バレーボール選手にみられたけい骨疲労骨折

整形外科医 今泉佳宣氏

 骨折とは文字通り骨が折れることです。骨は硬いので、外からかなりの力が加わらないと折れません。加齢に伴い骨がもろくなっている高齢者ならともかく、日頃身体を鍛えているアスリートはよほどの衝撃が加わらないと骨折が生じることはないと考えられます。

 ところが、転倒したり何かにぶつかったりしなくても骨折するアスリートがいます。この場合の骨折とは一度の外力(衝撃)で折れてしまうのではなく、繰り返し衝撃が加わることで折れてしまうことを意味します。このような骨折を疲労骨折といいます。

 疲労骨折が生じる部位はスポーツの種目によって大体決まっています。サッカー選手における足の外側の骨(第5中足骨)や、バレーボールや走り高跳びなど跳躍系の選手や長距離ランナーにおけるすねの骨(けい骨)、ゴルファーにおけるあばら骨(肋骨(ろっこつ))、剣道やテニス選手における腕の骨(尺骨)などが代表的なものです。この中ではけい骨が最も多く発生します。

 症状としては骨折ですから当然痛みがあります。しかし通常の骨折と異なるのは、脚の疲労骨折の場合は歩くことができます。そのため患者さん本人や周囲の人は歩くことができるから骨折はないと判断してしまいがちです。また、初期の疲労骨折は単純X線写真では異常が出ません。そのため医療機関を受診しても練習のやり過ぎによる慢性の筋肉痛などと診断されてしまうことがあります。

 単純X線写真で疲労骨折とわかるのは、症状が出てから約2週間といわれています。疲労骨折の早期発見のためには磁気共鳴画像装置(MRI)や核医学(RI)検査が有用です。

 疲労骨折の治療は安静第一です。安静といってもずっと寝ていなければならないわけではなく、スポーツ活動を休止することで骨折が治癒するのを待ちます。ただし完全にスポーツ活動を休止するのではなく、骨折部位に負荷のかからない運動は許可します。

 例えば脚の疲労骨折であれば上半身の筋力トレーニングは許可します。スポーツへの復帰は骨折部の痛みがないことや筋力の回復状態およびX線検査で判定しますが、通常2~3カ月で可能となります。ただし痛みを我慢してスポーツを続けることで慢性化したり、完全にポキッと折れてしまったりした場合はギプス固定や手術が必要となります。

(朝日大学保健医療学部教授)