岐阜市北部の田園地帯に、古代遺跡のような光景が広がり、話題を呼んでいる。正体は、建設が進む東海環状自動車道・岐阜インターチェンジ(IC)の橋脚。見る角度や時間帯によって表情を変え、さながら英国の世界遺産ストーンヘンジやギリシャ神殿、あるいは摩天楼のようだ。


現場を管轄する岐阜国道事務所によると、これだけ多くの橋脚が立ち並ぶ光景は珍しいという。建設現場の責任者も「自分が見てきた中で一番多い」と舌を巻く。
白い巨塔
JR岐阜駅から車で20分余、柿畑が広がる里山を走ると、白い巨塔群がぬらりと現れる。驚くのはその数。一帯には現在60本もの橋脚が林立する。年度内になんと全74基を建設する予定だ。

出入りする工事車両の邪魔にならないよう注意深く近づく。遠くから見ると数に目を奪われるが、近くで見るとやはり「でかい」。本線道路の橋脚は20~30メートル。一般道と本線をつなぐランプの橋脚でも10メートル以上ある。道路が完成した後は下支えをする地味な役回りだが、独立して立つ姿はめちゃくちゃ頼もしい。
ラーメンや小判
よく見ると、不思議なほど複雑でユニークな形をしている。本線の下部工やランプウエー、川の中など役回りによって形や大きさが違うらしい。「ラーメン橋脚」「小判柱」など名前もユニーク。それぞれの構造と役割をくわしく知るのも面白そうだ。

青空に映える白柱は、なるほどストーンヘンジのよう。英国を代表する巨石遺跡群は、太陽信仰の儀式や天体観測に使われたとの説がある。そのせいだろうか、現代社会を象徴する無機質な構造物から、どこか呪術的な香りが漂ってくるから不思議だ。
ストーンヘンジの奇跡

ある日の夕暮れとともに、それはやってきた。取材中、柱の間からのぞくだいだい色の空に、垂直に光る虹色の光。太陽の左右が輝く気象現象「幻日(げんじつ)」だ。さらに太陽から炎のような光が立ち上る「太陽柱(たいようちゅう)」も同時に出現。「奇跡か」。神秘的な光景にしばし見とれる。さすが岐阜のストーンヘンジ。お祈りすれば雨くらい降りそうだ。
虫の音をBGMに、夕闇に浮かぶ摩天楼を眺める。恋人を連れてきたいほどロマンチックだ。幻日や太陽柱を呼んだパワースポットでもある。ここでプロポーズをすれば、快諾は間違いないだろう。
今が旬

現場を管理する国土交通省岐阜国道事務所の東海環状自動車道出張所によると、岐阜ICは接続するトンネルが高く本線が高所に建設されるため、ランプ道路が長くなって橋脚の数が他インターに比べても多く必要という。また交通量が比較的多いと予測されるため、立体交差など大がかりな構造になったことも、橋脚が多く立った要因という。
永富達也出張所長(56)は「これだけ大きいインター建設を担当したのは初めて。橋脚の数も一番多い」と感慨深げに眺めた。
