一時は13人にまで減ってジョッキー不足が深刻だった笠松競馬だが、現在は新人や移籍組の加入で17人に増え、「熱いドラマ」を繰り広げてくれている

笠松初勝利を挙げたサムライドライブ。岡部誠騎手やスタッフに笑顔が広がった

 華麗な逃げ切り、豪快な差し切り。愛馬を導いて1着でゴールを駆け抜け、勝利を飾ったジョッキーたち。重賞でもC級のレースでも、調教師や厩務員たちが待つ装鞍所に戻ってきて見せる「はじける笑顔」は最高だ。スタッフ全員でつかみ取った勝利を、ハイテンションで喜び合う姿は、本当にすがすがしい。

 令和の新時代を彩る笠松競馬のジョッキーは17人。5月は例年通りゴールデンウイーク明けのスタートとなったが、ナイスファイトで腕を競い合い、好レース続出となった。吉井友彦騎手が新たな騎手会長となり、関係者一丸となって笠松競馬を盛り上げていく。
 
 大塚研司騎手から騎手会長のバトンを受け継いだ吉井騎手。「明るいファイター」のイメージ通り、レースにも一段と気合が入っているようで、開催3日目には、1日3勝とリズミカル。「たまには、こういう日もありますよ。きょうは(自厩舎である)森山英雄厩舎の同じ厩務員の馬で3戦3勝でした」とうれしそう。

新しい騎手会長となり、「笠松競馬をより盛り上げていきたい」という吉井友彦騎手

 新会長としての意気込みを聞くと、「大塚さんが頑張って土台をつくってくださり、それに上積みができたらいい。ファンあっての笠松競馬なので、イベントなどで交流をもっと深めていければ。秋まつりでのサイン会のようにね」とにっこり。新たなスターホースの出現も期待されているが、「笠松から出てくれたらいいが、巡り合わせもあるからね。調教師さんや馬主さんの力も大きいし、みんな一丸となって笠松競馬を盛り上げていきたいです」と力強い決意。令和幕開けの「笠松の顔」として、闘志をみなぎらせている。

 2014、15年には2年連続で笠松リーディングに輝いた吉井騎手。ある開催日には、1Rから6Rまで6レース連続で「1着 吉井友」の快挙を達成。送信されてきた成績表を見て、驚かさせられたことがあった。京都府出身の35歳で、青ダイヤモンドの勝負服が印象的。今年は30勝を挙げてリーディング4位(5月10日現在)。新会長としても頼もしく笠松競馬を引っ張っていってくれそうだ。

笠松リーディング3位に躍進し、好騎乗が目立つ水野翔騎手

 波に乗っているジョッキーといえば、笠松2年目の22歳・水野翔騎手だ。開催2日目には4連勝の固め打ち。レベルアップ著しい騎乗技術と調教などでの日頃の努力が認められ、騎乗依頼も殺到。最終日には11レース全てに乗り、1Rと最終Rで勝利。笹野博司厩舎の先輩だった藤原幹生騎手が移籍し、有力馬への騎乗が増えてきた。

 名古屋での騎乗も急増。今年は100レースを超え、1日2勝の日もあり計4勝。東海地区の3歳クラシック第1弾「駿蹄賞」には急きょ代打騎乗。名古屋のエムエスクイーン(今井貴大騎手)が制覇(デビュー10連勝)し、2馬身差で笠松のサウスグラストップ(岡部誠騎手)が2着。東海ダービーをにらんで2強ムードも漂った。水野騎手のアップショウは大差をつけられたが、後方から4着に突っ込んだ。今年は40勝を挙げており、佐藤友則騎手、筒井勇介騎手に続く笠松リーディング3位。パドックから返し馬に向かう際にはリラックスした様子で笑顔も見られ、精神的にも余裕も出てきたようだ。6月3日から3カ月間、マカオへの海外遠征にも挑戦する。

