2011年5月22日、息子は、小学生倉敷王将戦県大会(低学年の部)に出場しました。

 小学生が出場できる将棋の大会には、岐阜市や名古屋市などの市が主催する大会、新聞社や企業が主催する大会など、さまざまなものがあります。

 その中でも、全国大会に出場する県代表の選手を決める小学生名人戦と小学生倉敷王将戦は、県内の強豪が勢ぞろいする大会です。今考えると、将棋を始めてひと月もたっていなかった息子が、よくそんな大会に出たなと驚きます。

将棋を始めた頃に参加したチャリティー将棋大会で羽生善治さんと記念撮影をする高田明浩さん=2011年6月、名古屋市内

 ただ、当時の私は、そういうことはよく知らず、将棋教室の柴山芳之先生から「大会があるので良かったらどうですか」と聞かれ、息子に尋ねると「行きたい」と言うので、妻に連れて行ってもらっただけのことでした。

 私は当日、自宅の教室で、授業をしていました。「始めたばかりだから勝てないだろうけど、楽しんで来てくれたらいいな」と思っていたので、帰宅後、息子から、「2勝2敗だった」と聞いて驚きました。同級生で、当時、市内の同じ地区に住んでいた磯谷祐維さん(現女流アマ名人)との対局では、「二歩に気付かずに負けた」そうで、とても悔やんでいました。

 私はこれまで何度か、将棋を教えた自分の教室の生徒を大会へ連れて行ったことがあります。将棋を覚えたばかりの子は、「行ってもどうせ負けるから」と、尻込みするのが普通です。ある程度指せるようになった子でも、「大会はちょっと…」とちゅうちょする子もいます。

 私の本業である作文コンクールへの出品でも、それは同じです。1年目の子の多くは、「どうせ無理」と、作品を出すことに二の足を踏みます。そのため、私が、「下手でもいいからとにかく書いてみよう。たくさん書いているうちに、自然とうまくなるよ」と勇気付けて、なんとか提出にこぎつけるのが普通です。

 とはいえ、時々、初めから、大会に出場したり、コンクールに出品したりする意欲的な子もいます。そういう子は、その後、どんどんレベルアップしていきます。

 「どうせ入賞なんて無理だから」と思ってしまう気持ちも理解できるのですが、諦めずにチャレンジする姿勢が大切なんだなと思います。

 息子も、負けることを恐れないチャレンジ精神があったからこそ、レベルアップできたのかなと感じています。

(「文聞分」主宰・高田浩史)