〟が発揮できなかったという敗因を、一番強く痛感したのは前チームでも3番だった新主将の内山だ。
「負けてしまったことは仕方がない。国スポという先輩たちと一緒にまた、野球ができる幸せをかみしめて、楽しもう」と目標を切り替え、練習に励んできた。
国スポ出場が決まっているとは言え、一度、現役引退した3年生。今夏までのような全面的な練習ではなく、「3時半にきて、6時に帰るとか調整程度だった」と小鎗。だが、先輩たちと野球ができることが楽しくて仕方のない内山は、小鎗が練習にこないと「こいよ」と呼び掛けたり、早く帰ることには「もっと一緒に練習しよう」と、ねだったりした。
いよいよ迎えた国スポ1回戦。甲子園準決勝以来となった先輩たちとの公式戦で、内山は改めて3年生の偉大さを実感する。「自分で考えをめぐらす打席での対応力はやっぱりすごい」。その思いが内山の大活躍を生む。
相手先発は左の変化球投手。二回表に1点を先制され、どうしても追いつきたい三回裏1死満塁。第2打席の内山は「ここは外野フライを打つ場面」と高めのストレートを思い切り振ると「うまく、センターの前に落ちてくれた」と同点打となった。

五回の1死一塁。「2ボールになったので、ストライクを取りにくる甘い球を狙う」とアウトコースのまっすぐを会心の一打。左翼越えの二塁打となり、一走の渡辺璃海が生還し、待望の勝ち越し点をたたき出した。
これで終わらないのが新主将。六回、...