笠松町の小中学生が参加した鮎鮨街道の行列を再現する催し=羽島郡笠松町下新町
鮎鮨を試食する子どもたち=羽島郡笠松町下新町、笠松小学校

 木曽川の水運に恵まれ、江戸時代には、交通や経済の要衝として栄えた羽島郡笠松町。同町下新町の笠松小学校では、当時栄えた鮎鮨(あゆずし)街道の行列を再現する校区内の催しへの参加や地域の調べ学習を通して、歴史ある郷土への誇りを次世代に引き継ごうとしている。

 皆の衆いざ出立-。9月下旬、町内の小中学生が法被や着物姿で列をなし、江戸期の風情が残る町並みを練り歩いた。江戸時代に、長良川で取れた鮎をなれずしにして江戸に運び、将軍家に献上した鮎鮨街道。その様子を再現する催しが毎年、町文化協会の主催で開かれ、参加した子どもたちは当時の光景に思いをはせた。6年の園部楓馬君(11)は「僕たちの町に、教科書に登場する徳川家康とも関わりのある歴史があることに驚いた」と話した。

 催しを前に、同校を含む町内の小学校3校では6年生が街道の歴史を学ぶ授業を行っている。今年は、同協会の協力で町歴史未来館学術専門員の高木敏彦さん(65)を講師に招き、鮎鮨の献上が約250年続いたことや、重さ25キロを超える木おけを5日間かけて運んだことを伝えた。当時を再現した鮎鮨の試食もあり、加藤舞夕さん(12)は「チーズに近い味だった。作り方や、どの道を運んでいたのかなどを詳しく調べてみたい」と興味を深めていた。

 同協会の高橋恒美会長(76)は「子どもたちに搬送を託すのは、笠松の歴史を体験して勉強してほしいから」と意義を語る。高木さんは「町の人が抱いている郷土への誇りを次世代につなぐ手伝いができたら」と語った。

 同校では、街道の歴史のみではなく、6年生が毎年、総合的な学習の時間に郷土の歴史を学んでいる。9月に実施する、全学年の縦割りのグループで校区内の名所旧跡を回る遠足に向け、児童は約半年かけて、学校図書館の史料を調べ、グループごとに名所を10カ所ほど紹介する「笠松歴史マップ」を作成。実際に校区内を歩いて下調べを行い、事前にグループ同士で説明する内容を発表し合ってチェックをするなど準備を進める。イラストやクイズを盛り込むなど工夫が光る。遠足後に、一人一人が新聞にしてまとめるという。

 相手の立場になって物事を表現する機会をつくることで、町が長年力を入れている道徳教育の深化にも一役買っている。澤田辰男校長は「一人一人がグループのリーダーとしての役割を果たすいい機会。歴史の学習とともに、文章をまとめたり、分かりやすく伝えるコミュニケーション能力を高めることにもつながっている」と話した。