 同じ笹野厩舎の19歳・渡辺竜也騎手は、NARグランプリ2018の優秀新人騎手賞を受賞した。今年は26勝でリーディング5位。9日には1600メートル戦の東海クラウン(オープン)で、昨年の東海ダービー馬ビップレイジング(笹野厩舎)に騎乗。東海ダービー2着の名古屋・サムライドライブ(角田輝也厩舎)と笠松で初対決となった。

東海ダービー馬ビップレイジングの復帰戦に騎乗した渡辺竜也騎手

 サムライドライブは東海ダービー後、秋の鞍を勝ったが岐阜金賞は2着(兵庫・クリノヒビキV)。古馬との戦いでは苦戦が続き、笠松でも白銀争覇3着、ウインター争覇5着。ここ7戦は勝利から遠ざかり、デビューから破竹の10連勝を飾っていた頃の勢いはなくなった。東海クラウンでは、岡部誠騎手の騎乗で好位から押し切って、8戦ぶりの勝利。陣営も「好騎乗で、早めに先頭に立ってくれた」と笠松での初勝利に笑顔が広がった。東海ダービー惜敗のリベンジを果たした。

 ビップレイジングは東海ダービー制覇の後は、大井・黒潮盃(10着)の1戦のみ。岐阜金賞に向かうことなく、名張ホースランドパーク(三重県)で、脚元など馬体の回復・育成を図り、待望のレース復帰となった。9カ月ぶりの実戦でもあり、低評価の8番人気。後方からの競馬となり、最後の直線でも伸びを欠いて9着。渡辺騎手は「まだ3分ぐらいの出来。休養していて、追い切りも本調子で行えなかったです」と、まずはレース感覚を取り戻す脚慣らしの段階か。今後は、順調なら新設重賞の「飛山濃水杯」(4歳以上、1600メートル)を目指すという。

 一時は13人にまで減少していた笠松競馬のジョッキーは、4月から2人増えて17人になった。新人の東川慎騎手と、兵庫から完全移籍した松本剛志騎手で、笠松競馬に新風を吹き込んでくれている。

ハタノリヴィールで圧勝。けがから戦列復帰し、白星を量産する佐藤友則騎手

 東川慎騎手は4月のデビュー当日に初勝利を飾って以来、勝利がなかったが、5月9日に待望の2勝目を挙げた。「馬がビュンビュンと行ってくれました。(初勝利後は)なかなか勝てなくて、もっと積極的に乗れば良かった。ペースが分からなくて、逃げ馬に乗っても、もまれてしまって...」。それでも、騎乗技術に磨きをかけて「(新人騎手の)3キロ減も生かして頑張っていきます」と闘志満々だった。40歳になった松本騎手は笠松の期間限定騎乗の常連で、ファンにもおなじみ。歓迎セレモニー当日には、いきなり移籍初勝利を飾っており、騎乗機会が多い笠松での飛躍が期待されている。

引退後も風雪に耐えて、来場者を出迎えてきたオグリキャップ像。塗装がはげてきたこともあって、塗り替えられて若々しくなった

 平成最後の笠松開催を、けがで休んでいたのは、今年もリーディングを快走している佐藤騎手と、54歳で笠松最年長のベテラン高木健騎手。佐藤騎手は、前開催(4月後半)直前の調教中に、顔面から落ちて唇を縫うなどしたそうだが、令和の開催では元気に復帰。2日目、3日目には3勝ずつと、持ち前のパフォーマンスで勝負強さを発揮。昨年重賞2勝のハタノリヴィールで準オープンを圧勝し、完全復活間近を印象付けた。足の指の骨折で休んでいた高木騎手も、令和初日から調教での騎乗を始め、次開催での復帰を目指している。

 笠松競馬場で大勢のファンの来場を待っているジョッキーたち。5月21日からの清流シリーズでは、23日に令和・笠松初重賞となる3歳戦「第2回ぎふ清流カップ」が開催され、6月6日の「第1回飛山濃水杯」とともに、郷土色豊かなレースとなる。北陸・東海・近畿交流レースでもあり、全国的に馬券販売快調な地方競馬を盛り上げる熱戦となりそうだ。