「やばい、勝ってまう」「めちゃめちゃ脳汁出た」と歓喜のゴール。その瞬間、左手を振り抜き会心のガッツポーズ。
地元エースの渡辺竜也騎手が名古屋のケイズレーヴ(牡4歳、榎屋充厩舎)で大外一気の豪快な差し切りを決め、第35回オグリキャップ記念(SPⅠ)を制覇した。上位人気3頭に騎乗した御神本訓史、笹川翼、吉原寛人騎手という地方競馬の顔でもある全国の名手を2~4着に従えて「重賞ハンター」としてデッカイ獲物をゲット。普段は冷静な男もハイテンションで大興奮となった。
笠松の騎手がオグリキャップ記念を勝つのは、2004年にミツアキタービン騎乗の東川公則騎手以来で22年ぶり。名古屋、金沢、高知、兵庫、南関東勢に優勝をさらわれ続けていたが、ようやく地元ファンの期待に応えた。5番人気でのゴールの瞬間「渡辺やあ」と驚きの声が響き渡った。
2年前に距離が2500メートルから1400メートルに短縮され、1着賞金は昨年から3000万円にアップし出走馬も超豪華。かつてはGⅡだったダートグレード競走への復帰も、全国から強豪参戦で現実味を帯びてきた。
■10馬身ほど離されていたが、大外一気の豪脚
前日まで雨予報だったが、曇り空でお客さんの出足もまずまず。岐阜地方の最高気温は平年より3度高い29.4度で、夏モードの蒸し暑い一日となった。渡辺騎手は3R、エイシンヒアカムズ(笹野博司厩舎)で地方競馬通算1300勝を達成し、気分良くオグリキャップ記念に臨んだ。
昨秋のJBCスプリント王者でファーンヒル(大井)=笹川翼騎手=が逃げて、中央時代に重賞2勝のウィリアムバローズ(浦和)=御神本訓史騎手=がピタリ2番手。さらにトライアル「飛山濃水杯」勝ちのジュゲムーン(高知)=赤岡修次騎手=が3番手。
渡辺騎手初騎乗のケイズレーヴは向正面では先団5頭から10馬身ぐらい離されていた。ゴーサインに応えて3コーナーから上がっていったが、4コーナーでもまだ5馬身ほどの差。ファーンヒルとウィリアムバローズのマッチレースの様相となったが、ケイズレーヴはラスト100を切って手応え抜群。ラスト3Fは最速タイ35秒7で、切れ味鋭い豪脚を発揮。前でガンガンやり合って息切れした2頭を並ぶ間もなく一気の外差しで抜き去った。
1馬身差の2着にウィリアムバローズ、3着にファーンヒルと南関勢。4着スペシャルエックス(北海道)、5着オマツリオトコ(兵庫)と続き、笠松勢ではスターサンドビーチ=明星晴大騎手=の7着が最高だった。
■榎屋調教師とガッチリ握手、再びガッツポーズ
装鞍所に戻ってくると、迎えた榎屋調教師と枠場でガッチリ握手。この日2勝の深沢杏花騎手をはじめ関係者に「おめでとう」と祝福を受けると「やばい、めちゃくちゃ気持ち良かった。4角で勝ってまうと思った」と興奮冷めやらず、かなり上ずった声。デビューして10年目、悲願でもあった地元ビッグレースを勝って「カコイチ」の喜びを爆発させた。「気持ち良かった」を連発しながら、「イエーイ、やった」の声に榎屋調教師と笑顔で再びガッツポーズを決めてくれた。「いやあ、本当にすごく良かったですよ」と最高の勝利の味に声を震わせた。
ケイズレーヴは名古屋生え抜き馬で父ブリックスアンドモルタル、母レコードチェイサー。ディープインパクトのひ孫でもあり、末脚の切れ味が際立った。重賞6勝目、笠松ではネクストスター中日本、ぎふ清流カップに続き3勝目。馬主は伊藤健さんで、文字通り大きな夢をかなえた。
