4年ぶりに開催され、にぎわった笠松競馬秋まつり。渡辺竜也騎手らがファンを出迎えた

 レース用の勝負服は脱ぎ捨てて、所属騎手たちも私服姿でぶらぶら、ファンと交流。競馬場内を開放した「2022笠松競馬秋まつり」は8日、秋晴れに恵まれて、若者グループや家族連れらで盛況となった。中央スタンド前のメインステージでは、チャリティーオークションも開かれ、オグリキャップのゼッケン(レプリカ)が10万円を超える高額で落札された。

 台風、コロナ禍に不祥事と続いて4年ぶりの開催となった秋まつり。ファンファーレとともに大原浩司騎手会長が開会宣言。「レースの迫力を生で感じられるので、気軽に足を運んでください」と呼び掛け。上空は風がやや強く、熱気球での大空体験は中止になったが、トークショーやプリキュアショー、プロレス教室&観戦で場内は熱気ムンムン。2100人超が来場し「やや重」のコース内を歩いたり、騎手バス乗車やスターター体験など盛りだくさんのイベントを楽しんだ。

 ■お宝グッズの数々、「うわー、すごーい」

 最も盛り上がったのがラストイベントのチャリティーオークション。笠松の騎手全員と、名古屋の騎手らも持ち寄った「お宝グッズ」の数々。騎手部会副会長で、後輩から「笠松競馬盛り上げ隊の隊長」とも呼ばれている渡辺竜也騎手が中心になって、仲間に協力を呼び掛けた。若手騎手たちもマイグッズを高く買ってもらおうとステージに登壇した。

チャリティーオークションで1番人気だったオグリキャップのレプリカゼッケン

 騎手の勝負服やゴーグル、サイン入りゼッケンなどが次々と登場。1番人気はやはり、オグリキャップのゼッケン。安藤勝己元騎手のサイン入りは5000円でスタートしたが、威勢のよい掛け声が飛び交い、1万円単位でどんどん跳ね上がり、「うわー、すごーい」とスタンドのお客さんたち。レースでの激しいたたき合いのような熱いバトルとなり、司会の大澤広樹アナも「オークションでこんなことが…」と思わぬ高値に驚きの声。

 ■「オグリキャップ&アンカツ」はゼッケンでも最強コンビ

 「11万円、おめでとうございます」。短時間で燃え上がった勝負が決着。「オグリキャップ&アンカツ」最強コンビの人気は健在だった。「上がっていく桁が違いますね」と渡辺騎手。熱狂的なファンがお宝をゲットした。

 ゼッケンは実使用ではなくレプリカで、ラストラン・有馬記念Vと同じ「8番」。落札されたゼッケンのレース名は「ジュニアクラウン」とあるが、勝った実際のレースでは5番だった。オグリキャップは早めに先頭に立ち過ぎて、宿敵・マーチトウショウの差し返しを食い、ハナ差の辛勝。名手・アンカツさんをヒヤリとさせた。2頭のマッチレースは「ウマ娘シンデレラグレイ」笠松時代のハイライトシーンにもなった。それだけにウマ娘効果もあったのか。笠松競馬のオークション史上でも名勝負となった。

 アンカツさん関連ではライデンリーダー(高原特別)は女性の声が最後に響き(4万円)、レジェンドハンター(東海クラウン)も高値で落札され(3万5000円)、「アンカツさんの人気すごいですね」と大澤アナ。渡辺騎手も笠松のレジェンドグッズに「さすがです」と脱帽していた。

深沢杏花騎手のサイン入り、人気馬ナラのゼッケン

 ■遠征アイドル、ナラのゼッケンも人気

 ゼッケンではこのほか、遠征アイドルであるナラの重賞レース(実使用)が注目の的。深沢杏花騎手騎乗でサイン入りの3枚。ウマ娘シンデレラグレイ賞の覇者でもある深沢騎手がにこやかに登壇。本人の手渡しとなって徐々に高騰。最後の1枚は金沢・読売レディス杯のゼッケンで3万3000円。渡辺騎手・ライジングドラゴンの3倍以上の高値が付いた。プロ野球・ロッテの佐々木朗希投手に似ていることで注目される長江慶悟騎手の勝負服も人気を集めた(2万円)。

 ■渡辺騎手、初代・V字勝負服で最後の大勝負

 オークションには計27点が出品され、渡辺騎手は「もう一声」を呼び掛けていたが、自身のグッズの値段では、ゴーグルでも木之前葵騎手に完敗しており、「飛び入り」で追加出品。デビュー時から着ていた初代のV字勝負服で、リーディングジョッキーとしての意地を見せようと「最後の大勝負」に出た。

