地元民謡保存会のメンバーから村伝統の民謡を学ぶ児童=白川村平瀬、村南部地区文化会館
偶然居合わせた親子らに合唱を披露する児童=同

 「確かじいちゃん民謡得意やったもんな?」と、平瀬民謡伝承会の新谷時男さん(78)=大野郡白川村平瀬=が、児童に親しげに語りかける。昨年開校した同村鳩谷の小中一貫校・白川郷学園(同村鳩谷)は、平瀬地区の旧平瀬小学校舎を郷土教育の拠点として活用。村民を講師に迎え、地域の課題や伝統文化を教えている。

 旧平瀬小学校は2011年に閉校し、現在は「白川村南部地区文化会館」として村教育委員会に管理・運営されている。トレーニングルーム、図書室や貸し会議室を備えるほか、乳幼児親子対象の子育て教室や高齢者学級が開かれており、幅広い世代の村民が利用している。

 同学園は、今年から同会館での宿泊研修を始めた。「一人前の白川びと」を目指して村の歴史や文化を学ぶ授業「村民学」を行う。児童・生徒は年に70時間ある総合学習のうち半分の35時間を村民学に割いて学んでおり、年に1度2泊3日の宿泊研修に参加する。

 6月28日には、村民学で「村の文化の継承」をテーマに掲げている5年生が宿泊研修に臨み、新谷さんと飯島民謡保存会の木下喜実雄さん(67)=同村飯島=を講師に招いて村の民謡を学んだ。新谷さんの近所に住んでいる児童もおり、雰囲気は終始和やか。新谷さんは民謡の一節を高らかにうたいながら教え、「民謡は『白川びと』を根底でつないどる。伝統を絶やさず伝えることが大事」と児童に思いを語っていた。児童は学んだ民謡を9月の体育祭で披露する予定。

 幅広い層の村民と交流できることも宿泊研修の強みの一つ。この日、児童は今年5月に導入されたばかりの移動販売車で昼食を購入したり、温泉施設「しらみずの湯」で入浴するなど、会館付近を周遊。当初は予定されていなかったが、子育て教室に訪れた親子らの前で合唱も披露した。会館を管理する村教育委員会の新谷さゆりさん(47)=同村御母衣=は「さまざまな目的で集まった村民との交流の場ができている」と歓迎した。

 小学校が無くなった後の平瀬地区に子どもの声を取り戻したいという住民の願いもあったという。同学園の水川和彦校長は「村民の力を借りて、郷土教育に特化した『第2学習拠点』として同会館を今後も活用する。児童・生徒には村民の生の声に触れ、村で生きることの課題と面白さを学んでもらえれば」と思いを新たにしている。