ヤングジョッキーズシリーズで勝利を飾り、喜びの笠松・渡辺竜也騎手
フジノシラユキに騎乗し、ゴールを目指す渡辺竜也騎手(中央)
ゴール前、内側から差し返して、アタマ差で1着になったフジノシラユキ(渡辺竜也騎手)
笠松第2戦を制覇し、笑顔の富田暁騎手(JRA)
トライアルラウンド笠松に参戦した地方とJRAの若手騎手たち(笠松競馬提供)

 ゴールデンウイーク明け、デビューしたばかりの地方競馬の10代騎手らが笠松で燃えた。

 地方、中央競馬の若手騎手が激突する「ヤングジョッキーズシリーズ トライアルラウンド笠松」が10日、笠松競馬場で行われた。今年4月、笠松でデビューした17歳・渡辺竜也騎手と、JRA1年目の富田暁騎手がそれぞれ勝利を挙げ、地方勢と中央勢のトップに立った。ゴール前の競り合いを制した2人は、ファイナルラウンド進出を夢見て、地元ファンに満面の笑みで応えていた。

 レースは今年新設され、若手騎手同士の対戦で騎乗技術を磨く。地方から24人、JRAから22人が出場。高知(4月)から浦和(11月)まで各地方競馬場を舞台に、東西に分かれてトライアルラウンドを実施。12月27日の大井、28日のJRA・中山でのファイナルラウンドを目指して熱戦を繰り広げる。各騎手は2~4競馬場で騎乗し、着順に応じた獲得ポイントの平均点が高い騎手14人(地方、中央各7人)がファイナルに進出できる。

 笠松初戦を勝った地元の渡辺騎手は、Vサインに彩られた勝負服で実力をアピールした。4番人気フジノシラユキ(牝4歳)に騎乗し、2番手から抜け出すと、最後の直線で、19歳・栗原大河騎手(金沢)が騎乗したメイショウダイウン(牡4歳)とのデッドヒートをアタマ差で制した。

 渡辺騎手は「3コーナーから早めに動いて、直線では追い抜かれたが、差し返すことができて良かった」。ゴールした瞬間は「負けたと思ったが(内から)届いていた。帰ってきたら1着の所に厩務員さんがいたので、うれしかった」と笑顔を見せた。「いいスタートが切れたので、次の金沢(8月22日)でも頑張ります」と闘志満々。笠松でデビューして1カ月半。4月26日にはサムライズムで初勝利を飾っており、これが2勝目となった。惜しくも2着の栗原騎手は「ゴールでは負けていた。悔しいが、次のレースへプラスにしていきたい」と意欲を見せた。

 地元・笠松ラウンドをいきなり制覇して「持っている17歳」と、地元ファンをうならせた渡辺騎手。アピールポイントは「持ち前の明るさで周りの人を楽しませ、レースでは勝負強さを見せたい」。開幕前の抱負も「自分らしい騎乗で、ファイナルラウンド『V』を狙います」と強気だった。初戦1着(30ポイント)、2戦目6着(8ポイント)と宣言通りの活躍ぶりで、地方勢トップを走る。笠松と金沢での計4レースに参戦し、「1番年下ですが、遠慮せずに優勝を目指したい」と、金沢でも上位に食い込めば、ファイナル進出の可能性は高い。

 笠松第2戦を勝ったJRAの富田騎手。6番人気ブラックメルベイユ(牝4歳)で、2番手追走から先頭に立ち、押し切った。中央ではまだ1勝だが、笠松で地方初勝利。「手応え十分で、抜け出しただけ。いいアピールの機会になったので、中央でもどんどん勝っていけるように努力したい。トライアル1位で年末のファイナルを目指したい」と闘志。

 開幕戦となった高知ラウンドでは、荻野極騎手と小崎綾也騎手が勝つなどJRA勢が1、2着を独占したが、笠松ラウンドでは地方勢が巻き返した。初戦は1~3着を笠松、金沢勢が占め、東海・北陸地区のレベルの高さをJRA勢に見せることができ、地元ファンを喜ばせた。第2戦でも、2着に加藤聡一騎手(名古屋)、3着には柴田勇真騎手(金沢)が入るなど、地方勢が活躍した。

 笠松では苦戦したJRA勢。初戦5着の三津谷隼人騎手(JRA)は、笠松競馬場の印象について「(やや重の馬場で)雨が降った影響もあったのか、砂の深さがあるなあ」と。JRA勢は、笠松独特の馬場状態とコーナーがきつい小回りコースに戸惑ったようだ。

 年末まで若手ジョッキーの激突は続く。東日本地区開幕戦は5月16日に川崎で行われ、JRAからは藤田菜七子騎手や木幡育也・巧也騎手らが参戦。西日本3戦目の名古屋ラウンドは6月8日に開催される。

 騎乗機会に恵まれず、やめていく若いジョッキーも多い厳しいこの世界だが、今回のような地方、中央の若手騎手の交流レースはとても良いアイデアである。賞金面では大きな格差はあるが、人馬の相互交流は急速に進んでいる。地方競馬出身騎手のレベルの高さは、アンカツさんをはじめ、JRAで3年連続リーディングの戸崎圭太騎手(大井出身)らが実証済み。これからは中堅・ベテランも含めて、地方と中央の交流がさらに進むといい。