一方、トライアル飛山濃水杯と同じ位置取りで追走したジュゲムーンの赤岡騎手は「コメントを残すようなこともないですが、やっぱり前の2頭に付いて行った分もあるかもね。ただ自分のレースをしないと走りも悪いので、まあ仕方ないかなと。また違うレースで頑張ります」と敗れて爽やかだった。
■「4角で届くと確信し気持ち良く」「僕が一番喜んでいます」
オグリキャップの活躍をたたえる笠松競馬の看板レース。栄えある口取り写真の撮影を終えると、表彰式でⅤ字の勝負服輝く渡辺騎手のヒーローインタビューに突入。「最高の気分です。デビュー時からオグリキャップ記念と笠松グランプリを1回は勝ちたかったので、すごくいい気分です」
初コンビとなったが「きょうの馬場では速く流れているかなと後ろから見ていました。馬の反応もすごく良く、4コーナーでは届くことを確信していたので気持ち良くなっていました」とファンの笑いを誘った。「かなり強い相手に勝つことができて力があり、まだ4歳でこれからも楽しみです」とケイズレーヴに感謝。最後は「地元のファンが喜んでくれていますが、僕が一番喜んでいます」とユーモアも交え、再びファンの爆笑を呼んだ。
■榎屋調教師「前の2頭が止まって一気に」「強くてかけがえのない存在」
装鞍所では榎屋調教師がNARなどのインタビューを受けた。レース前の勝算は「やれそうな気もしなくはないけど、相手が強くて厳しいよねっていう感じもあった。仕掛ければムキになるタイプなんで、コントロールがすごく難しくて。ちょうどいいところにつけられた」。3コーナーからものすごい勢いで上がっていき「それなりに来るのは確信していた。ペースも速かったし、距離不安がある前の2頭が行き過ぎて苦しくなり、ラストは止まって一気に替わった」。
愛馬の性格は「かなり気が強くて手を焼くが、緊張しないタイプで本番は余計なことをしない。名古屋より笠松でよく走っている(重賞3勝、6戦全て3着以内)」。大一番制覇について「びっくりしていますが、格の大きいレースを勝ったんでさらに上を目指したい」。今後はさきたま杯や佐賀サマーチャンピオン、さらに大きな目標としてJBC(金沢)なども視野に入ってきそうだ。
飛山濃水杯では木之前葵騎手が乗り「3着でしたが、久々で気楽な競馬をさせて上がってくる脚がすごかった。前は最後まで持たなかったが、使える脚が長くなってきたような気がします」。
この馬のいいところは「いやまあ、最高ですよ。めっちゃ強いじゃないですか。これぐらいの馬、自分で発掘してこようと思ったら簡単にはいかないんで。いま4歳で最盛期ですから、楽しんでいきたいです」とさらなる飛躍を願った。
■渡辺騎手初起用「最適ルート通ってくる騎手なんで、合うだろうな」と期待
好騎乗を見せてくれた渡辺騎手の初起用についても聞いてみた。「渡辺騎手の良さを発揮したレースではなかったですが」という意外な返答に、戻ってきた本人は「えー、そうですか」と驚いた声。「(ケイズレーヴは)窮地に立たされることが多い馬で、(馬群の)間を抜いてこないといけないような、ブン回しでは厳しくなるタイプなんですが。(渡辺騎手は)前の列を見て最適なルートを通ってくるのが多分好きな騎手なんで、合うだろうな」と初コンビに期待した。渡辺騎手も「僕、そういうの(最適ルートを通るのが)大好きなんで」と納得したようだ。
馬場を知り尽くしている地元リーディングに騎乗を打診。渡辺騎手は「前走も依頼をもらっていたんですが、スターサンドビーチでOKしちゃったんで」。内と外ではタイムもかなり違うようで、内が止まる馬場で、ウィリアムバローズも勢いが止まってしまった。この日は塚本騎手が馬場の八分どころを通って差し切ったりと、他地区から来た騎手には、イメージと違う戦いづらい馬場だった。
