昨年の笠松グランプリを制覇した兵庫の芦毛馬エイシンバランサーと下原理騎手

 21日に開催される「第15回笠松グランプリ」(SPⅠ)は、12頭立てのドリームレース。今年9月、笠松競馬場でも12頭立てでのゲートオープンがスタートし、重賞レースでは初めて実現する。先行激化必至の1400メートル戦に、全国から重賞ウイナーのスプリンターらが集結。ギュッと詰まった隊列で、ドキドキ感高まる熱戦が繰り広げられる。

 遠征馬は兵庫(2頭)、北海道、川崎、高知から計5頭。笠松勢3頭、名古屋勢は4頭が出走予定だ。ジョッキーも吉村智洋、永森大智、吉原寛人ら各地区リーディング経験者が参戦。人馬とも豪華メンバーで、重賞4連勝中の高知・ケイマ(牡6歳、別府真司厩舎)らが挑戦。笠松勢は成長著しいストーミーワンダー(牡5歳、笹野博司厩舎)らが迎撃し、7年ぶりの地元勢制覇を狙っている。岩手のラブバレット(牡8歳・菅原勲厩舎)は4度目の優勝を目指していたが、出走取りやめとなった。川崎のストロングハート(牝4歳、内田勝義厩舎)が繰り上がり、吉原騎手騎乗で挑む。

 笠松グランプリは、4月のオグリキャップ記念とともに笠松競馬の看板レース。2004年までは「全日本サラブレッドカップ」の名称で行われ、第1回(1988年)はフェートノーザンがイナリワンに圧勝した伝説のレース。一時は1着賞金3000万円のダートグレード競走(GⅢ)として行われていたが(97~2004年)、経営難のためダートグレードから外れ、地方重賞の笠松グランプリになった。地元勢の優勝はミツアキタービン(06年)、マルヨフェニックス(10年)、エーシンクールディ(11、12年)の3頭。2012年10月からインターネットでの地方・中央競馬の馬券相互発売が始まり、売り上げ増が期待できたことから、優勝賞金1000万円の地方全国交流競走に格上げされた。

2015年から笠松グランプリ3連覇を達成したラブバレット。今年は不運にも出走が取りやめになった

 実績ナンバーワンだった岩手の古豪・ラブバレットは、枠順発表前、不運にも急きょ出走が取りやめとなった。岩手県競馬組合は17日、盛岡競馬出走(今月10日)の競走馬1頭から禁止薬物が検出されたことを発表。競馬の公正を確保するため、岩手競馬に所属する競走馬全頭に事前検査が実施されることになり、18日の盛岡競馬と、23~25日の水沢競馬の開催が取りやめとなった。この事態を受けて、笠松グランプリへの出走を予定していたラブバレットは「公正保持」のため出走が取りやめとなったとみられる。昨年、岩手競馬では禁止薬物の検出が相次ぎ、今回で6頭目。ラブバレットは昨年12月、出走が確定していた園田の兵庫ゴールドトロフィー(GⅢ)でも、禁止薬物問題による公正保持のため競走除外となっている。笠松グランプリに参戦していたら、復活Vが期待され、上位人気が予想されただけにとても残念である。

名古屋・ゴールド争覇を勝った高知のケイマ

JRAから移籍後、素質が開花したのは高知のケイマ。笠松グランプリトライアルの名古屋・ゴールド争覇(1400メートル)で、ストーミーワンダーらを置き去りにして逃げ切りVを決め、重賞4連勝。永森騎手は「まだまだ強くなる馬で、次はもっといいパフォーマンスを見せたい」と笠松グランプリや年末の園田ゴールドトロフィー(GⅢ)にも意欲。JRA時代の初勝利は、3年前の笠松交流戦・カンナ賞(国分恭介騎手)で、コース経験もあり、逃げたら手ごわい存在になりそうだ。出走に滑り込んだ川崎のストロングハートは2年前、ダートグレード(GⅢ)の門別・エーデルワイス賞勝ちが光る。浦和でのJBCレディスクラシックにも挑み9着だったが、笠松グランプリではマイルチャンピオンシップ南部杯(盛岡)でGⅠジョッキーとなった吉原騎手騎乗で、侮れない1頭となる。

