脳神経外科医 吉村紳一氏

 こんにちは、吉村です。この欄では「脳卒中予防に関する最新情報」を紹介しています。皆さん、一緒に勉強しましょう! 今回は「ハイブリッド手術」についてお話しします。最近はやりの「ハイブリッド」という言葉が使われていますが、何と何のハイブリッドなのでしょうか?

 手術には、切る手術と切らない手術(血管内手術)があります。これらを組み合わせるのが「ハイブリッド手術」なのです。脳血管の病気の場合でも、一方の治療法では治せない場合に行われることがあります。主に大型の脳動脈瘤(りゅう)などに適応しています。例えば、大きな脳動脈瘤から重要な血管の枝が分かれている場合などが、この治療の適応になります。

 脳の深部にある動脈瘤で、それ自体に対する外科手術が難しい場合、通常は血管内治療の方が安全なのですが、動脈瘤をコイルで詰めると、その先の血管の枝まで詰まってしまうのです=図1=。では、どうしたらいいのでしょうか?

 血管の枝に、あらかじめ別の血管をつないで迂回(うかい)路(バイパス)を作っておけばいいのです=図2=。そうすれば、動脈瘤を詰めても血管の枝には血液が流れる=図3=、ということになります。このように、外科手術と血管内手術を組み合わせるのが「ハイブリッド手術」です。

 ハイブリッド手術は、通常は治療することができない患者さんを安全に治せる良い方法なのです。しかし、この手術を成功させるには、高い技術と質の高い機器が必要です。「手術が難しい」と言われた場合には、どちらの治療も行うことができる「二刀流」の先生に相談してみてくださいね。

 (兵庫医科大学脳神経外科主任教授、大垣徳洲会病院外来担当)