特別観覧席で笠松競馬の熱いレースをライブ観戦するファンたち。第4コーナー付近の攻防が楽しめる

 開門前から多くのファンが並んで、早々と「満席」になった。新型コロナウイルス対策で、無観客レースが半年以上続いた笠松競馬場。ファンの入場が再開され、22日の本場開催からライブ観戦が可能になった。用意された客席は、特別観覧席への「先着116人限定」で、狭き門突破へダッシュ。全国の地方競馬場で最も厳しい制限付きで、入場を断念した来場者も多かった。

 場内では「この日を待ち望んでいた。インターネット投票より、やっぱり馬券を手にして間近で生レースを楽しみたい」というオールドファンや若者、女性客の姿があり、第4コーナーから直線ゴール前への迫力あるレースを満喫していた。

 観客入りレース再開初日となった22日、「一番乗りのファンが来場しているかなあ」と、午前8時に正門前に行ってみたが、まだ誰も来てないようで、自分が「一番乗り?」になってしまった。しばらく待っていると、ウオーキングの人たちの往来はあったが、並ぼうとするファンの姿はなし。開門の10時30分まで2時間以上あり、「日本ダービーなどJRAの徹夜組は特別。のどかな笠松ではこんなものかなあ」と当てが外れて、その場を立ち去った。

 その後、期待していた展開になった。職員が開門準備を始めると、ファンがどっと詰め掛けたそうだ。駐車場での待機組もいたのか、午前9時50分までの1時間ほどで上限の116人に達し、入場ストップになったのだ。

 警備員によると「初日は名鉄踏切近くの道路沿いまで長い列ができた」という。「先着人数に達し、入場の受け付けは終了」の案内が入場門前や駐車場であり、ホームページにも掲載されたが、「遠くから来たのに」「せっかく競馬新聞を買ったのに」といった不満の声もあったそうだ。この日を楽しみにしていたのに、入場できなかった笠松ファンの残念な気持ちはよく分かる。笠松競馬場で開門前から長い行列ができるのは異例のことで、場内外に3万人以上が押し寄せたオグリキャップの引退セレモニー(1991年1月)以来のことだろう。

「先着116人限定」で、観客入りレースが再開された笠松競馬場。開門時間には整理券を手にしたファンが並び、入場した

 正門前では、コロナ対策として「密にならないように」。夏の残暑は続いており、長時間並んでいれば「熱中症の危険もある」ということで、2日目からは入場整理券を配布して対応。午前8時50分には職員が配り始め、10時10分には上限の116人に達した。最終日の25日は雨天となったが、意外にも大勢のファンが「入場門をくぐり抜けよう」と来場。9時50分には入場ストップで、案内板が掲げられた。配布された整理券とコロナ対策の「エチケットカード」を手にして開門を待っていた来場者は、10人ずつ呼ばれて検温や消毒を済ませると、ようやく入場することができた。

 第2駐車場には思った以上に多くの車が止まっていた。朝、入場できずに悔しい思いをした人は出直したのか、午後4時から入場可能(空席の人数分)となる場外ナイター競馬へと突撃。「大井などが開催されていて人気がある」そうで、15人ほどが並んで入場を果たした。今回の「先着116人限定」は、笠松競馬ならではのドタバタ感はあったが、大きな混乱には至らなかったようだ。

              
 29日からは新たに西スタンドを入場エリアに加えて、入場者の上限を先着480人にする(シアター恵那は156人)。整理券は配布しないそうで、特別観覧席の席料は通常料金。清流ビジョンは近くなるが、ゴール前での攻防やパドックがよく見える中央、東スタンドは閉鎖のまま。コロナ前の平日には約800人が来場していたから、これまでの6割程度のファンが入場できることになる。
  
 競馬場としては「場内の売店にも再開をお願いしている」とのことで、次回開催の10月5日までには出店があり、「懐かしいあの味」を堪能できそうだ。5日には長江慶悟騎手候補生が笠松デビューし、紹介セレモニーも当日行われる予定だが、ウイナーズサークル前は制限エリア。4月にデビューした深沢杏花騎手のように、映像配信になりそうだ。渡辺竜也騎手の地方通算300勝達成セレモニーも5日の予定。コロナ対策が最優先で、ファンと交流できるセレモニーは当分先になりそうだが、ウイナーズサークル前にも人数限定でファンが参加できてもいいのでは...。

