音声入力やアシストスーツ導入 介護の質向上につなげる(西美濃さくら苑 揖斐郡池田町)

 揖斐郡池田町の介護老人保健施設「西美濃さくら苑」は、元号が令和に代わったタイミングを「人とAI(人工知能)の共助元年」と位置付け、ケアの科学化に注力してきました。着手から7年近くが経ち、取り組みは進化の一途を続けています。最新アイテムは、事務職員が業界紙などで把握し、すでに導入している施設があれば県内外問わずに訪問して確認するという熱の入れ方。他施設の職員と情報交換することで、すでに導入している機器であっても、使いこなせていなかった機能について知れ、生産性向上につながったケースもあると言います。

利用者の処置をした直後に、ヘッドセットを使って音声で介護記録を入力する介護職員

 タブレット端末を使った介護記録の記入は2020年からしていましたが、今年の春からは音声入力にも対応。ヘッドセットを身に付けて「オッケーほのぼの、○○さんの…」と話すと携帯端末やパソコンにデータが送信されます。処置の直後に入力できるようになったため、より正確な状況を記録できるようになりました。また、入力のために介護の手を止めることもなくなり、利用者と向き合う時間も増えました。ヘッドセットはインカムとしても活用しています。

移乗を伴う介助をする際に黒色のリュックのような形状のアシストスーツ「フレアリー」を装着することで、腰への負担軽減につなげている

 2年前には、登山リュックのような形状のアシストスーツ「フレアリー」を10台導入しました。腰に取り付けるタイプの作業支援ロボットはその前から使っていましたが、小柄な体格の職員が使いづらい形状でした。フレアリーは軽くて装着部が柔らかいため、誰でも使用することができます。抱きかかえる介助だけでなく、歩いたりしゃがんだりする際にも負担が減ることから、おむつ交換時の着用をルール化。高齢の介護助手がシーツ交換をする際も使用し「楽になった」と好評です。

 看護師長の石原さんは、「私も含め、職員みんなが最新機器をスムーズに使いこなし、心から便利さを感じるようになるにはもう少し時間が必要」と前置きしながらも、効率化が進んだことで遅番の終業時間が1時間前倒しの午後6時となり、特に子育て中の職員から好意的な声が上がっています。石原さんは「AIの力を借りながら、自分で確かめながら進めていくことで知識が深まっていく。AIと共助しながら介護の質向上につなげていきたい」と話しています。