岐阜大学皮膚科医 松山かなこ

 めっきり寒くなりました。冬の気候は乾燥していますし、暖房を入れることで、さらに乾燥した環境になっています。「すねのあたりが粉をふいたように(あるいはサメ肌のように)がさがさになっている」「お風呂に入ったら体がかゆくて、ナイロンタオルで洗いながら、かいてしまった。日中もかゆくて困る」。そんな症状を訴える人が増える時期でもあります。

 このような症状を起こすのには、さまざまな原因がありますが、この時期は皮脂の減少が原因となることが多いです。皮膚の一番外にある角層には、バリアー機能といって細菌やダニ、食物などのアレルゲンが体に入らないようにする働きや、水分が体の外に逃げていかないようにする働きがあります。

 このバリアー機能を維持するために、皮膚の潤いを保つ皮脂膜、角層間脂質などが大切なのですが、これらの物質が少なくなって乾燥した状態になると、外からの刺激に弱くなってかゆみが出やすくなります。どうすれば、この乾燥(ドライスキン)を改善できるのでしょうか。油分の多い食事を取るべきでしょうか。残念ながら、食べることでは皮膚の潤いを保つことはできません。

 潤いを保つためには、直接皮膚に保湿剤を塗って補う必要があります。保湿剤は、処方薬としてはワセリン、ヘパリン類似物質、尿素軟膏(こう)などがありますし、多数の商品が市販されています。乳液やゲル状のものより、油分を多く含んだ軟膏やクリームタイプのほうが保湿力に優れます。

 塗り方にもコツがあります。まずは塗る量ですが、自分の人さし指の先から第一関節までの範囲に乗るぐらいの量を取って、あまり大きく広げず、自分の手のひら2枚分ぐらいの広さに塗り広げます。塗り方も強く擦り込むのではなく、軽くのばすようなイメージです。ティッシュペーパーが1枚くっつく程度のべたつきが望ましいです。適切に外用して皮脂膜を作り、外的な刺激も避けるようにします。

 42度を超える熱いお湯はかゆみを増すといわれますし、急激な温度変化もかゆみにはよくありません。手や柔らかなタオルで優しく体を洗って清潔を保ち、入浴後はできるだけ早めに保湿剤を塗りましょう。この時期は、自分の皮膚を赤ちゃんの皮膚のように取り扱ってもらうとかゆみ対策になります。

 それでもかゆい場合は、かぶれや湿疹になっているかもしれませんので、お近くの皮膚科で相談されることをお勧めします。「お風呂上がりに保湿剤外用」を、ぜひお試しください。

(岐阜大学医学部付属病院皮膚科臨床講師)