乳腺外科医 長尾育子氏

 乳がんの発症や再発を予防する生活には、何が大切ですか? 今日は、乳がんを予防する生活スタイルについてのお話です。キーワードは「肥満」と「運動不足」です。この二つを解消する生活スタイルが、乳がんを防ぐのに効果的であることが多くの研究で示されています。

 最近「自粛生活で体重が増えてしまって、それがなかなか元に戻らない…」と感じている方も多いのではないでしょうか。厚生労働省がコロナ感染症拡大後の2021年に実施した調査では、コロナ感染拡大前に比べて日本人の体重増加、体格指数(BMI)増加、1日当たりの平均歩数の減少が示されており、コロナ下の体重増加と運動不足は日本全体の問題といえるようです。では、乳がんのリスクを下げるために、どんな改善が必要なのでしょうか。

 一つは体重コントロールです。肥満は指標となるBMIで判定され、BMI25以上の肥満は糖尿病や高血圧などの生活習慣病のリスクを高めるだけでなく、特に閉経後では乳がんの発症リスクも高めることが示されています。BMI25の身長別の体重を表(上)に示しましたので参考にしてください。

 次に、運動不足の解消です。日本人女性の研究で、余暇運動がひと月に3回以内の人に比べて、週3回以上の運動する人は乳がんの発症が約4分の3であったことが示されています。たまに激しい運動をするのではなく、定期的な運動を継続する習慣が良いとされています。ジョギングなら週に合計80分間程度が勧められるなど、結構頑張らなくては実現できない運動量です。運動別に、その運動だけなら何分を目安にしたらよいか表(下)にしましたので参考にしてください。

 私自身は、この運動習慣は簡単ではないと感じながら、少しずつ努力している最中です。生活スタイルの改善は、急速に進めるとかえって体調不良となることもありますので、無理のないペースで進めることが大切です。