佐々木朗希投手そっくりさんの長江慶悟騎手。ユニホーム姿で始球式登板も夢見ている

 「笠松競馬の佐々木朗希」が、勝負服姿から大変身の「そっくりショー」。

 ヤングジョッキーズシリーズ(YJS)笠松ラウンドで初勝利を飾った長江慶悟騎手(後藤佑耶厩舎)がサプライズのユニホーム姿を披露した。ファンには非公開だったが、YJS番外編として「ご褒美のコスプレイベント」を楽しんだ。

 デビュー3年目の長江騎手。当初の丸刈りから髪の毛が伸びて、プロ野球ロッテの佐々木朗希投手に「より似てきた」と評判だ。最終レースで騎乗した後、「背番号17」のユニホーム姿でイメージ撮影に協力してくれた。ジョッキーとしても成長し、知名度がアップすれば「夢のステージ」であるロッテ戦の始球式に、いつかに呼んでもらえるかも…。 

 ■長江騎手「まじですかー」と大喜び、渡辺騎手「似てるって得ですねえ」

 「どのくらい似ているか、見てみたいんだよ」。YJS当日の最終レース後、千葉ロッテマリーンズのファンでもある報道陣の一人から、長江騎手の勝利を祝うプレゼントが用意されていた。佐々木投手のレプリカユニホーム(上下)と帽子で、マリーンズストアで買い求めたものだという。「まじですかー」。びっくりプレゼントに長江騎手は大喜びだった。

 YJS第1戦、長江騎手は1番人気で完勝したが、第2戦は10番人気で撃沈。7着に残れば、ファイナラウンドルに進出できたが、10戦連続しんがり負けの馬に騎乗しアンラッキー。3番手からどんどん抜かれて、やっぱりしんがり負け。「地元だし、何とかなるかも」とファンも淡い期待を抱いていたが、長江騎手のYJS挑戦は「ゲームセット」となり、ファイナルへの野望は砕け散った。「『悔しい』の一言に尽きます。これじゃあ佐々木朗希投手を超えられないですね。もっと頑張ります」と予選落ちを残念がっていたが、最後に装鞍所前でサプライズが待っていた。
 
 渡辺竜也騎手も最終レースを終え、後輩・長江騎手にユニホームがプレゼントされると「すごい、いいですねー。めっちゃ似てるよ。似てるって得ですねえ」とうらやましがった。渡辺騎手は千葉県出身で、「ロッテファンか」との期待もあったが、野球ではなく、サッカー少年だった。中学時代にやっていたサッカー部のユニホームは「ロッテと同じ縦じまで、ちょっと似てましたけど」とも。

佐々木投手になりきって、セットポジションで投球フォームをまねる長江騎手

 ■「ロッテ戦の始球式いけますよね」「これ着ていくわ」

 厩舎関係者にも「そっくりだ」と持ち上げられ、長江騎手もすっかりその気になった。「アンダーシャツは黒色で」と撮影のクオリティーにこだわったリクエストもあり、早速、その場でユニホームの袖に両手を通すと、勇姿をお披露目。「いやあ、似てる。ロッテ戦の始球式、いけますよね」の声には、長江騎手も「これを着ていくわ」とウオーミングアップ前から「暴投モード」になった。

 グラブとボールまで用意されており、セットポジションで構えて本番さながら。佐々木投手の投球フォームの画像もチェック。「帽子を水平にかぶって、あごを引いて。向こうに松川虎生(こう)捕手がいると思って、よく見てー」と、臨時の「投手コーチ」が熱血指導。ボールを見せたり、投球フォームも披露し、笑顔を振りまくと「りりしいですね」の声も掛けられ、本人はご満悦。

 佐々木投手が完全試合を達成直後、センター方向を振り返って歓喜に浸るシーンは有名で、「やってほしい」というリクエストにも応えた。レース勝利後は歓喜の輪が広がる装鞍所エリアで「パーフェクト達成ポーズ」をしっかりと決めてくれた。

完全試合達成直後、センター方向を振り返って歓喜に浸った佐々木投手のパフォーマンスを披露する長江騎手

 ■小中学校の頃は野球少年だった

 11月12日は長江騎手23歳の誕生日だ。21歳になったばかりの佐々木投手より年上で、笠松競馬秋まつりのトークショーでも「あっちが僕に似ているんです」と強気の一言。暗いニュースが多かった笠松競馬にとっては、佐々木投手に似た長江騎手のYJS初出場Vは「朗報」「希望」であり、大きなアピールにもなった。佐々木投手の方は、恐らく長江騎手のことは知らないだろうが、体を張った勝負の世界で生きる同じアスリートとして、いつか対面できるかも。そうなればツーショット写真の記念撮影がありそうで、長江騎手やファンも楽しみにしている。

