修理されて約1カ月ぶりに表示を再開した長良川水位表示塔=15日午前11時31分、岐阜市役所
1カ月近く動かなくなっていた長良川水位表示塔。表示板には「ご不便をおかけいたします」と張り紙がしてあった=9日、岐阜市役所
マーサ21前の水位表示塔。LED表示板が稼働しなくなっている=岐阜市正木中
修理されて約1カ月ぶりに表示を再開した長良川水位表示塔=15日午前11時29分、岐阜市役所前

 電飾の色などで長良川の水位を知らせる岐阜市役所前の「長良川水位表示塔」が、14日までの1カ月近く動かなくなっていた。梅雨前線による記録的な豪雨で長良川も水かさが増し、無料通信アプリLINE(ライン)などで読者とつながる「岐阜新聞 あなた発!トクダネ取材班」には「大事な時に表示されないのでは意味がない」と心配の声が寄せられた。調べてみると、原因は老朽化。また、市内には同様に"置物化"した水位表示塔が他にも二つあった。全国的にも珍しい設備だが、時代遅れなのか。

◆水害の教訓伝えるため設置

 市役所前の塔は、市職員が先月、不具合に気付き、委託業者が内部を調べると、原因は水位のデータを受信する基板の故障だった。業者が基板ごと持ち帰って修理し、15日に試験運転の末、正常な動きを取り戻した。保守点検に当たった男性社員は「代えの部品がないほど古く、修理できなければ復旧を断念するほかなかった」と話す。

 設置は1976年7月。長良橋で測る水位をメートル表示するほか、水位が上がるほどに青、黄、赤と色を変える縦長のパネルが光る。伊勢湾台風(59年)など大水害の教訓を後世に伝えようと市が設けた。

◆老朽化「放置するつもりない」

 もう二つの塔は92年、建設省(現国土交通省)が金公園(金町)と大型商業施設「マーサ21」(正木中)に建てた。同じ市区町村に水位表示塔が三つあるのは全国的にも珍しく、国交省木曽川上流河川事務所の松原充幸副所長は「それだけ水害対策に力を注いできた表れ」と語る。しかし、水位を伝える発光ダイオード(LED)表示板は2年前から稼働が止まっている。

 理由はやはり老朽化。修理を試みたものの照明に使われている部品が古くて手に入らず、休止状態に陥った。武田正太郎調査課長は「昔は見られたのに、という声も頂いており、このまま放置するつもりはない」と話し、塔の今後を協議していると明かした。

◆移設計画なし、役割終えた見方も

 ただ、スマートフォンなどで簡単に情報が手に入るようになった今、塔は既にその役割を終えているという見方もある。市河川課によると、来春に新庁舎へ移転する市役所に現在の水位表示塔を移設する計画はなく、庁内モニターで代替する予定という。

 松原副所長は「近年は、情報が確実に伝わるようにするためのソフト対策がより重視されている」と施策の傾向を示す。事務所のホームページでは管内河川の水位と併せ、定点カメラの映像が見られる。2年前には携帯電話会社が提供する「緊急速報メール」を活用し、受信側の求めに関わらずエリア内の携帯電話に直接届ける「プッシュ型」で洪水情報を配信し始めた。

 一方、高さ10メートルを超える塔の存在は「洪水の時に水位がどれほど高いか常に認識してもらう効果もある」と武田調査課長。記録的な大雨のピークだった8日、長良橋付近での水位は水防団が出動する基準の19・63メートルに迫る19・44メートルに達しており、「周知のための有効な手だてを今後も考えていく」と話した。