眼科医 岩瀬愛子氏

 緑内障の治療は、緑内障になった目がそれ以上進行しないように、「その目にとって眼圧が高い状態」を改善するため、「眼圧を下げる」ことだと説明しました。「その目にとって」というところが大切なのは、個人差があるからです。

 眼圧を下げる点眼薬をし始めたとしても、人によって効き方が違いますから、処方された点眼薬をずっとさしていればよいかというと、そうとは限らないのです。定期的に、繰り返し目の検査をして、今の治療で十分かどうか、このまま同じ治療を続けてよいかどうかを判断する必要があります。この判断の根拠にするため多くの検査をします。

 検査項目の主なものには、①眼圧が目標としている数値より下がっているか(眼圧検査)②視神経の状態が進行していないか(眼底検査や画像解析)③見え方が悪くなっていないか(視力・視野検査)④他の病気が合併していないか(他疾患チェック)⑤点眼薬の副作用が出ていないか(副作用チェック)―などがあります。「この検査、この前やったじゃないか」と思われることも多いかもしれませんが、同じ検査を繰り返すことで、時間とともにどう変わるのかをみているのです。

 年齢とともに、病気がなくても視神経や機能は衰えますが、正常範囲内の変化であれば、一生困らないレベルにとどまります。緑内障は、正常の加齢現象を超えて悪くなってしまうことであり、加齢現象と同じレベルの変化にとどまるように治療をするわけで、以前と比べてどうだったかの判定が重要です。

 そして、緑内障の進行のサインがある場合は、点眼薬を変更するか、複数を組み合わせるか、レーザーや手術など他の治療法が必要か、検討をします。これらの判断は、患者さんが日常生活の中で、きちんと点眼薬を使用しているということが前提になっていますので、例えば眼圧が上がったり下がったりしている理由が、薬の効果が不安定だからなのか、患者さんが時々さすのを忘れていることで眼圧が不安定になっているからなのか、見極めるのも大事なポイントです。

 定期検査でこれらのチェックをすることなく、処方された点眼薬さえさしていればいいと考えるのが間違いであるのは、こうした判断ができないからです。緑内障は自覚症状がほとんどないので、自覚的に特に変化がなくても、進行していないことを保証しているわけではないのです。

 そして、眼圧を下げる点眼薬を複数処方されている場合は、複数さすことで、進行を抑えています。時々、1種類がなくなっても、他の点眼薬はあるからと受診しない方がいますが、それでは効果不十分であることが多いので、薬はなくなる前に診察を受けて補充することが必要です。

 今、新型コロナウイルス感染予防により、受診抑制が眼科領域でも起こっています。これまで、せっかくうまく治療されて進行していなかった目が、診察を受けないうちに進行していたり、他の病気を起こしていたりする例があるのは非常に残念なことです。主治医とよく相談してきちんとした治療を継続することが大切だと思います。

(たじみ岩瀬眼科院長、多治見市本町)