【県岐阜商12―2関商工 秋季岐阜県大会準決勝】

 県岐阜商打線がついに覚醒した。エース森厳徳がまさかの2失点を喫した、立ち上がりのいやなムードを主砲の一撃が激変させると、期待の左打者大野友也が右前適時打。これまでつながりが今ひとつだった、強打線が真価を発揮する。二回には打者12人で7安打、5連続適時打などで7得点、鍛治舎巧監督による連日の超過酷な特訓の成果が実を結び、地区大会初戦以来のコールド勝ちで、勢いに乗る関商工を粉砕した。

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主砲加納の一撃が流れを一変させる

 「2点取られ、正直、大丈夫かなというムードがチーム内にあった」と振り返る2番の主将日比野遼司が四球出塁したが、2死となり、打席には加納。準々決勝・岐阜聖徳戦の中堅越え適時二塁打などいい感触をつかんでいた主砲。3球連続ボールに鍛治舎監督からの「甘いストレートを狙え」との指示に応えた。4球目は、内角寄り真ん中のシュート気味直球。会心の一撃は左翼席に飛び込み、猛打爆発の口火を切った。

県岐阜商×関商工=1回裏県岐阜商2死一塁、加納が同点の2点左越え本塁打を放ち、本塁を踏む=長良川球場

 一振りで流れを変えられる存在感の大きさこそ、名門の主砲の役割。コロナ禍で不運を味わった2020年、鍛治舎県岐阜商の最強チームの主砲佐々木泰(青学大)を思わせるが、次打席からは凡打が続き、「2打席以降がものたらない」と、指揮官はさらなる奮起に期待する。加納も「チームの勝利にこだわっていきたい」と気合いを込める。

期待の大野友也が適時打 5連続適時打で強打線がついに本領

 加納のつくった流れは連続四球を呼び、2死一、二塁。打席には7番に下がった大野友也。実は前チーム段階から、鍛治舎監督が「左翼は大野友」と構想にあげてきた期待の左打者。新チーム発足後、思うような結果が残せずにいたが、今夏の甲子園開幕日の8月6日に滋賀県の皇子山スタジアムで行った大阪桐蔭との練習試合がターニングポイントとなった。サヨナラ勝ちした第2試合で八回に同点のきっかけをつくる右越え二塁打を放った。「それまで、打ち急いでボール球を打ち損なっていたのが、しっかり見極めて打てるようになるきっかけになった」と大野友。さらに「しっかり後ろに体重を残し、かかとに重心がかからないようにした」とフォームも固め、以来、レギュラーの座を勝ち取った。

県岐阜商×関商工=1回裏県岐阜商2死一、二塁、大野友が勝ち越しの右前適時打を放つ=長良川球場

 この日の関商工戦、一回2死一、二塁の第1打席。狙い定めたスライダーをきっちりとらえ、右前適時打。続く二回の第2打席も佐藤勇我、葛山陽平の連続適時打の流れに乗り、またもやスライダーを右前適時打。大東要介、森も続き、5者連続適時打は強打線の完全覚醒の証しとなった。

県岐阜商×関商工=力投する県岐阜商のエース森=長良川球場

 準々決勝でのエース森に続く、強打線の覚醒で、名門100周年世代の上昇気流はとどまるところをしらない。目指すは、もちろん戦後初の甲子園制覇だが、まずは、3年ぶり24度目となる秋の県制覇をしっかりとつかみ取る。