「~ながラー」と語り合う日比野克彦館長=岐阜市宇佐、県美術館

 岐阜県美術館(岐阜市宇佐)の日比野克彦館長は今春、東京芸術大学長に就任した。日比野館長は、学長職との両立について「大学と県美術館でやっていることは僕の中では同じ」と話す。

 日比野さんは2015年に館長就任。19年の同館リニューアル後は「美とふれあい、美と会話し、美を楽しむ」という新たな基本理念を打ち出し、アートを体験する場としてさまざまな取り組みをしてきた。一方で、母校である東京芸術大では美術学部長として教べんを執ってきた。今回の学長就任に際し、「大学は人材育成、教育、研究機関であり、芸術を社会の中で機能させることでよりよい社会を築く、ということを研究し、人材を輩出する場。そして、美術館は地域の中でそれを実践する場」と、兼務の意義を強調する。

 同館リニューアルで特に力を入れてきたのがアートコミュニケーター「~ながラー」。アートを通じた活動で美術館と人・社会をつなぐ役割を担う。「県美術館が広く県民が美と接するプラットホームとなって、芸術が社会で機能するということを実践していく上で、アートコミュニケーターは重要な役割を持つ」。大学などの教育機関はほぼ同世代の人々が集まる、いわば均質化した場だが、「~ながラー」はさまざまな年齢、職業、背景を持つ人々が集まる。「違いを認め合うことができる、というアートの特性を体現する存在。芸術が発信源となって多様性ある社会をつくる、ということを大学でも美術館でもやろうとしていて、大学の仕事と美術館の仕事は相乗効果がある」

 とはいえ、美術館を実験の場にするわけではない。「美術館には専門職の学芸員がいて、美術品のコレクションがある。美術館の王道である、美術品を後世に伝える、という箱としての役割があり、作品の修復や地元作家の作品の収集は大きな屋台骨。それにプラスして、より県民に芸術を楽しんでもらうために、大学での取り組みをしっかりと接続していきたい」と語った。