循環器内科医 上野勝己

 心臓の鼓動が鳴り響いて眠れない。突然動悸(どうき)がする。あるいは脈が飛ぶなどの症状があると不整脈が疑われます。不整脈がめまいや失神の原因となっていたり、悪性の場合には突然死を起こすこともあります。

 正常の心臓はどのように動いているのでしょうか。心臓は心筋細胞という筋肉でできていて、四つの部屋(右心房、右心室、左心房、左心室)があります。この四つの部屋を順番通りに動かしているのが、刺激伝導系と呼ばれる、心臓の中の電気回路です。この電気回路をコントロールするのが右心房にある洞結節です。洞結節は自律神経によって安静時の脈拍が50~100回/分になるようにコントロールされています。

 不整脈には、洞結節の自動能の低下や電気回路そのものの断線によって脈拍数が極端に下がる場合(徐脈性不整脈)と、この電気回路を通さない電気の流れが心臓内に生まれ、異常な拍動が起きて脈が飛ぶ場合(期外収縮)があります。この期外収縮が連続すると異常に速い脈拍数(140/分以上)になり、動悸が止まらなくなります(頻脈性不整脈)。期外収縮と頻脈性不整脈は、異常収縮が心臓のどの部位から出てくるかで区別され、心房性(上室性)期外収縮、心室性期外収縮、心房頻拍(上室性頻拍)、心室頻拍などと呼ばれます。脈拍があまりに速くなり過ぎると心臓は収縮できなくなり、ぶるぶると細かくけいれんして止まった状態になります。これが心房細動と心室細動です。

 徐脈性不整脈では脈拍数が落ちて脳血流が低下することで、頻脈性不整脈では脈が速すぎて血圧が低下することで、めまいや失神が起きます。また期外収縮の後の正常収縮は、期外収縮で起きた不十分な収縮を補おうとして、より強い拍動となることがあります。ドクンと強く心臓の拍動を感じますが、症状の出方には個人差があり、無症状から、日常生活にかなりの制限を受けるほど強い症状が出る人までさまざまです。

 徐脈性不整脈はペースメーカーの植え込みが必要になります。頻脈性不整脈は心室性では突然死を来す危険な場合があります。いずれも、薬物治療やカテーテルアブレーション、または植え込み型の除細動器が対象となることがあります。

 不整脈の多くは良性ですが、不整脈の形、頻度、運動との関連性、心臓に他の病気(心筋梗塞、弁膜症、心筋症や心不全など)があるかどうかを調べることが大切です。

 不整脈はいつも出るとは限らず、1枚の心電図では判定ができません。このため、ホルター心電計と呼ばれる機械を体に着けて24時間の心電図を解析します。以前は弁当箱ほどの大きさで重く、腰にベルトを巻いて取り付けていましたが、小型化されて6センチ四方、70グラムと軽量になりました。入浴も可能な防水型、同時に血圧や無呼吸の検査も行えるものも出てきました。ところが、取り付けた24時間以内に不整脈が出ず、正しい診断ができないということもあります。今年から、3×4センチ、25グラムと超軽量で、胸に張り付けて14日間連続で心電図を記録できる心電計が利用できるようになりました。防水仕様で入浴も問題ありません。より正確な診断ができるようになります。

(松波総合病院心臓疾患センター長、羽島郡笠松町田代)