脳神経外科医 吉村紳一

 こんにちは、吉村です。この欄では「脳卒中予防に関する最新情報」を紹介しています。皆さん、一緒に勉強しましょう! 今回も「開頭手術」についてお話しします。

 手術の安全管理は術前から始まります。正確な診断と、それに基づいた手術計画はもちろん重要ですが、実際の手術の成功のためには、患者さんの全身チェックや薬の調節も大切です。そういった積み重ねが手術の結果に大きく影響することがあるためです。

 しかし、人の体は千差万別ですし、私たち人間は間違いや見逃しも起こします。どれだけ気を付けても、100%確実ということはありません。では、そういったことを防ぐためには、どうしたらいいのでしょうか?

 術前のチェックリストの作成を含め、さまざまな工夫とともに重要なのは「複数の目で確認すること」です。第2、第3の目でダブルチェック、トリプルチェックすれば、間違いや漏れを減らすことができます。これは同じチームの医師だけでなく、麻酔科医や看護師、薬剤師など多職種で確認するのが有効です。

 医師の私たちは、術前の検討会で患者さんの状態や手術の手順、体位、そして必要な機器などを確認しますが、他の立場から見た方がよく分かる事項もあるためです。患者さんのそばで話を聞いてくれている看護師からの情報は極めて重要です。

 チームで一丸となって手術に臨むこと、そして治療の成功に向けて、みんなで努力すること。地道ではありますが、そういった取り組みが手術の安全性を高めるのです。

(兵庫医科大学脳神経外科主任教授、大垣徳洲会病院外来担当)