笠松競馬場で久々の重賞勝利を挙げ、笑顔の川原正一騎手

 笠松リーディングに7回も輝いたレジェンド・川原正一騎手(兵庫)が圧巻の手綱さばきを見せて、古巣のウイナーズサークルに帰ってきた。笠松時代には一番好きだったジョッキーで、ファンに健在ぶりをアピールしてくれた。

 7日、笠松競馬場で行われた2歳牝馬重賞の第6回ラブミーチャン記念(SPⅠ、1600メートル)。今年、還暦ジョッキーとなった川原騎手は、1番人気テーオーブルベリー(北海道、田中淳司厩舎)に騎乗し、鮮やかな逃げ切りVを決めた。川原騎手の笠松での勝利は3年ぶり。2着に地元馬のニュータウンガール(井上孝彦厩舎)、3着にはワイエスキャンサー(伊藤強一厩舎)が食い込んだ。

 「笠松の看板娘」から「地方競馬の最速女王」に君臨した名牝ラブミーチャンの偉業をたたえる記念レース。2歳牝馬の出世レースとして知られ、歴代優勝馬にはジュエルクイーン、ミスミランダーらが名を連ねる。ここ2年は、門別デビューから笠松に移籍してきたチェゴ(井上厩舎)、ボルドープラージュ(笹野博司厩舎)と地元勢が制覇。世代別牝馬重賞シリーズ「グランダム・ジャパン2019 2歳シーズン」として行われ、笠松勢8頭と北海道勢2頭が参戦した。

ラブミーチャン記念、1周目で先頭に立ち、そのまま逃げ切ったテーオーブルベリー(3)

 川原騎手の手綱さばきといえば、笠松時代から「逃げ馬に乗ったら天下一品」だった。笠松コースの仕掛けどころを知り尽くした男が、テーオーブルベリーで危なげなく逃げ切ってみせた。レースは、渡辺竜也騎手騎乗のボルドープリュネ(笹野博司厩舎)との先行争いをテーオーブルベリーが制し、先手を奪った。3コーナーからは追ってきた向山牧騎手騎乗のニュータウンガールとのマッチレース。ベテラン騎手2人が火花を散らしたが、最後はテーオーブルベリーが3馬身突き放して完勝。単勝1.5倍の人気に応えた。川原騎手は前走・園田プリンセスCでも騎乗し2着。ラブミーチャン記念当日は、園田の開催日だったが、北海道馬への騎乗を依頼されての遠征で気合が入っていた。 

パドックを出てレースに向かうテーオーブルベリーと川原騎手

 勝利インタビューで川原騎手は「うれしいし、ホッとしています。このコースの内枠を引いて、スタートが決まれば逃げようと思っていました。初馬場で、物見して走っていて、幼いところもたくさんあるが、これから伸びていく馬。経験を積んでいけば、トップクラスになれる。今後も依頼があれば、騎乗したいです」と話しながら、古巣での勝利の余韻に浸っていた。「久しぶりに笠松へ戻ってきて、温かいファンの声援を受けて、重賞を勝つことができました。これからも園田で還暦ジョッキーとして頑張っていきます」と笑顔で現役続行を宣言。今後は、現在63歳の的場文男騎手を超える最年長ジョッキーも視野に入ってくることだろう。

テーオーブルベリーとのコンビで、ラブミーチャン記念を制覇をした川原騎手

 川原騎手は笠松、兵庫所属でそれぞれ2500勝以上の快挙を達成。笠松時代には、安藤勝己さんからリーディングの座を奪い、ミツアキサイレンス(佐賀記念V2含めダートグレード4勝)など名馬に騎乗。1997年にはワールドスーパージョッキーズシリーズで総合Vを飾るなど、華々しい活躍を見せてきた。現在は兵庫所属(2005年移籍)で、地方通算5457勝(笠松時代に2856勝)、中央で73勝を挙げている(11月7日現在)。
 
 表彰式後のウイナーズサークルでは、川原騎手の笠松時代の活躍を知るオールドファンから「笠松に戻るの?」といった声も飛んでいたし、川原騎手も懐かしい顔に「元気だった?」と声を掛けながら、サインや記念写真で交流。兵庫に移籍しても、勝負服は笠松時代そのままで、こちらもうれしくなる。九州男児で(鹿児島県出身)、男らしくフェアプレー精神にあふれた騎乗ぶりも健在だった。

笠松勢では向山牧騎手騎乗のニュータウンガールが2着に踏ん張り、ベテラン騎手の活躍が目立った

 2着に入ったニュータウンガールに騎乗した向山騎手は54歳。地方通算3500勝も目前で、3000勝達成時には「次の目標は4000勝でしょ! 年金ジョッキーを目指しているので」と意欲を示しており、60歳を超えても若手の模範騎手として頑張ってくれそうだ。川原騎手と向山騎手、ラブミーチャン記念でのワンツーは両ベテラン健在を印象付けたし、これからも地方競馬全体を盛り上げていってほしい。

 笠松ではオグリキャップ、ライデンリーダーに続く記念レースとなったラブミーチャンは、2009年にデビュー。GⅠの全日本2歳優駿(川崎)などJRA交流のダートグレードで5勝を挙げ、NAR(地方競馬全国協会)グランプリの年度代表馬に2度選出された。最近では、南関東競馬中継のテレビCMにも出演。「2歳馬による史上初の年度代表馬で、その名はレース名(ラブミーチャン記念)として受け継がれた」と、フリオーソ(船橋)とともに21世紀を代表する「地方競馬界の顔」として、引退後も輝きを放っている。

笠松競馬の看板娘として、地方競馬のスプリント女王として、長年活躍したラブミーチャン

 今月2日には、ラブミーチャン一族での朗報が相次いで舞い込んだ。JRA京都1Rで、長女のラブミーレディー(牝2歳、父コパノリチャード)が藤岡康太騎手騎乗で初勝利。初戦は芝コースで7着だったが、ダート替わりで母親譲りのスピードを発揮し、3馬身半差で逃げ切った。東京2Rでは、弟のコパシーナ(セン馬2歳、父ヘニーヒューズ、母ダッシングハニー)が三浦皇成騎手騎乗で、こちらもJRA初勝利を飾った。デビュー3戦目、先手を奪って7馬身差の圧勝。やはり、この血統は華麗なる逃げで最高のパフォーマンスを見せてくれる。勝利を積み重ねて、オープンまで駆け上がってほしい。
 
 10日・京都のエリザベス女王杯には、ミスマンマミーア(牝4歳)が出走。県馬主会副会長の吉田勝利さんがオーナーで、岐阜県出身の寺島良調教師が管理している期待馬。過去のエリザベス女王杯では、オグリキャップのGⅠ連闘で沸いた1989年秋に、20番人気のサンドピアリスが制覇。92年のタケノベルベットは17番人気で勝った。この頃は現3歳牝馬の3冠目として行われていたが、記憶に残る激走だった。地方出身馬(北海道・南関東)のミスマンマミーアも、優勝できる可能性がゼロではない。人気もないから浜中俊騎手が気楽に乗ったら面白い。まずは掲示板を目指して、豪快な末脚を発揮してほしい。 吉田オーナーも「はまればね。寺島調教師との岐阜コンビでGⅠ初勝利を」と夢はでっかい。所有馬のGⅠ挑戦はイシマツ(朝日杯FS16着)、ローゼンクリーガー(阪神ジュベナイルF12着)らに続くが、今後の成長を含めてGⅠ戦線で注目していきたい1頭だ。