■「僕から見たら、地方競馬の神様みたいな人たち」
渡辺騎手は「吉原さんのスペシャルエックスは思ったより進んでいかなかったそうです(4着)。でもまさかあの一騎打ちにケイズレーヴが加わるとは。しかも(勝たせてもらった相手が)御神本さんと笹川さんですよ。いやもう大興奮で、めちゃめちゃ脳汁出ましたよ。全国区以上のジョッキーじゃないですか。僕から見たら、地方競馬の神様みたいな人たちですからね。御神本さんの雰囲気とかエグイです。もう芸能人ですからね」と憧れの騎手たちと対戦できたことを素直に喜んでいた。
「メンバーが出た時には、掲示板ぐらいは頑張って拾いたいなと思っていたんですけど、こんな馬場になったんで」とやはり外有利のコース傾向をよく把握し、地の利を生かした好騎乗で、悲願のオグリキャップ記念を制覇した。
■ファンから「ケイズレーヴちゃんにニンジンを」
さらに「いやあ良かった。先生、これファンから『ケイズレーヴちゃんのニンジン』と渡されましたよ」と榎屋調教師にプレゼント。最後に2人はスマイル全開で共同作業。手のひらでかわいいハートマークの決めポーズも披露してくれた。
渡辺騎手は5月31日の佐賀・九州優駿栄城賞にワイズポーシャ(佐賀)で挑戦。筒井勇介騎手もミッジーチャンプ(佐賀)で参戦。重賞7勝のサキドリトッケンには吉原騎手が騎乗する。渡辺騎手は6月2日には「2026地方競馬ジョッキーズチャンピオンシップ」(船橋)に参戦。「もちろん頑張りますよ」と意欲を示した。また6月7日には、笠松のムーンウォーリア(牡3歳、笹野博司 厩舎)で阪神・芝1400メートル(1勝クラス)に挑む。地方・中央の垣根を突き破った活躍を願って、渡辺騎手を応援していきたい。
■今村聖奈騎手&寺島調教師の師弟コンビ、オークスでGⅠ初制覇
JRAでは歴史的快挙。第87回オークス(東京・芝2400メートル)で今村聖奈騎手騎乗のジュウリョクピエロが優勝した。JRA女性ジョッキーとして初のGⅠ勝利。滋賀県出身の今村騎手は2022年にデビューし、1年目に51勝を挙げて女性騎手のJRA年間最多勝記録を更新するなど通算110勝を挙げている。
今村騎手が所属する厩舎の寺島良調教師=岐阜県北方町出身=もGⅠ初勝利となった。寺島調教師は岐阜北高で野球部、北海道大で馬術部主将を務めた。卒業後、牧場勤務を経て栗東トレーニングセンターで厩務員から調教助手となり、15年に調教師試験に合格。17年7月の中京・プロキオンSでは、キングズガードでJRA重賞初勝利を飾った。
オークス制覇で寺島調教師は「直線半ばで追い出したら反応してくれて、これは(勝利が)あるかなと思った。いきなりチャンスをものにし、人馬ともにすごかった。(登録している凱旋門賞は)オーナーと馬の状態を含めて考えていきたい」とGⅠ初勝利を喜んだ。
今年3月に調教師を引退した国枝栄さんも北方町出身。国枝さんはアパパネ、アーモンドアイでオークスを制していずれも牝馬三冠に導くなど、多くの名馬を育ててGⅠタイトルは海外も含め23勝。現在は美浦トレーニングセンターの小島茂之厩舎で「厩務員」として働いている。
今村騎手は22年1月、笠松競馬のJRA交流戦「若松特別」で笠松初騎乗Ⅴを飾った。2番人気のモズスナイパー(牡3歳、村山明厩舎)に騎乗。好スタートを切り、渡辺騎手騎乗のムギコをかわして先頭に立ち、押し切った。今村騎手は「初めての競馬場だったんですが、笠松はすごく乗りやすい競馬場でした。いい馬に乗せてもらって、スピードを生かしたレースができた」と好印象を持った。
