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教えてホームドクター

体温の調節機能

寒暖を感じ熱産生、放出 乳児は「褐色脂肪細胞」で維持



産婦人科医 今井篤志氏

 コロナ禍の現在、日常生活で体温を測定する機会が多々あります。日本人の体温の平均は36・89度で、7割くらいの人が36・6度から37・2度の間です。そして1日を通して体温変化は1度以内に収まります。なぜヒトの体温が37度前後に保たれているのかを考え直してみましょう。

 ヒトなどの哺乳類や鳥類は周囲の環境より高い温度に体温を維持できます。その理由は摂取した食べ物の栄養素を他の物質に変換する時や運動で筋肉などを動かす時に熱が産生されるためです。心臓を動かしたり呼吸したりといった、ヒトが生きていくためにエネルギーを消費する場合も例外ではありません。エネルギーを使うと熱が発生するのです。ヒトはエネルギーの75%以上を体温維持に費やしています。エネルギーの源は摂取した食べ物ですから、夏は冬に比べ必要とするエネルギーも少なくて済むので、食欲が低下するのも自然なことです。

 皮膚の温度センサーが寒いと感じると、その情報は神経を通じて脳内の「体温調節中枢」に伝えられます=図=。すると、この体温調節中枢からの指令が神経を通って皮膚に伝えられ、皮膚の毛細血管が細くなり、皮膚から熱が逃げるのを抑えられます。また筋肉を震えさせて熱産生を促します。これらの活動により、体温が上がるのです。逆に暑いと感じる場合には、熱を放出するように発汗を促し皮膚の毛細血管を広げます。

 ウイルスや細菌などが体内に侵入し炎症が生じるとプロスタグランジンが産生されます。プロスタグランジンは体温調節中枢に働き掛け、体温の設定温度を上昇させます。身体各部に体温を上げるようにという指令を出します。

 妊娠可能な(月経のある)女性の体温には、ほぼ2週間サイクルで平熱より0・3~0・5度高い高温相が見られます(本紙2012年8月6日付11面)。この高温相は10~14日間持続しますが、排卵後の卵巣から分泌される黄体ホルモンが脳の体温調節中枢に作用するからです。当然ながら、排卵がない場合(排卵障害、更年期以降、思春期前)あるいは男性では、このホルモンの分泌がなく、低温相と高温相の周期は認められません。

 これとは別に、ヒトには「脂肪を燃やして熱を産生する」特別な仕組みが備わっています。鉄成分を含むことで茶色く見えることから、褐色脂肪細胞と呼ばれています。運動をすることなく熱を作り出します。乳児の首、肩甲骨近辺や脇の下に多く存在し、年齢とともに減少します。運動量の少ない乳児が体温を維持できるのは、この褐色脂肪細胞が多くあるためといわれています。また、出生時には急激に外気にさらされますが、体温の低下を防ぐ役割も担っています。

 ヒトの体温はわずか0・5度の上昇でも体調の変化を感じるほど、厳格に日常の体温(平熱)に保たれています。体温を調節できる限度を超えると意識障害や死に至る場合もあります。これからの時期は熱中症にも注意しましょう。

(松波総合病院腫瘍内分泌センター長、羽島郡笠松町田代)




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