NARグランプリ年度代表馬に2度輝いたラブミーチャンと、主戦だった浜口楠彦騎手
NARグランプリ2012の年度代表馬にラブミーチャン。表彰を受ける柳江仁調教師(中央)ら関係者
地方・中央交流元年となった1995年の年度代表馬に選ばれたライデンリーダーと安藤勝己騎手

NARグランプリ年度代表馬に2度輝いたラブミーチャンと、主戦だった浜口楠彦騎手

 オグリキャップの出現以降、「また笠松から、すごい馬が出てきたなあ」と、全国の競馬ファンを驚かせていた頃が懐かしい。キャップが中央へ移籍して、圧巻の走りを見せ始めたのは1988年。その後、94年のオグリローマン、95年のライデンリーダーの名牝2頭が桜花賞に挑戦。99年のレジェンドハンター、2009年のラブミーチャンと、GⅠの舞台で中央馬と勝ち負けが演じられる名馬が出現。笠松では「10年に1頭」といわれる超大物が、必ず登場してファンを魅了してきた。

 地方競馬「NARグランプリ2017」の表彰式は2月27日。ラブミーチャンが2度目の年度代表馬に選出されてから5年。昨年の年度代表馬には、船橋のヒガシウィルウィン(牡4歳)が選ばれた。ラブミーチャンと同じサウスヴィグラス産駒で、関東ダービーを圧勝し、ジャパンダートダービー(GⅠ)では中央勢をねじ伏せた。JBCレディスクラシックを制覇した大井のララベルは4歳以上最優秀牝馬を受賞。笠松でデビュー後、大井に移籍してJBCスプリント(07年)を勝ったフジノウェーブ以来、10年ぶり2頭目となる地方馬によるJBC制覇を達成。V字回復で勢いづく地方競馬の逆襲が始まったようだ。

 NARグランプリは、地方競馬全国協会(NAR)が、地方競馬での人馬の活躍をたたえるため、1990年度に創設した年間表彰制度。これまでにNARグランプリで表彰を受けた、笠松育ちの栄光の名馬たちの活躍を振り返ってみた。

 【NARグランプリ表彰、笠松競馬関係の人馬】
1990年 【特別功労賞】オグリキャップ(鷲見昌勇厩舎) 【最優秀調教師】荒川友司
1994年 【サラブレッド系4歳以上最優秀馬】トミシノポルンガ(加藤建厩舎)
1995年 【年度代表馬】ライデンリーダー(荒川友司厩舎) 【サラブレッド系3歳最優秀馬】ライデンリーダー 【最優秀調教師】荒川友司
1996年 【サラブレッド系2歳最優秀馬】シンプウライデン(荒川友司厩舎) 【最優秀調教師】荒川友司 【特別表彰馬】ホワイトナルビー(鷲見昌勇厩舎)

NARグランプリ2012の年度代表馬にラブミーチャン。表彰を受ける柳江仁調教師(中央)ら関係者


1997年 【サラブレッド系3歳最優秀馬】トミケンライデン(荒川友司厩舎) 【最優秀調教師】荒川友司 【特別賞】川原正一
1998年 【サラブレッド系3歳最優秀馬】フジノモンスター(中山義宣厩舎) 【ベストフェアプレイ賞】川原正一
1999年 【サラブレッド系2歳最優秀馬】レジェンドハンター(大橋敬永厩舎) 【最優秀牝馬】マジックリボン(荒川友司厩舎) 【最優秀調教師】荒川友司 【特別賞】安藤勝己
2000年 【サラブレッド系3歳最優秀馬】ミツアキサイレンス(粟津豊彦厩舎) 【ベストフェアプレイ賞】川原正一 【特別賞】荒川友司
2007年 【特別表彰馬】ワカオライデン(荒川友司厩舎)
2009年 【年度代表馬】ラブミーチャン(柳江仁厩舎) 【サラブレッド系2歳最優秀馬】ラブミーチャン 【最優秀牝馬】ラブミーチャン 【殊勲調教師賞】柳江仁
2011年 【4歳以上最優秀牝馬】ラブミーチャン
2012年 【年度代表馬】ラブミーチャン 【4歳以上最優秀牝馬】ラブミーチャン 【最優秀短距離馬】ラブミーチャン
2013年 【4歳以上最優秀牝馬】ラブミーチャン 【最優秀短距離馬】ラブミーチャン 【特別表彰馬】フジノウェーブ(笠松〈柴田高志厩舎〉でデビュー、大井へ移籍)
2014年 【特別表彰馬】ライデンリーダー【特別賞】向山牧
2015年 【特別表彰馬】オグリローマン(鷲見昌勇厩舎)

☆笠松の優秀騎手(1990~2003年、各地区ごとに選出)  安藤勝己(1990、91、93~2000年)  安藤光彰(1992年)  川原正一(2001~03年)

■牝馬2頭が「年度代表馬」の快挙

地方・中央交流元年となった1995年の年度代表馬に選ばれたライデンリーダーと安藤勝己騎手

 ライデンリーダーとラブミーチャンの牝馬2頭が「年度代表馬」という最高の栄誉に輝いた。やはり「中央のエリート馬をなぎ倒す」という雑草魂が、地方馬の名を高める条件で、笠松の2頭は全国的にも圧倒的な存在感を示した。

ライデンリーダー(安藤勝己騎手、荒川友司厩舎)は、地方・中央交流元年のスーパーヒロイン。笠松在籍のまま1995年の桜花賞トライアル「報知杯4歳牝馬特別」(GⅡ、現3歳、フィリーズレビュー)に挑み、歴史に残る驚異的な豪脚で圧勝。本番の桜花賞では惜しくも4着。 オークス、エリザベス女王杯(現・秋華賞)にも挑戦。地方馬でありながら、中央の牝馬3冠レースを完走する偉業を成し遂げた。

 ラブミーチャン(浜口楠彦騎手、柳江仁厩舎)はGⅠ馬に輝き、まさにシンデレラガール。2009年に中央2歳500万下、兵庫ジュニアGP(GⅡ)に続いて、川崎での全日本2歳優駿(GⅠ)を華麗なる逃げ切りで制覇。デビュー5戦目で頂点を極め、2歳馬として初めての年度代表馬の栄冠をつかんだ。当初、JRAデビューを果たせなかったラブミーチャンを笠松・柳江仁調教師が預かり、育成に励んで才能を開花させたことから、殊勲調教師賞を受賞した。3年後には東京盃(GⅡ)制覇、習志野きらっとスプリント3連覇を達成し、2度目の年度代表馬となった。2歳から6歳までフル回転し、GⅠ~GⅢで計5勝を飾った。経営難に苦しむ笠松競馬を先頭に立って支え、NARグランプリでは4歳以上最優秀牝馬、最優秀短距離馬なども含めてトータル9冠に輝いた。