チャリティーオークションの最後に出品された渡辺騎手の勝負服

 渡辺騎手がその場でサインするということで、ファンは「まだいける」「電車賃は残して」などと財布の中身と相談しながらで大盛り上がり。渡辺騎手の勝負服は、同じく追加出品された岡部誠騎手の勝負服には、わずかに及ばず(2万4000円)。名古屋、笠松のトップジョッキー2人によるマッチレースとなった東海ダービーのような結果になった。ウマ娘関連では、コラボうちわの出品が当初予定されていたが、ネットでの炎上も懸念され「取り消し」となったようだ。

 内馬場には田畑も広がり、実りの秋を迎えたのどかな笠松競馬場。この日はレースもなく、厩舎関係者たちは朝からリラックスモード。キッチンカーが並ぶスタンド前などで、騎手たちは記念撮影やサインなどで気軽にファンと交流し、にこやかにもてなしていた。そして、チャリティーオークションを大いに盛り上げた渡辺騎手。「楽しんでいただき、ありがとうございます。これからも楽しいイベントを考えて盛り上げていきたいです。(17日からの)笠松のレース開催では精いっぱい頑張ります」とまたの来場を願っていた。

 チャリティーオークションの収益金は、何とぴったり50万円。第2回秋まつりの3倍近くで、アンカツさんらのサイン入りゼッケン効果は絶大。渡辺騎手の仲間への声掛けも実って大成功だった。収益金は競走馬のセカンドキャリア支援に全額寄付される。

ステージで躍動。笠松競馬秋まつりを盛り上げた「岐阜美少女図鑑」のメンバー

 ■「岐美女」メンバーが華麗に盛り上げ

 ステージイベントでは、人気フリーペーパー「岐阜美少女図鑑」の紹介や、オリジナル楽曲「カコイチサマー!」も披露された。メンバーがキラキラと輝き、躍動感あふれるダンスと乗りのいいメロディーで華麗に盛り上げた。ファミリー撮影会も開かれ、美少女図鑑のカメラマンが撮影した写真をその場で来場者にプレゼント。毎年8月には協賛レースも開いており、これからも笠松競馬の魅力をアピールする「岐美女盛り上げ隊」として活躍していただきたい。

 ステージでは、ヤングジョッキーズシリーズに参戦している若手騎手4人の紹介も行われた。まず東川慎騎手と長江慶悟騎手が登場。

 笠松競馬の魅力について、長江騎手は「騎乗フォームなど、騎手がどんな乗り方をするのか見てほしいです」。東川騎手は「場内のご飯がおいしいです。『もつ煮』とかですね」とにっこり。

佐々木朗希投手の投球フォームをまねする「そっくりさん」の長江慶悟騎手(左)と東川慎騎手

 ■長江騎手「佐々木投手が僕に似ているんです」

 大澤アナから「長江騎手は、佐々木朗希投手に似ている」と紹介されると「おー」とスタンドから大きな拍手。「そっくりさん」の長江騎手は「まあ、佐々木投手に似ていると自分でも思いますけど、あっちが僕に似ているんです」と、年上でもあり「スローカーブ」を返球。東川騎手も「似てますね」と熱いまなざし。佐々木投手は身長190センチで「30センチぐらい違いますけどね」と長江騎手。「今後2人がどこかで出会う機会があるかも」と聞かれると「会ったら、(記念撮影で)ツーショットは間違いないですね。佐々木投手には、しゃがんでもらいます」と長江騎手はユーモアたっぷり。スタンドのお客さんを楽しませていた。

 続いて深沢杏花騎手と及川烈騎手が登場。期間限定騎乗の及川騎手は、笠松競馬の印象について「人が温かいなと。食べ物もおいしいです」。深沢騎手は「優しい方が多くて、いい所だなあと。他の競馬場ではピリピリしている所もあるんですが、笠松はみんな仲がいいなと」。

サインを求めるファンと交流する若手騎手たち

 ■1着ゴールした深沢騎手、馬に「ありがとう」

 騎手になって、うれしいことや楽しいことは。深沢騎手は「強い馬に乗せてもらったり、1着でゴールした時はすごくうれしいです。馬に『ありがとう』という気持ちです。技術が未熟で下手に乗ってしまうレースでも、馬のおかげで助けられ、1番でゴールを駆け抜けることができるので」と騎乗馬に感謝。及川騎手は「勝つ喜びですね。負けた時は、やっちまったなあ、改善したいな、申し訳ない、という気持ちになります」。
 
 深沢騎手は「コロナで1年ぐらい、無観客で乗っていましたが、今はお客さんがいるだけで、頑張ろうという気持ちになります。返し馬でお客さんから『頑張って』『頼むよ』と言われると『いやあ、頑張らないと』という気持ちになります」。