 地方競馬は観客入りレースが続々と再開されており、金沢は27日から、園田は30日から本場開催での入場可能になる。笠松では無観客レース中からパドック、ゴール前のユーホールは馬主ら競馬関係者に開放されていた。名古屋競馬はほぼ通常開催で、23日の笠松本場入場者が115人に対して、名古屋場外は800人超え。このギャップには違和感があるし、ゴール前での観戦を楽しみにしている笠松ファンのためにも、早く通常開催に戻してもらいたい。

岐阜金賞を制覇したダルマワンサ(加藤聡一騎手)と2着ニュータウンガール(藤原幹生騎手)。2頭は盛岡・ダービーグランプリ出走予定馬に選定された

 ■ダービーグランプリに笠松のダルマワンサとニュータウンガール選定

 10月4日には盛岡で、地方競馬の3歳王者を決めるダービーグランプリが開催される。他地区出走予定馬が発表され、笠松から岐阜金賞馬ダルマワンサ(牡3歳、田口輝彦厩舎)と、東海ダービー馬ニュータウンガール(牝3歳、井上孝彦厩舎)の2頭が選定された。ダルマワンサには筒井勇介騎手、ニュータウンガールには水野翔騎手が騎乗予定。

 南関東からは全日本2歳優駿Vのヴァケーション(川崎)など2頭。北海道からは王冠賞Vのコパノリッチマンなど2頭が選定され、豪華メンバーを地元・岩手勢が迎え撃つ。
 
 昨年の岐阜金賞馬・ニューホープ(田口厩舎)はダービーグランプリ5着だった。同じく吉田勝利オーナーの持ち馬であるダルマワンサは、岩手での在籍経験を生かしたい。2走前の盛岡・ハヤテスプリントでは、笠松から遠征した筒井騎手騎乗で2着。距離が2000メートルに延びるダービーグランプリで末脚爆発なら、上位に食い込むチャンスはある。相手は強豪ぞろいだが、筒井騎手は「馬の調子はいいので、胸を借りるつもりで」と闘志を燃やしている。

 ニュータウンガールは選考委員会指定馬。駿蹄賞、東海ダービーを制覇し2冠。騎乗した佐藤友則元騎手もダービーグランプリ参戦に意欲を示していた。岐阜金賞ではダルマワンサに東海3冠を阻止され、金沢・MRO金賞に続いて2着だったが、レースセンスと安定感は抜群。水野騎手は今年の東京ダービーではブリッグオドーン(大井)に騎乗し、4着に突っ込んだ。南関東での期間限定騎乗で20勝、海外を含めて遠征競馬が得意。ビッグレースでの勝負強さを発揮し、ニュータウンガールの新たな一面を引き出したい。

2歳牝馬ベニスビーチに騎乗し、秋風ジュニアを制覇。スマイル全開の筒井勇介騎手

 ■秋風ジュニアは筒井騎手騎乗のベニスビーチ制覇

 秋風ジュニア(2歳準重賞)は24日、笠松で行われた。昨年、ダルマワンサが優勝し、ニュータウンガールは4着だったレース。今年も門別からの移籍組が強く、田口厩舎のベニスビーチ、マナカフナの牝馬2頭がワンツーフィニッシュ。ともに吉田オーナーの所有馬で、同じ馬主服を着用した筒井騎手と丸野勝虎騎手がゴール前をにぎわせ、ベニスビーチが鮮やかに差し切った。

 勝利に導いた筒井騎手は「展開も向いて、何とか届いてくれと追った。田口調教師と吉田オーナーの馬では、たくさんチャンスを頂いて2着が多かったですが、勝てて良かった。距離が長くなっても大丈夫で、重賞戦線で活躍してくれそうです」と満面の笑み。吉田オーナーは「(持ち馬で)岐阜金賞と秋風ジュニアを連覇できた。(きょうは)『2着男』の勇介で勝っちゃった」と、門別から連れてきた2頭で上位を独占。3着は藤原騎手騎乗の生え抜き馬ハルガキタ(井上厩舎)。上位3頭は来年の東海ダービー馬候補としても、今後の成長力を注目していきたい。