介護施設が関わる健康麻雀・駄菓子屋・「かふぇ」 住民の参加、大歓迎(りんどう 安八郡神戸町)

 「年齢は重ねたけれどもまだまだ元気。介護施設にお世話になる日なんて想像できない」という方は多いでしょうが、病気やけがをきっかけにある日突然、介護が必要な生活になる可能性は誰にでもあります。それまでに介護施設との接点が全くないと、途方に暮れてしまうのも無理はありません。

 そこで元気なうちから介護施設を身近に感じてもらおうと、特別養護老人ホーム、小規模多機能型居宅介護、グループホームからなる地域密着型複合施設りんどう(安八郡神戸町)では、地域住民と施設をつなぐさまざまな活動を行っています。

毎週火曜日に行われている健康麻雀。施設利用者だけでなく地域住民も参加して、真剣な表情で次の一手を考えている

 本年度から毎週火曜日、健康麻雀(まーじゃん)の時間を設けています。利用者だけでなく、地域住民も参加できるようにし、もともと麻雀が好きだった方、麻雀は未経験だったけれども友達に誘われて毎週来るようになった方など毎回15人ほどが参加しています。

 健康麻雀の場として施設を開放するようになった一番のきっかけは、りんどうを通所で利用していた男性が施設に行くことを渋ったこと。理由を探る中で、他の利用者とのコミュニケーションや、歌や体操などのレクリエーションに負担を感じていることが分かり「麻雀ならやりたい」と話したことから取り入れることにしました。

 健康麻雀の時間中、参加者はコーヒーを飲みながら気ままに楽しんでいます。ちなみにきっかけとなった男性は、しばらくは健康麻雀の日だけ通い、次第に施設自体にも慣れ、入所となった今は落ち着いた毎日を過ごすことができているといいます。

 りんどうの事務担当で、神戸町の認知症地域支援推進員や認知症初期集中支援チームメンバーでもある浅野さんは「これまでの経験から、自宅で暮らす高齢男性が家から地域コミュニティーや介護事業所へ通うことは、最初は難しいことだと感じています。今回は麻雀でしたが、とにかく集まって楽しんでもらえる場を提供できれば」と話しています。

神戸町の委託を受けたNPOと連携して施設前で駄菓子屋を開くことも。誰でも買いに来ることができ、地域住民と利用者が自然と触れ合う機会になっている
神戸町立図書館で月1回行われている「つなぐかふぇ」。司書による読み聞かせを取り入れるなど、誰でも参加しやすい雰囲気を心がける

 さらに昨年度からは年3回、神戸町の委託を受けた地元NPOと連携して「駄菓子屋さん」を開いています。うち2回はりんどうの玄関先で開催し、誰でも買いに来ることができます。施設で生活する利用者が介護職員に車いすを押してもらいながら買いに来ることも多く、地域の子どもたちと自然に交流できる機会となっています。

 他にも近くの神戸町立図書館で月1回、「つなぐかふぇ」を開催。地域住民や図書館利用者らが参加し、認知症地域支援推進員や認知症サポーターの協力で運営しています。福祉に関する説明に時間を割くわけではなく、工作や図書館司書による本の紹介などで楽しい時間を過ごしてもらうことが狙いです。

 浅野さんは「介護がまだ必要でない段階の方が、自然と施設に関われる機会を設けることで、施設を身近に感じていただきたい。そして『介護の困りごとは、とりあえずりんどうを運営する善心会に言えば何とかなる』と地域の方に思っていただければ」と話しています。