テーブルを消毒して開店準備を進める店長の大澤剛さん=多治見市本町、Borco
テーブルを消毒して開店準備を進める大おかみの三宅智子さん=岐阜市羽根町、お遊食おせん
忘年会シーズンを迎えた飲食店街。コロナ禍で予約が伸び悩み、悲痛な声が上がる=岐阜市玉宮町

 忘年会シーズンを迎えた飲食店が、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて客足の低迷に苦しんでいる。本来なら書き入れ時の年末だが、岐阜県内でも今月に入って感染者数が急増し、県は感染の「第3波」が到来したとして「会食は4人以下で」と呼び掛ける。無料通信アプリ「LINE(ライン)」でつながる「岐阜新聞 あなた発!トクダネ取材班」の登録者に実施したアンケートでは、忘年会を「開かない」との回答が8割に上るなど客側の警戒感も強まる中で、県内の飲食店からは悲痛な声が上がる。

◆「客入れすぎるのも怖い」

 「大人数での飲み会が開かれないのは痛い」と嘆くのは、JR多治見駅近くのイタリアンバル「Borco」の大澤剛店長(32)。200人まで入れる広さが売りで、多くの予約がある忘年会シーズンは強みが生かされる絶好期。例年、12月の週末は予約で埋まっているが、今年の団体予約はゼロ。検温や消毒、客席の間隔確保などの対策をとるが、感染が拡大している現状に不安は拭いきれない。「世間はコロナ慣れの雰囲気がある。クラスター(感染者集団)が発生するリスクを考えると、お客さんを入れすぎるのも怖い」と、苦しい胸中を明かす。

 大口の忘年会需要が伸び悩む中で、政府が進める飲食業の支援策「Go To イート」への期待は大きい。岐阜市玉宮地区の居酒屋「お遊食おせん」(同市羽根町)では現在、客の半分以上がイート利用客という。大おかみの三宅智子さん(32)は「予想以上に利用するお客さんが多く、とても救われている」と率直に話す。ただ、感染拡大を受け、政府はイート事業の一時停止や一部地域の除外の動きを見せる。同店の客足も減り始めているといい、「今後、予約のキャンセルが相次ぐのかも」と不安視する三宅さん。「再びにぎわいが戻ると信じ、辛抱強く店を続けるしかない」と前を向いた。

 客側の不安感も膨らんでいるようだ。あなトクのアンケートでは、回答した728人のうち80%が忘年会を「開かない」、13%が「迷っている」とし、「開く」は7%にとどまった。

◆「高齢の両親が...」「少人数で」

 「開かない」と答えた理由には、岐阜市の女子大学生(20)は「感染を恐れながらでは思う存分楽しめない」、美濃加茂市のパート女性(52)は「高齢の両親がいて、うつしてしまったらと思うと怖い」といった不安の声が並んだ。一方「開く」を選んだ理由にも「少人数でソーシャルディスタンス保ちながら少しでも貢献しないと」(揖斐郡大野町・介護職女性・59歳)と店を気遣う声や、「今年は少人数で労をねぎらいたい」(大垣市・男性会社役員・53歳)などと感染対策を意識する声が多かった。

 第3波の到来で、第1波や第2波の頃よりも「警戒が強まった」と答えたのは72%。会食時の人数については、「人数に関係なく参加したくない」を選んだのが44%で最も多く、次いで「4人まで」が38%と警戒感の強さが表れている。

 岐阜新聞は、暮らしの疑問や地域の困り事から行政・企業の不正告発まで、情報提供や要望に応え、調査報道で課題解決を目指す「あなた発!トクダネ取材班」を創設しました。あなたの知りたいこと、困っていることについて、ご要望や情報をお寄せください。LINEの友だち登録で取材班と直接やりとりもできます。