【東濃実6―2美濃加茂】

 中濃・飛騨地区実力校同士の注目カードは、東濃実がエース長谷部虎太朗の気迫あふれる熱投で、美濃加茂を撃破した。昨夏の岐阜大会3回戦の県岐阜商戦に1年生ながら先発し、7―8の大接戦の流れをつくった長谷部。今夏は3回戦で大垣日大に敗れ、2年連続で甲子園出場校に屈したが、背番号1を背負った新チームの初戦で、成長した姿をみせた。藤井潤作監督も「自覚が出てきた」とエースをたたえた。

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美濃加茂×東濃実=粘り強く投げ、2失点完投した東濃実のエース長谷部=河上薬品

今年2度陥った制球難を乗り越える

 県岐阜商戦での好投を励みに、さらなる成長が期待された長谷部だが、2年になると二度の不調に見舞われた。一度目は春先。「うまくストライクが入らない」。藤井監督と相談しながら、見い出した解決策が「ノートに反省点を書き出し、ブルペンでここに投げると決めた場所に投げ込み、ここで球を放すと決めたポイントでリリースする」。「元々制球力がある」と藤井監督が認める長谷部。夏を前に立ち直った。

 ところが、岐阜大会の大垣日大戦。4人目で登ったマウンドで、再び、ストライクが入らない状態に。今度は抜本的な投球フォーム改造に着手。「体が開かないよう、踏み出す足をしっかり地面に付けてから球を放すようにした」という。

ピンチでさえたスライダー さらなる飛躍誓う

 新チーム最初の公式戦の相手は強敵美濃加茂。「意識はしたけど、低めにコントロールし、コーナーに投げ分けることを徹底した」と強気のマウンド。直球の制球もさえたが、中でもスライダーの切れが抜群で、得点圏に走者を置くたびに、三振に切って取って、ピンチを切り抜けていった。

美濃加茂に2失点完投勝利し、ゲームセットの瞬間、声を上げてガッツポーズする東濃実のエース長谷部=河上薬品

 「チェンジアップ、カーブも含め、どんな球種でもストライクが取れるようになった」。二度も陥った制球難がうそのような堂々たるマウンドに藤井監督も目を細める。美濃加茂の高橋陽一監督も「長谷部君の丁寧な投球にやられた。出直しです」と舌を巻いた。

 だが、東濃実のエースは満足はしていない。「五回に失点した場面は、冷静さを欠き、失投した。ここぞという場面で集中し、絶対、点を取られない」と今後を見据え、さらなる成長を誓った。

 森嶋哲也(もりしま・てつや) 高校野球取材歴35年。昭和の終わりから平成、令和にわたって岐阜県高校野球の甲子園での日本一をテーマに、取材を続けている。