 さらに「笠松には若手もたくさんいます。ベテランの方より劣ってしまうことも多いですが、がむしゃらにみんな頑張っているので、ぜひ応援してください」と。及川騎手も「笠松競馬場はいい所で、馬と人との距離も近いんで応援を」とファンに来場を呼び掛けていた。

トークショーで、笠松競馬場のコースを走らされた体験なども語った森山泰行さん(左)と永田薫さん

 ■ストライカー2人「馬場を走らされ、砂が深くてきつかった」

 笠松中学校出身で元サッカー日本代表の森山泰行さんと、岐阜工業高校出身のアイドル(マジックプリンスのメンバー)永田薫さんがトークショーに出演。2人とも笠松町で大好きなサッカーに励んだ経歴を持つエースストライカーだ。

 近くにあった笠松競馬場の思い出については、ともに「体力強化のため、馬場を走らされたことがあって、砂が深くてすごくきつかったです」と苦笑い。4年前には「ぎふ信長まつり」の騎馬武者行列で信長役を務めた永田さん。高校時代には全国高校サッカーにも出場し、初戦を突破。「テレビで学校紹介の映像が流れたんですが、笠松競馬場を走っているシーンもありました。きっと残っているはずです」と重い馬場での苦闘を懐かしそうに語っていた。FC岐阜の選手兼監督補佐として、Jリーグ参入を実現させた森山さんは「岐阜に帰ってくるとホッとします」と郷土愛をにじませていた。

トークショーで、根尾昂選手を引き当てたドラフトについても熱く語った与田剛さん

 ■与田さん熱血トーク「根尾は自分で打って完封勝ちを」

 ドラゴンズ前監督・与田剛さんのトークショーでは、競馬の話はなかったが、大勢のファンの前で熱血トークを披露。スタンドには岐阜の人も多く、動向が注目されている根尾昂選手=飛騨市出身=についても語っていただけた。自分も含めて競馬ファンにはプロ野球ファンも多いので、その内容を紹介すると―。

 4年前のドラフトで根尾選手のハートを射止めた与田さん。「縁があってドラゴンズに入団してくれました。ドラフトでは、監督就任早々、根尾を引き当てた。試合より緊張しましたね。(4球団が競合した)抽選では、下から2番目と決めて臨んで(右手で)一番下を触って離したら2番目が分からなくなった。脂汗が出てきたが、この大きな手に引っ掛かった封筒を取ったら、そこに根尾がいた。今でも思い出すと興奮してくる。テレビの特番では、アナウンサーの方が涙を流していましたからね」。

 「ドラフト翌日に初めて根尾に会った。甲子園で見た根尾はすごいピッチャーだなあ。でも背番号は6番か。二刀流はどうかと聞くと『ショートでやりたい』と」。打者としては開花せず、今年のシーズン途中、ピッチャーに転向した。与田さんは「リリーフよりは先発の方が。打席に入りますからね。彼の今の能力で、先発して自分で打って完封勝ちとか、そんな日が来るといいなと思っています」。さらに「注目を浴びる存在で、早く仕上げなければとプレッシャーでした。転向は立浪監督が決めたことなんで応援していきたいです」と根尾選手がピッチャーとして大きな戦力となることを期待。スタンドからも地元選手の飛躍を願い、温かい拍手が送られていた。

オグリキャップのコスプレ姿の男性(中央)と東川慎騎手(右)、浅野皓大騎手

 ■ウマ娘・オグリ出没、東川騎手「変顔ポーズ」も

 この日は、午前9時の開門を待ちきれない笠松競馬ファンが、午前3時から一番乗りで正門前に並んだ。開門時には50人以上が列をつくり、グルメチケット(300円分)も配布され、お目当ての飲食店やキッチンカーへダッシュ。「小栗孝一商店」や「ホース・ファクトリー」では競馬グッズの販売も行われ、場内は大にぎわい。

 お昼に焼きそばを食べていたら、漫画「ウマ娘シンデレラグレイ」に登場するオグリキャップのコスプレ姿のファンが通り掛かった。撮影しようと追跡すると、笠松ライディングスクールで一緒に乗馬をしていた東川慎騎手と名古屋の浅野皓大騎手(羽島市出身)も追い掛けてきて「一緒に写真を撮って」と馬券売り場前でパチリ。東川騎手は得意の「変顔ポーズ」も披露してくれて、ムードメーカーぶりを発揮していた。

 所属騎手が少ないこともあって、騎乗数には恵まれている笠松の若手騎手たち。騎乗技術をめきめき向上させ、勝ち星も伸ばしている。11月2日に開催されるヤングジョッキーズシリーズの笠松ラウンド(2戦)には、東川騎手、深沢騎手、長江騎手の3人が挑戦する。地の利を生かして、ファイナルラウンド進出を目指して真っ先にゴールを駆け抜けたい。