岐阜大学皮膚科医 松山かなこ氏

 私は主に皮膚がんの治療を行っています。多くの皮膚がんは病気の部分を手術で切除すれば完治できます。そこで患者さんに手術の説明を行います。おおまかに言うと、がんの周りから3~10ミリ程度の余裕を持って切除します。取り残しがないよう脂肪組織を含めるように切除します。皮膚が無くなった部分は縫い寄せたり、皮膚移植を行って再建します。患者さんから「皮膚移植ってどういうものですか?」とよく質問を受けます。そこで今回は皮膚移植、すなわち植皮術について紹介します。

 病気の部分を切り取った後は、脂肪組織や筋肉などがむき出しになった状態なので、そのままの状態で終わりという具合にはいきません。切り取った部分が小さい場合や、皮膚がたるんでいて余裕のある部位であれば、縫合することができます。しかし、そのまま縫い合わせることができない時は植皮術を行います。

 植皮術には採取してくる皮膚の厚さによって二つの方法があります。一つ目は全層植皮術、二つ目は分層植皮術と言います。いずれの方法も、採取して移植する皮膚は患者さん自身の皮膚です。広範囲の熱傷などでたくさんの皮膚が必要になる時は、特殊な方法で皮膚を伸ばして使います。

 全層植皮は、厚めの皮膚を鎖骨周囲などから採取し、顔や手などの目立ちやすい部分や関節周囲の皮膚欠損に使う方法です。皮膚を採ってきた部分は縫合します。術後に植皮した皮膚が目立ちにくいメリットがありますが、生着(後述します)しにくいという欠点があります。

 一方、分層植皮は、もう少し薄い皮膚を太ももなどから採取して移植します。厚みは約0・3ミリと極薄の皮膚なので、専用の機械やかみそりで採取します。全層植皮に比べて移植する皮膚が薄いので生着しやすいのですが、治った後に色が付きやすく、また引きつれを起こすことがあるのが欠点です。皮膚を採った部分はすりむき傷のようになっており、被覆材で覆ったり軟膏(なんこう)を塗ったりしながら、自然に皮膚になるのを待ちます。全層植皮も分層植皮も、採取してきた薄い皮膚は血流がないので、そのままでは乾いて壊死してしまいます。

 そこで、植皮をした皮膚の上から綿などで少し圧迫気味に覆って、欠損部分と皮膚を密着させます。安静に保護しながら1週間程度経過すると、植皮した皮膚に新しい血管が伸びてきて、皮膚が乾かずに生きたままくっつきます。それを生着と言いますが、生着した皮膚を見ると、「やっぱり皮膚ってすごいな」と、その再生能力に感動します。

(岐阜大学医学部付属病院皮膚科臨床講師)