愛岐会で高田明浩さん(左)の四段昇段を祝う植田二郎さん=2021年4月3日、愛知県一宮市

 2013年7月15日、息子は初めて、日本アマチュア将棋連盟(アマ連)の大会に参加しました。アマ連は、東海地区では、愛知県と三重県の6カ所で、毎月、開かれています。息子の明浩が初めて参加したのは、愛知県一宮市の愛岐会です。その主宰者の植田二郎先生との出会いは、大変貴重なものでした。

 息子は、強い大人の方が多く、落ち着いた雰囲気で対局し、対局後の感想戦も行うアマ連の大会が気に入ったようです。愛岐会に参加した後、すぐアマ連のホームページを見て予定を立て、月に数回、一人で電車に乗って、各地の大会に出かけるようになりました。

 数年間はとても楽しく通っていましたが、小6で入会した奨励会での級が上がるにつれて、全勝することが増え、アマ連に参加する機会も減りました。しかし、愛岐会だけは例外で、奨励会有段者になっても、ときどき参加していました。それだけ、息子にとって、植田先生は特別な存在だったのだと思います。

 先生は、息子が愛岐会で優勝するたび、ブログに、写真や激励のコメントをアップしました。奨励会に入ってからは、先生は、しばしば「中学で初段、高校で三段になることを目標にして、パソコン研究に打ち込んでほしい」と書かれ、息子もそれを目指していました。

 息子も私も、「愛岐会と子供たち」という先生のブログを見るのが楽しみで、頻繁にチェックしていたことは懐かしい思い出です。

 植田先生はアマ将棋界で有名な方ですが、礼儀作法やあいさつについて、厳しいことでも知られていました。そんな植田先生から、息子のあいさつや対局態度を何度も褒められたことは、いつも一人で参加し、息子の様子がよく分からなかった私たち夫婦にとって、何よりうれしいことでした。きっと、先生のおかげで、あいさつや礼儀作法がきちんとできる子になったのだと思います。

 息子にとっても、植田先生の高い評価は、小学生のときのように表彰される機会のなかった奨励会時代に、精神的な支えの一つとなったのではと感じます。

 いつも熱心に応援してくれる植田先生の姿を見て、私たち夫婦は、「先生が会長をされているうちに、明浩にプロになってほしいね」と、よく話していました。

 息子と共に、プロ入りの報告のために愛岐会に出かけた日、先生の満面の笑みを見て、本当に良かったなと感じた次第です。

(「文聞分」主宰・高田浩史)