 兵庫勢では、前走・兵庫ゴールドカップで1、3着だったナチュラリー(牡5歳、新子雅司厩舎)とエイシンエンジョイ(牡4歳、橋本忠明厩舎)が出走する。重賞4勝で逃げ切り勝ちが多いナチュラリーには笹田知宏騎手が騎乗。エイシンエンジョイは、下原理騎手騎乗で7月の笠松・サマーカップを逃げ切るなど重賞2勝。下原騎手は昨年の笠松グランプリを芦毛馬エイシンバランサー(新子厩舎)で制しており、ジョッキーとして2連覇を狙う。北海道のソイカウボーイ(牡4歳、田中淳司厩舎)は、名古屋・ゴールド争覇3着からの挑戦。引き続き、全国リーディング2位の園田・吉村騎手騎乗で、先行力もあって軽視はできない。

  名古屋勢では、サムライドライブが出走を回避。加藤聡一騎手が騎乗するエイシンテキサス(牡9歳、坂口義幸厩舎)は典型的なスプリンター。JRA時代には新潟の直線1000メートル(邁進特別)で勝利。地方では、日本海スプリント(金沢)、前走・OROターフスプリント(盛岡)など重賞4勝を飾っている。JRAから移籍後3連勝のアドマイヤムテキ(牡6歳、角田輝也厩舎)は、主戦の岡部誠騎手が騎乗停止中で、丸野勝虎騎手が手綱を取る。

今年重賞5勝を飾り、東海地区のエースに成長したストーミーワンダー。地元馬による7年ぶり制覇を目指している

 笠松勢では、ウインハピネス(牡4歳、尾島徹厩舎)が「何かを持っている」面白い存在。9月の東海クラウンでハナ差負けしたことが幸い。南関東に移籍せずに笠松滞在が延長となった。オータムカップで重賞初勝利を飾り、岡部騎手は「最後まで脚取りがしっかりしていて完勝でした。笠松にいる間は負けられない」と強気のコメント。尾島厩舎に来て10戦して5勝、2着5回と堅実駆け。ベテラン・東川公則騎手の騎乗で一発を狙う。

 笠松・くろゆり賞で名古屋のカツゲキキトキトを倒したストーミーワンダーは、続く園田・桃山菊花賞ではタガノゴールドを圧倒して完勝。各地区の大将格を次々と破り、重賞は今年5勝目で、東海地区のエース級へと成長。前走の名古屋・ゴールド争覇では4着に敗れたが、地元・笠松で地の利を生かして巻き返したい。騎乗した渡辺竜也騎手は「どんなペースでも対応できる馬で、もっと前へ仕掛けていけば良かったかも」と悔しがっていた。先行馬が多くハイペースになりそうだが、できれば3、4番手までにつけて、3コーナーからロングスパートで、逃げ馬を差し切る競馬ができるといい。

7年前の笠松グランプリでは、前年覇者のエーシンクールディ(岡部誠騎手)が差し切り勝ち。1番人気のラブミーチャン(浜口楠彦騎手)が2着で、笠松勢のワンツーとなった(笠松競馬提供)

 笠松グランプリの名勝負といえば、2012年の笠松勢「女王対決」によるワンツー。前年覇者のエーシンクールディ(岡部騎手)が勝ち、単勝1番人気のラブミーチャン(浜口楠彦騎手)は2着に敗れた。ラブミーチャンは、スタートで滑り気味に出遅れたのが響いて中団から追走。4コーナーでは先頭に立ち、ラスト200メートルから迫るエーシンクールディとの激しいたたき合いになったが、ゴール寸前で鋭く伸びたエーシンクールディが勝利。結果を求められる厳しいこの世界。主戦・浜口騎手は、ラブミーチャンの次走ではJRAの福永祐一騎手に手綱を譲った。

笠松グランプリのファンファーレでは、名鉄ブラスバンド部が生演奏を披露する(昨年の演奏の様子)

 今年の笠松グランプリではイベントも楽しめ、笠松競馬実況アナウンサー4人によるトークショーや予想会が開かれる。中京競馬場・名鉄杯でのファンファーレを行った「名鉄ブラスバンド部」が昨年に続き、笠松グランプリでもファンファーレの生演奏を披露し、レースを盛り上げてくれる。この時間、コース西側の鉄橋を名鉄電車がタイミング良く走っているかどうかは当日のお楽しみだ。

 これまで笠松で行われた12頭立ては2レースだけだが、ジョッキーの冷静な対応で隊列はスムーズだった。ここ数年の笠松グランプリ優勝馬は、先行逃げ切りか、中団から追走する差し馬が台頭している。4コーナー奥をスタートし、最初の直線(330メートル余り)から第1コーナーへの先陣争いはこれまで以上に激化。各地区の大将たちが笠松の地に集結して、死闘を演じる「戦国レース」の様相にもなりそうで楽しみだ。笠松競馬の歴史を塗り替える迫力ある戦いが期待でき、最後の直線のゴール前では、スタンドのファンから大きな声援が上がることだろう。