「財産」をテーマに作ったかべ新聞を紹介する5年生=大野郡白川村鳩谷、白川郷学園
気になる記事や写真を廊下に掲示。仲間との意見交換の場にもなっている=同

2016、17年度のNIE(教育に新聞を)実践校である大野郡白川村立白川郷学園(同村鳩谷)は、羽島市立桑原学園(同市桑原町八神)とともに本年度、県内で初めて設置された「義務教育学校」。小中学校9年間の教育活動を一貫して行い、白川郷学園では1~9年生計127人が学んでいる。特色ある教育のもとで深化させるNIE実践の歩みと成果を探った。

 白川郷学園は11年度から小中一貫校となり、13年度からはコミュニティ・スクールとして地域の特性を生かした教育に取り組んできた。義務教育学校は学校独自にカリキュラムを作成することができ、本年度から▽村民憲章に沿って9年間で学習・体験を重ねる「ふるさと学習」▽村の伝統文化などを地域の人から学ぶ「白川びと学」▽1年生から白川村を題材にした英語を学ぶ「英語教育」-などのカリキュラムを編成。

 このうち「白川びと学」では、8年生12人が「白川郷の新しい名物を作ろう」と赤カブやワラビなど地元食材を用いた「白川郷いなり」を考案・開発し、地域の協力を得て飲食施設やアンテナショップなどで販売、今月11日からは道の駅「白川郷」(同村飯島)の食堂メニューに加わった。

 「英語教育」では、6年生17人が修学旅行先の京都と奈良で村のジュニア観光大使として白川郷観光マップ(前年度8年生制作)を配り、外国人観光客に英語で世界遺産・合掌集落など白川郷の魅力をPRした。

 同時にNIE活動も深めている。昨年度は先生が中心となって玄関前に新聞コーナーを開設し、旬の話題を紹介した。「宝探しコーナー」と位置付け、新聞に親しむ環境づくりに努めた。リオ五輪で金メダルを獲得した競泳の金藤理絵選手らの頑張りに刺激を受けたり、熊本地震の被災者に思いを寄せながら日常生活の大切さを知り感謝の気持ちを高めたりと、児童生徒たちは社会の出来事を多面的に見るようになった。

 本年度は学園の中心にある図書館に新聞コーナーを移設した。5年生のNIE係が毎朝、新聞を棚に並べ、「記事の中に習っていない漢字や分からない言葉を見つけたら図書館の辞書や本ですぐに調べることもできる」と学習意欲を向上させる。

 5、6年生は気になる記事をノートに貼って感想を記す自主学習に励むなど主体的な実践を重ねてきた。さらに5年生17人は新聞各紙を読み比べて表現の差なども見つけ、記事や写真を廊下に掲示して紹介。付箋に互いの感想を記すなど意見交流の場にもなっている。新聞で宝探しを続けるうちに自分たちの日常にも財産となる宝がたくさんあることに気付いた5年生は1学期の活動を"財産新聞"としてまとめた。岐阜新聞主催のかべ新聞コンクールにも出品する予定だ。

 ある班は、東日本大震災で被災した宮城県石巻市の門脇小学校児童が育てたヒマワリの種を譲り受け学校で育てたヒマワリの葉で今夏、1匹のセミが羽化したことを取り上げ、「希望」と記した。また、同村に伝わる民謡「こだいじん」(県重要無形民俗文化財)を民謡保存会の人たちから学んでいることを「財産」とし、地域の一員としての自覚を高める班もあった。

 新聞作りも終盤を迎えた10月上旬、涙を流している児童がいた。発行日、発行者などを書き忘れていたことに気付いた。新聞の成り立ちを授業で学び、日頃から記事を読んでいるのに-の悔し涙があふれる。伝えたいことは書いたが、伝えるべき情報は書けただろうか。読み手は細かに説明しなくても分かり合える仲間だけではない。書き手として改めて読み手の存在を強く意識した瞬間だった。

 「新聞を読み、理解し、発信する実践の一つ一つが子どもたちの生きる力、財産になっていると感じます」とNIE実践代表者で5年担任の横山成子教諭。水川和彦校長は「教育目標の『ひとりだち 自立 共生 貢献』のもと、未知への探究を続ける子どもたちの姿はたくましい。白川郷学園ならではの教育活動と関連させながら新聞活用の環境づくりに努めたい」と話す。