自分で設定したテーマについて教師らに相談する3年生。資料集めにはタブレット端末を使う=岐阜市六条東、陽南中学校

 本年度より、新学習指導要領が小学校で全面実施となり、資質・能力の育成を目指して大きく舵(かじ)を切った。しかし、新型コロナウイルスによる長期休校、感染予防、履修、児童生徒の心のケアで学校現場は翻弄(ほんろう)され、新学習指導要領でうたわれている授業改善の視点である「主体的・対話的で深い学び」の実現は難しい現状となっている。

 そこで、もう一つのキーワードである「カリキュラム・マネジメントの充実」について注目する。中教審の答申では「各学校が設定する学校教育目標を実現するために、学習指導要領等に基づき教育課程を編成し、それを実施・評価し改善していくこと」としている。ポイントは①教科等横断的な視点で教育内容を組織的に配列②PDCA(計画、実行、評価、改善)サイクル③人的・物的資源等の効果的な組み合わせ―と示している。

 今回の指導要領では、資質・能力の育成を目指し、教科等の目標と内容が「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力・人間性等」の三つに整理された。しかし、表記上は三つに統一されたが、内容の精選にまでは至っておらず「主体的・対話的で深い学び」の実現は難しく、さらに新型コロナ対応が追い打ちをかけている。

 ここで有効な切り口となるのが、カリキュラム・マネジメントの教科など横断的な視点だ。「総合的な学習の時間」(以下「総合」)が、有機的なつながりを生み出す起点となる。実生活・実社会の探究課題を取り扱う「総合」を教育課程の中核に置き、教科等で学習した内容との関連を図っていくことである。

 岐阜市立陽南中学校では、教科などでの学びが「総合」で発揮できるよう「学習の手引き」を活用して探究を進めている。ここには、教科等での見方・考え方が凝縮されている。教科等で身に付けた見方・考え方を「総合」で発揮して問題解決を行うことで、教科で身に付けた知識・技能が生きて働き、未知の状況でも発揮できる思考力・判断力・表現力となり、教科などの学びにフィードバックされていく。同校では、このような学び方が3年間で身に付くように教育課程が編成され、3年生は自分自身の興味・関心に基づいたテーマを設定し、個人追究をゼミ形式で行っている。まさにコロナ禍においても、この学び方を身に付けている生徒であれば自宅であっても探究を進めていくことができることになる。

 一方、本年度より義務教育学校になった岐阜大教育学部付属小中学校では、「総合」と「道徳」とを融合させた新領域「どう生きる科」を立ち上げ、教育課程の中核においた研究が始まっている。このように、教科等横断的な視点に立ってカリキュラムデザインをしていくことが今後、より一層求められていく。

 みしま・こうよう 1970年郡上市生まれ。岐阜大教職大学院修了、郡上市立八幡小教頭、県教育委員会学校支援課課長補佐、2018年から現職。今回の学習指導要領「総合的な学習の時間」の解説メンバー。「中学校の総合的な学習の時間を中核としたカリキュラム・マネジメント」共著など執筆多数。