県在住者で初の将棋プロ棋士、高田明浩さん。座右の銘の一つ「楽笑」そのままに、楽しく、笑いを絶やさず、天真爛漫(らんまん)に歩んできた誕生から現在までを、最も近くで見てきた父浩史さんがつづります。

 生後8日の明浩さんを抱く父浩史さんと母乃理子さん=愛知県江南市内の病院

 「駅に行く途中で、頑張ってねと、声をかけられたよ」「スーパーやジムで、応援してくれる人がいたよ」

 昨年4月、息子がプロ棋士になってから、そんな話を聞くことがよくあります。プロ入りを目指していた奨励会時代も「友達や先生がネット中継を見てくれていたよ」などと聞く機会がしばしばありました。

 父親である私にも、近所の方や友人が新聞で対局結果を見て、声をかけてくださることが多いです。ご近所の方は、結果が載るたびに「勝てて良かったね」「今回は残念だったね」などと話しながら、野菜やお花を持って来てくださります。成績に関わらず、皆様に温かく応援していただいていることは、何よりありがたいことです。この場をお借りして、皆様にお礼の気持ちをお伝えできたらと思います。いつも、本当にありがとうございます。

 今回、息子の誕生から現在まで、少しずつ振り返る連載を執筆することになりました。息子は、6月20日で20歳になります。今は高校卒業後、進学する人が7割を超え、就職する人は2割以下です。多くの子が大学や専門学校で学んでいる時期に息子は社会人2年目となり後輩までいるわけですが、若い分、いろいろ大変なこともあるのでは、と感じています。

 5月4日に開かれた森信雄一門祝賀会に出席した高田四段。師匠から贈られたネクタイを締め臨んだ=大阪市内

 私自身は、各務原市で国語・作文教室「文聞分(ぶんぶんぶん)」を主宰しています。小学生から高校生を対象に勉強だけでなく、集中力を高めるため、けん玉やお手玉、将棋などの昔遊びも教えています。その他、市の読書感想文講座や絵本作り講座、大人向けの文学や作文の講座、子育ての講演なども行っています。

 私は将棋に詳しいわけではありませんが、今回の連載では、息子の成長と、私が息子にどう関わってきたかを中心につづっていく予定です。子どもへの関わりは、親の意図とは異なる、思わぬ形で表れるケースがあります。私の場合は、けん玉です。私は息子が小学1年生のとき、集中力を付けるため、けん玉を教えました。それが彼の趣味の一つとなり、岐阜新聞Webの動画やテレビ放送をきっかけに「けん玉棋士」として脚光を浴びるとは、夢にも思いませんでした。失敗したことも多いですが、さまざまなエピソードを、皆様に楽しくお読みいただけたらと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。

(「文聞分」主宰・高田浩史)

 たかだ・ひろし 1973年大阪市生まれ。名古屋大教育学部卒。高校教諭を経て2008年から国語・作文教室「文聞分」主宰。各務原市男女が輝く都市づくり審議会委員。各務原市鵜沼朝日町在住。