福富悌医師が開いている幼児のスケートボード教室(福富医師提供)

小児科医・福富悌氏

 子どもが抱える大きな問題の一つに不登校があります。これは新学期になってしばらくすると始まり、最初は何らかの疾患を疑い小児科を受診することがあります。

 この不登校の原因は平成30年の文部科学省の調査で、いじめ、友人関係を巡る問題、教師との関係を巡る問題、学業不振、進路不安、部活動への不適応、学校の決まりなどを巡る問題、入学、転編入学、進級時の不適応、家庭生活に起因する問題などがあります。ところが学校に行きたくない理由として、朝起きられない、疲れる、学校に行こうとすると体調が悪くなる、などの身体的原因も多く、これらは今の季節に始まることが多いため5月病ともいわれ、内科や精神科、子どもであれば小児科を受診することになります。

 このようなことは、入学や新学期に入るなどの環境の変化、地球温暖化による春が一気に駆け抜け真夏のようになる気候の変化が影響していると考えられています。しかし、不登校の引き金となる体調不良は、環境や気候の変化そのものだけが原因でなく、環境や気候の変化に合わせることができないことも原因であると思います。このようなことに対して、最近「レジリエンス」という言葉を耳にすることがあります。

 レジリエンスとは、困難な環境にもかかわらずうまく適応する過程・能力・結果と定義され、適応に関わる幅広い概念であり、誰もが身に付けられる精神的回復力であるとされています。たとえ失敗した経験だったとしても、頑張ったと捉えることでレジリエンスが高まります。「誰にも認めてもらえなかった」ということでも、頑張ったと認知することでポジティブに捉えることが可能です。

 ストレスの多い現代社会において、レジリエンスの有用性は高く、そのため多くのストレスを抱えた子どもに関わる際にはレジリエンスの重要性を理解し、子どもの発達過程において種々のレジリエンスを育み、強化し促進するような援助が必要と考えられます。このような力は個人の気質ではなくパーソナリティーによるものです。このパーソナリティーは誕生後の関わりで形成されると考えられています。また、努力していないとレジリエンスは生まれにくいため、努力は必要です。

 私は幼児期に遊びの中で転んでも自分で立ち上がる体験を積むことで、レジリエンスを習得できると考えました。その一つの実践として、幼児期からのスケートボード教室を行っています。不登校を減らすためにも、今までの褒めて育てる子育てから、レジリエンスを育てる子育てを考える時期に来たのだと思います。