 長江騎手はジョッキーになる夢を実現したが、小中学校の頃は野球少年でもあった。小学校3年ぐらいから始め、中学では野球部で白球を追った。「ポジションはいろいろでしたね」。190センチ長身の佐々木騎手との身重差はちょうど30センチあるが、報道陣や厩舎関係者の期待と妄想は膨らむばかり。「まずは野球中継のゲストで呼んでもらって、始球式で登場かな。それも、佐々木投手の登板日に。それを狙って頑張ろう」と。長江騎手も「ゲスト、いいですねえ。投げるフォームをまねして、ちょっと勉強します」と実現を夢見ていた。

 「ユニホームありがとうございます。これ、めちゃめちゃいいです」と、まさかのプレゼントに感謝。パジャマなど部屋着にもなりそうだが、渡辺騎手からは「これ着て、攻め馬をしよう」との声も。早朝で服装は自由だから、いつかユニホーム姿で乗ってくれるかも。YJSで1着ゴールした勝利のゼッケンも手に、うれしそうだった。ユニホーム姿は笠松競馬の公式ツイッターにもすぐにアップされた。この日、応援に駆け付けた長江騎手のお母さんに贈った花束とともに、佐々木投手そっくりの勇姿で、家族やファンにも感謝の思いを伝えられた。

岩手の関本玲花騎手は2年前、楽天戦での始球式に登板した=楽天生命パーク(岩手競馬提供)

 ■岩手の関本騎手は、楽天戦で始球式に登板

 岩手競馬の女性ジョッキーで、笠松でも調教実習や期間限定騎乗を経験した関本玲花騎手。2年前、楽天生命パークでの楽天対ソフトバンク戦の始球式に登板。いつものカラフルな勝負服姿で力強い1球。三塁側に大きく外れたが、人気ジョッキーの登場にスタンドのファンは大喜び。関本騎手はデビュー2年目の「見習騎手」の段階で始球式へ呼ばれ、マウンドに立った。騎手としての実績はそれほど関係なく、アイドル性や話題性が優先されたようだ。

 それなら「長江騎手の始球式登板の可能性も十分あるのでは」と思えてきた。アピール次第では、関係者の努力で本当に実現するかも。「佐々木投手と対等に会えるように、まずは本業の競馬を頑張れ」と期待の声が上がった。

サプライズのプレゼント。ユニホーム姿で笑顔を見せる長江騎手

 ■「佐々木投手がメジャーへ行く前に」

 職場のスポーツ担当記者にも、長江騎手のユニホーム姿の印象を聞いてみた。「佐々木投手ですか、ものまねの人ですか。結構似てますね、びっくりしました」、「佐々木投手の方がちょっと『薄い感じ』ですかね。もう少し離れて見たら本物みたいでしょう」との意見。

 ロッテファンという女性記者は「(長江騎手も)成長しましたね。正面からの写真がよく似てます」。パーフェクト達成時のマウンドの砂入りキーホルダーを取り出して、長江騎手の始球式については「まだ5年ぐらいは大丈夫でしょうが、佐々木投手がメジャーへ行く前に実現できるといいですね」と期待を寄せていた。 

 笠松競馬盛り上げ隊の一員でもある「朗希そっくりさん」の長江騎手。ロッテ戦の始球式でストライクを投げて、全国区でプロ野球ファンからも熱い視線を浴びる日が来るかも…。

ぎふ信長まつりの騎馬武者行列で、馬上から勇姿を披露する木村拓哉さん(右)と伊藤英明さん

 ■キムタク信長「実際に劇中でまたがる馬」

 秋本番を迎えて、笠松競馬場から車で10分ほどのJR岐阜駅前一帯は、すごい盛り上がりを見せた。ぎふ信長まつり2日間の人出は過去最多の62万人に達し「キムタク信長 岐阜見参」に熱狂した。ソウル雑踏事故を受けて厳戒となり、マスコミの注目度も高く、ぎふチャンのライブ中継をはじめ、夜のニュース番組でも大きく取り上げられた。

 信長公騎馬武者行列には、俳優の木村拓哉さんと岐阜市出身の伊藤英明さんが、馬上で勇姿を披露した。地元の競馬ファンから「馬は笠松競馬から連れてきたのでは。すごくおとなしかったね」と聞かれたが、確かに見た目は、栗毛の名馬・ラブミーチャンによく似た顔立ちだった。レースで登場する誘導馬のように、群衆の前でも落ち着いていて、よく訓練されていた。

 映画「レジェンド&バタフライ」の公開を記念したトークイベントに出演した木村さんと伊藤さん。信長まつりで騎乗した馬について2人は「実際に劇中でまたがる馬です」と語っており、信長公らの騎乗馬として映画でも登場し、また騎乗姿を見られることになる。

