脳神経外科医 吉村紳一氏

 こんにちは、吉村です。この欄では「脳卒中予防に関する最新情報」を紹介しています。皆さん、一緒に勉強しましょう! 今回は手術を安全に行うための術中検査法についてお話しします。

 脳血管の手術を行う場合、血管の中でちゃんと血液が流れているかどうか確認することは重要です。例えば、血管をつなぐ手術をしても、つないだ部分に血液の塊などができて、詰まってしまうことがあるからです。血管がドクドクと拍動していれば、ある程度は流れているように思えます。しかし、実際には詰まってしまっていることもあるのです。どうやって確認しているのでしょうか?

 血管に超音波を当てて血流を調べる機械を使うのです。私たちは「超音波血流計」と呼んでいます=図=。この機械の先端のプローブヘッドを血管の表面に当てると、「シューン、シューン」と音がします。また、画面上に波形が示されるものもあります。こういった客観的な方法で、血液が実際に流れているかどうかを確認しているのです。

 私は1999年から2000年にかけてヨーロッパの名門である、スイスのチューリヒ大学に留学し、世界最高レベルの脳神経外科手術を勉強しました。そこでは師匠である故米川泰弘先生が日々多くの手術をされていましたが、先生ほどの達人になっても、手術中にはさまざまな機械を用いて安全確認をされており、それこそが良い治療成績につながる最重要事項であることを学びました。それ以降、私も多くの患者さんを治療する機会を得ましたが、全ての手術で徹底的に安全確認を行うようにしています。

 安全な手術で患者さんの病気を治して良くなっていただくこと。その一つの目標に向かい「できることは全てする」。そんなつもりで日々の手術に取り組んでいます。

(兵庫医科大学脳神経外科主任教授、大垣徳洲会病院外来担当)