脳神経外科医 吉村紳一氏

 こんにちは、吉村です。この欄では「脳卒中予防に関する最新情報」を紹介しています。皆さん、一緒に勉強しましょう! 今回も「開頭手術」の詳細についてお話しします。

 皮膚を切り、骨の一部を開けると、その下には硬膜と呼ばれる硬い膜があり、それを切るとすぐ下に脳の表面が見えてきます。脳の表面には「くも膜」という半透明の薄い膜があり、その下に動脈と静脈が透けて見えます。

 手術用の顕微鏡で見ると、ミクロの世界の脳はとてもきれいです。しかし、脳の太い血管などの重要な構造は表面からは見えません。どうやって手術をするのでしょうか?

 脳の手術といってもいろいろとありますが、例えば脳血管の手術では脳と脳の隙間を開けて、目的の動脈を露出する必要があります。顕微鏡で拡大した状態で、くも膜を丁寧に切っていくと脳と脳の隙間が自然に分かれてくるのです。

 そうすると、やや太めの動脈と静脈が見えてきます。これをたどっていくことで目的の血管を露出するというわけです。

 慣れた術者なら、脳の血管を全て温存して、脳を傷つけずに操作を行うことができます。そのような場合には、脳の障害が出ることはまずありません。

 このように開頭手術では、脳をできるだけ優しく扱うことが重要です。脳を守りながら手術を進めることに、私たち術者は細心の注意を払っているのです。

(兵庫医科大学脳神経外科主任教授、大垣徳洲会病院外来担当)