 岐阜市内でのパレードといえば、昭和の時代のドラゴンズ優勝パレードが懐かしい。岐阜市出身の髙木守道さん(当時コーチ)をはじめ、 小松辰雄さん、宇野勝さんらが約5キロ、車でパレード。大勢のファンが車列を追っ掛けて移動していたが、転倒して骨折した高齢女性もいたという。今回の信長まつりでは、大きな混乱はなかったようで、木村さんも「統制が取れた状況の中、パレードをさせていただき、無事に終わることができ、本当に感謝しています」と騎馬武者行列の成功を喜んでいた。秋晴れの下、歴史的な一日となって柳ケ瀬一帯も活気にあふれた。コロナ渦を吹き飛ばす爽快な行進で、岐阜の良さを再発見できた。

ラブミーチャン記念、1着でゴールする大井のボヌールバローズと赤岡修次騎手。2着は向山牧騎手騎乗のメイクストーム

 ■ラブミーチャン記念、赤岡騎手が「重賞V請負人」

 2歳牝馬重賞の「第9回ラブミーチャン記念」(SPⅠ、1600メートル)は、高知の名手・赤岡修次騎手が「重賞V請負人」ぶりを発揮。大井からの遠征馬ボヌールバローズ(福永敏厩舎)に騎乗し、鮮やかな逃げ切りを決めた。

 グランダム・ジャパン2歳シーズンの第4戦。園田プリンセスカップを勝ち、ただ一頭の重賞ウイナーだったアドワン(兵庫)が競走除外(馬体故障)。7頭立てなら複勝は通常2着までだが、馬券発売開始後の除外で、複勝はちょっとお得な3着払いとなった。

 1番人気のボヌールバローズは先頭を奪うと快調な逃げ。秋風ジュニアを制覇した笠松・マイロマンス(後藤正義厩舎)=藤原幹生騎手=が2番手を追走。3~4コーナーでは、メイクストーム(川嶋弘吉厩舎)=向山牧騎手=が先頭に並ぼうかという勢いで一気に追い上げた。持ったままで4コーナーを回ったボヌールバローズは、赤岡騎手が気合を入れると後続を突き放し、メイクストームに2馬身半差でゴール。マイロマンは4着に終わった。

ラブミーチャン記念優勝馬ボヌールバローズと赤岡騎手(右)ら喜びの関係者(笠松競馬提供)

 ■向山騎手、地元馬メイクストームで「2着ならいいや」

 レース後、赤岡騎手は「まだフワフワしてたし、小回りコースだとコーナーでぎこちなく、(フットワークは)何回も手前を替えてガクガクしていましたが、力は発揮できた。広いコースの方がもっといい走りができる。競馬が上手だから距離が延びても大丈夫」と完勝劇に満足そう。福永調教師も「キャリア2戦でしたが、遠征競馬もこなしてくれて最高の結果を出せて良かった。長く活躍してもらえれば」と成長を期待していた。
 
 4番人気・メイクストームで、5番手から2着に突っ込んだ向山騎手。「初めて乗ったけど、よく走った。折り合いがつくし距離は長い方がいいね。まあ、2着ならいいや」と笑顔。さすがは笠松のレジェンドだ。メンバー最速の上がりタイムで、勝ち馬に詰め寄って見せ場をつくってくれた。2着なら上出来だろう。

 向山騎手は2日の2R、装鞍所騎乗となった返し馬で落馬し、鎖骨を骨折した。しばらくレースで騎乗できないのは残念だが、年内にも復帰し、元気な姿を見せてほしい。

オグリキャップ記念Vの船橋・トーセンブル。名古屋・東海菊花賞では渡辺竜也騎手が騎乗し、2着に追い込んだ

 ■渡辺騎手、船橋・トーセンブルで東海菊花賞2着

 11日の東海菊花賞(名古屋)では、今春のオグリキャップ記念Vの船橋・トーセンブル=岡部誠騎手=に、今回は渡辺騎手が騎乗した。岡部騎手が東海3冠馬のタニノタビトに騎乗したこともあって、南関東馬への騎乗依頼を受けた渡辺騎手。4番人気で、中団からよく追い込んで2着。勝った大井のコバルトウィング=吉原寛人騎手=には届かなかったが、タニノタビト(4着)をまくった鋭い末脚は光っていた。渡辺騎手にとっても、宿敵「岡部騎手・タニノタビト」に先着できたのは痛快だっただろう。検量室前では吉原騎手と健闘をたたえ合い、笑顔を見せていた。ラブミーチャン記念では騎乗馬がなく悔しい思いをしたが、今後も南関東や北海道の厩舎からも声を掛けてもらえるよう、全国レベルでの活躍を見せて「笠松・渡辺」をアピールしていきたい。

 2年ぶりに開催されたYJS笠松ラウンド。長江騎手と東川慎騎手は勝利を飾ったが、しんがり負けもあってファイナル進出を逃した。中京の芝レースにも騎乗できるチャンスだっただけに残念だ。東川騎手は今回でラストになったが、長江騎手と深沢杏花騎手は来年もYJSに参戦でき、笠松でまた騎乗するだろう。騎乗技術の向上とともに、くじ運も良くなるよう、パワースポットのオグリキャップ像にこっそりお祈りするなどして、渡辺騎手以来となるファイナリストの座を射止めたい。