中央競馬のオークス、ダービーの季節が今年も到来した。今となっては夢物語のようではあるが、牝馬クラシックレース最高峰のオークスでは、笠松所属馬が何と1番人気になったことがあった。
1995年春、この年のオークスは、桜花賞に続いて笠松のライデンリーダー(荒川友司厩舎、安藤勝己騎手)が単勝3.2倍で1番人気になった。桜花賞トライアルの「報知杯4歳牝馬特別」(現3歳、フィリーズレビュー)では、「鳥肌が立った」というファンも多かったほどの豪脚で圧勝し、桜花賞出走権を獲得。当時の岐阜新聞「記者ノート」に次のような記事を出稿した。
■人馬一体の快進撃期待
地方から中央の舞台に躍り出たニューヒロイン-。笠松競馬所属の牝馬ライデンリーダーが中央競馬でのデビュー戦を圧勝し、桜花賞(GⅠ)への出走権を獲得した。同じ笠松育ちで国民的アイドルホースとなったオグリキャップ、昨年の桜花賞馬オグリローマンに続くか。地元笠松の期待は大きい。 ワカオライデン産駒のライデンリーダーは、笠松での10戦10勝を含め通算11連勝と女傑ぶりを発揮。今年から地方所属馬にも中央GⅠレースへの参戦が認められ、笠松の名手・安藤勝己騎手(17年連続リーディングジョッキー)とのコンビで、大舞台に挑むことになった。 「中央のGⅠレースに出ることが夢だった」と安藤騎手。「笠松での調教や出走も考えている」と荒川友司調教師。地元ファンのロマンを乗せ、人馬一体の快進撃を期待したい。
(1995.3.24)
地方馬が中央のエリート馬をなぎ倒す姿にファンは心を躍らせ、桜花賞に挑戦するライデンリーダーの人気が沸騰。地方・中央交流元年のアイドルホースとして、地元・笠松でのライデンフィーバーはすさまじかった。桜花賞追い切りには、全国から取材陣約100人と一般ファン約30人が早朝から詰め掛け、力強いフットワークに熱視線を送った。報知杯での衝撃的な勝利に、地方在籍のままでのクラシックレース制覇の期待が高まった。
本番の桜花賞では単勝1.7倍の圧倒的1番人気。中団後方から進み、最後の直線では内で包まれ、追い上げたが4着に終わった。トライアルの報知杯がピークだったのか、「とにかく残念。うまく流れに乗れなかった」と騎乗したアンカツさん。ワンダーパフュームが勝ち、ダンスパートナーが2着だった。
近年、地方所属馬が中央のGⅠ舞台に立つことは難しくなっているが、ライデンリーダーは、オークス出走権(桜花賞4着まで)も獲得。「差し届かず、負けて強し」の印象からか、中央挑戦で活躍馬が目立つ「笠松ブランド」への熱気は冷めなかった。オークス追い切りにも26社の報道陣が笠松に集まり、併せ馬で5馬身ほど先着したライデンリーダーに、関係者やファンは期待を膨らませた。
今年と同じ5月21日、東京競馬場で行われた22年前のオークス。女性客も多く、華やかな雰囲気の中、「中央のGⅠを制覇したオグリ兄妹の夢よ、もう一度」と、多くのファンの期待を背負って、再び1番人気となったライデンリーダー。陣営は、10連勝した笠松時代のように、スピード能力の高さを生かした持ち前のレース運びに懸けていた。
舞台は2400メートルの芝コースで、ライデンリーダーは出走18頭の最内枠。馬体重440キロはマイナス8キロで、連勝中だった頃の460キロ台と比べてかなり細くなっていた。「内で包まれては不利」とみたアンカツさんは、思い切った先行策で、逃げ馬の2番手からレースを進めた。3、4コーナーの中間でライデンリーダーが先頭に躍り出ると、場内は大きな歓声に包まれた。長い最後の直線、報知杯で見せた豪脚が期待されたが、距離の壁があったのか、ラストの伸びを欠いて、自慢の末脚はバッタリ止まってしまった。
まさかの光景にファンの歓声は悲鳴に変わり、ライデンリーダーは13着に沈んでしまった。食欲が落ちて、体重を減らしていたこともレースに影響したようで、「力があれば、直線で抜けてきたはず。距離も長過ぎた。秋にいいレースがあれば挑戦したい」と荒川調教師。外から鋭く伸びたダンスパートナー(武豊騎手)が制覇した。
今年のオークスは桜花賞1~3着のレーヌミノル、リスグラシュー、ソウルスターリングが上位人気。リスグラシューは、ハーツクライ産駒で距離が合い、武豊騎手とのコンビで最有力候補。過去10年で桜花賞出走馬が8勝しており、3強の組み合わせで決まる可能性が高い。2009年、強烈な追い込みで制覇したのは、アンカツさん騎乗のブエナビスタだった。波乱を呼ぶなら、ここ5年連続で連対を果たしている地方競馬出身騎手の騎乗馬か。ディアドラ(岩田康誠騎手)、ディーパワンサ(内田博幸騎手)、フローレスマジック(戸崎圭太騎手)の3頭が馬券的には面白い存在。