「強くなるには、どうしたらいい?」

 そう明浩が話していたので、柴山芳之先生に尋ねると、「何か得意戦法をつくったり、『詰め将棋』や『次の一手』の本を買って解いたりするといいですよ」とのことでした。

 そこで、私は入門書を読んだ後、「棒銀戦法」「四間飛車戦法」「詰め将棋」「次の一手」の本を購入しました。しかし、息子は「漢字が読めないから、自分では読めない」と言うのです。

 私は「新聞を読んでいる息子が、なぜ読めないのだろう」と不思議に思ったのですが、本を開くと納得でした。

小学3年の夏休み、白川郷を訪れた(左から)高田明浩さん、母乃理子さん、父浩史さん=2011年8月、大野郡白川村

 「捌(さば)く」「形勢判断」「穴熊」「玉の堅さ」「投了」「天王山」。将棋の本には、今まで聞いたことのない用語や、通常とは異なる使い方の言葉がたくさんありました。

 特に、よく使われる「捌く」という言葉は「魚をさばく」「仕事をさばく」といった通常使われる意味とは違う独特の用語で、理解するのも大変でした。

 最初は、二つの戦法の指し手の解説を私が読み、息子が駒を動かしていましたが、しばらくすると、息子の気に入った「棒銀戦法」だけに集中しました。

 私が教えていると、「こう指されたらどうするの?」という息子の質問が、たびたび飛んできます。でも、本に書かれたことを理解しているだけの私には、答えることができません。そこで、息子の質問に答えようと「棒銀戦法」の本を、さらに5、6冊買いました。

 しかし、たくさん本を読んでも、全ての変化が書かれているわけではありません。そのため結局、答えられなかった質問も多かったのですが、ある程度は答えることができました。そんな様子を見ていた妻は、しばしば「よくそこまで教えてあげられるね。すごいね」と褒めてくれたものです。

 ただ、私は息子が幼い頃から、いつも彼の好きなことを一緒に楽しむようにしていたので、それがその時期、たまたま将棋だったのかなと思います。

 とはいえ、一般の人向けの本でさえ、これほど難しいものであるとは、私の想像以上でした。その難しさに少し嫌気が差しながらも、奥の深さに驚き、息子のリクエストに応えて将棋の勉強をしていた毎日は、今となっては懐かしい思い出です。