2012年2月18日、柴山芳之先生の勧めで、初めて名古屋市の栄道場に行きました。先生が、息子のことを考えて外部の道場を勧められたのは、ありがたいことだったなと思います。
栄道場では、アマ1級と認定されました。その数回後の3月23日には、アマ初段に昇段します。
そのときまでは、私が本を読んで、四苦八苦しながら棒銀戦法を教えていましたが、アマ初段になったのを機に、終了することにしました。
それまで、息子と私は、タイトル戦のまねをして番勝負を繰り返し、ノートに結果を記録していましたが、その頃には、息子がほとんど勝つようになっていました。
小学4年生になり、夏休みが始まった7月22日、息子は初めて、一人で電車に乗り、1時間半ほどかかって栄道場へ行きました。それからは、名古屋だけでなく、岐阜市や愛知県一宮市、豊橋市など、一人であちこちの大会へ出かけるようになります。4年生のときから、息子が一人でどこへでも出かけていたのは、今考えると、すごいことだなと感じます。
息子がそんなふうになれたのは、同級生の磯谷祐維さん(現女流アマ名人)の存在が大きいです。彼女は当時、息子と同じ各務原市の鵜沼地区に住んでいました。
ある日、私が、息子と栄道場へ行くため、名鉄電車に乗っていると、磯谷さんは一人で座席に座っていました。彼女から、一人で栄道場へ通っていると聞き、まだ4年生なのにしっかりした子だなと、驚いたことを覚えています。
その後、息子は彼女の姿に刺激を受け、一人で通うようになります。彼女だけでなく、当時は、小学生の強豪選手の多くが、一人で電車に乗って、栄道場やさまざまな大会に出かけていました。
小学生が電車に乗って一人で通うことは、大変なことです。相当将棋が好きで、意欲のある子でないと、できません。その意欲が、将棋の上達を促すのだと感じました。
私が講師を務めている各務原市の作文や絵本作りの講座でも、一人で電車に乗って通ってくる子が、ときどきいます。そういう子は意欲的で、上達も速いです。あいさつや礼儀もしっかりしており、一人で出かけることが人間的な成長にもつながるのだと思います。
息子は今も、磯谷さんをはじめ、小学生の頃からの友人と、食事をしたり、研究会をしたりと、仲良くしているようです。好きな将棋を通じて、仲良しの幼なじみができたことは、ステキなことだなと感じています。
(「文聞分」主宰・高田浩史)