■「笠馬X」収録でトークショー、勅使川原郁恵さんも出演
オグリキャップ記念デー。場内ではアンカツさんらのトークショー&オグリキャップ記念予想会が開かれ「SKE48太田彩夏の笠馬X(カサマックス)」を収録。元ショートトラックオリンピック選手の勅使川原郁恵さん(岐阜市出身)も出演。3度の五輪出場を経験したアスリートで「好きなことだから続けられた。スケートに必要な筋肉だけを付けた。動ける体にしようと、馬と同じかもしれないが、ヒップに筋肉を付けていましたし、体幹を鍛えることが大切」などと話し、オグリキャップ記念のマフラータオルを使った健康法なども集まったファンに伝授した。
笠松の予想会では「パドックではみんなよく見える。地方競馬の馬はよく分からないし、当たったことがない」とアンカツ節で爆笑トーク。今回も「名前が面白いから」と選んだ◎オマツリオトコは5着に敗れ、全員撃沈した。
■「オグリの好物」1着どて煮、2着カレーライス、山盛りコロッケ
オグリキャップ像近くでは「オグリの里」も出店。新刊「5青春編」などを即売。正門から入場されたアンカツさんに第5巻をプレゼント。オグリキャップのパネル前で記念写真もパチリ。レジェンドのホームでもあるオグリキャップの聖地・笠松競馬場は「ホッとできる空間」としてウマ娘ファンたちにも愛され続けていく。
今回は遊び心を盛り込んで、大食いキャラ「オグリの好物は○○だ」と「競走馬ベストナイン、オグリのポジション(守備位置)は」の人気投票も実施した。ネット投票分の追加あり。
オグリの好物はゴール寸前での大接戦の末「どて煮」が1着になった。
①どて煮9票②カレーライス、山盛りコロッケ8票④にんにくみそ6票⑤きしめん3票
⑥唐揚げ、ちょいデザ2票⑧ニンジン、バナナ、大盛りライス、ホットケーキ、オムライス、ラーメン、おにぎり、土手飯、串カツ、お好み焼き、焼きそば、豚にんにく1票
オグリキャップのベストナインでのポジションは三塁手が1着。
①三塁手4票②投手、外野手3票④捕手、一塁手、遊撃手、ベストDH2票
漫画「ウマ娘シンデレラグレイ賞」の連載は「完走」したが、オグリキャップの聖地・笠松競馬場や笠松町などでのシングレコラボは続行中。「シングレロス」の方は、聖地巡礼の旅でぜひ笠松ご来場を。
☆ファンの声を募集
競馬コラム「オグリの里」への感想や要望などをお寄せください。 騎手や競走馬への応援の声などもお願いします。コラムで紹介していきます。
(筆者・ハヤヒデ)電子メール ogurinosato38hayahide@gmail.com までお願いします。
☆最新刊「オグリの里5青春編」も好評発売中

「1聖地編」「2新風編」「3熱狂編」「4挑戦編」に続く第5弾「青春編」では、笠松競馬場などでの「砂上の格闘技」で完全燃焼した人馬たちへの惜別の思いも込めた。巻頭はシンデレラグレイ賞&トークショーでのウマ娘ファンの熱狂ぶり、続いて日本競馬界最大のヒーローであるオグリキャップ、アオラキ&ハルオーブ、ストーミーワンダー、ハマちゃんなどを特集。
林秀行(ハヤヒデ)著、A5判カラー、182ページ、1500円(税込み)。岐阜新聞社発行。ふらっと笠松(名鉄笠松駅)、笠松町歴史未来館、ホース・ファクトリー(ネットショップ)、酒の浪漫亭(同)、岐阜市内・近郊の書店、岐阜新聞社出版室などで発売。岐阜県笠松町のふるさと納税・返礼品。









