授業参観では5、6年生合同で新聞学習を実践。保護者と一緒に記事を読み、意見交流した=揖斐郡揖斐川町谷汲名礼、谷汲小
新設されたNIEコーナーで新聞を広げ、友達と意見を交わす児童ら=揖斐郡揖斐川町谷汲名礼、谷汲小

 岐阜県揖斐郡揖斐川町谷汲名礼の谷汲小学校(福永一也校長、児童119人)は、2019、20年度の県NIE実践校です。学校は町の東部に位置し、校区には緑豊かな自然や校歌にも歌われている根尾川、飛鳥川、管瀬川の清流が流れています。初夏には蛍が飛び交い、川面には若鮎も姿を見せてくれます。文化庁の「日本遺産」に認定された「西国三十三所観音巡礼」に含まれる谷汲山華厳寺や、比叡山延暦寺ともゆかりのある両界山横蔵寺などもあり、春の桜、秋の紅葉を楽しみに多くの観光客が訪れる地域です。

 こうした身近な話題や国内外のニュースも紹介されている新聞を読むことで、児童には「新聞で社会の動きについて自分なりの考えを持ち、たくさんの人と交流し、考えを深めていってほしい」と思います。

 実践スタートとして、児童が頻繁に通る廊下の一角に「NIEコーナー」を設けました。新聞各紙を壁に掲示し、机や椅子も置いてサロン風にし、自由に新聞を読めるようにしました。

 平成から令和へ-。新元号が令和になったと発表された記事、平成最後の4月30日や令和最初の5月1日の新聞各紙も掲示すると、実に多くの児童が集まりました。新元号発表のポーズをまねしたり、各紙の見出しや写真の大きさなどを比べたり...。時代の移り変わりを伝える記事が新聞に親しむきっかけになった児童もいて、登校後や休み時間などに自ら進んで新聞を読む姿も増えてきました。

 6月の授業参観では5、6年生51人が保護者と一緒に記事を読み、感想や課題を伝え合う「ファミリーフォーカス」を行いました。

 取り上げた記事(テーマ)は、改元や来年の東京五輪聖火リレーのコース、滋賀県大津市で園児が犠牲になった交通事故など六つ。記事は児童自らが選びました。新聞に慣れ親しみ始めた児童は、世の中の出来事を自分のこととして考える、当事者意識が芽生え始めたようです。

 聖火リレーの班は「日本全国、岐阜県も通ることを知ったが、揖斐川町は通らないので残念」「聖火は消えないのか」。交通事故をテーマにした班は「まずは自分たちができること(交通ルールを守る)をしっかりとやっていくことが大切」などの意見を述べました。

 読めない漢字や分からない言葉の意味を保護者に尋ねる児童もいました。授業参観(ファミリーフォーカス)を振り返って、「同じ記事を読んで交流することで、子どもの考えを知るだけでなく、親の思いを伝えることもできた。親子の絆も深まりそう」と話す保護者もいました。

 子どもたちの多様な力を育むNIE。その活動は学校から家庭、地域へと広がりそうです。子どもたちは、新聞を読み、疑問に思ったことを調べたり、意見を伝えたりすることが楽しくなってきた様子です。日頃の振り返り学習にかべ新聞も制作しており、コンクールにも挑戦できたら、と思っています。今後も主体的に学びを深める子どもたちの力を伸ばせる環境作りに努めたいです。どのような実践ができるのか-。児童と共に楽しみながら取り組んでいきたいです。

(揖斐郡揖斐川町立谷汲小学校教頭・香田明彦)