笠松競馬場でデビューを果たし、闘志を燃やす長江慶悟騎手

 長江慶悟騎手(20)が5日、笠松競馬場で待望のデビューを果たした。後藤佑耶厩舎に所属し、初日は5頭に騎乗。6着が最高だったが、先輩たちの背中を追って、懸命にゴールを目指した。雨天となった開催3日目には、返し馬の途中、落馬事故に遭い負傷。初勝利はしばらくお預けになりそうだが、レース復帰後の活躍を願って、応援を続けていきたい。

 まずはデビュー初日の第2R終了後、ファンの前で長江騎手の紹介セレモニーが開かれ、フレッシュな勝負服姿が輝いた。中央スタンド前(西スタンド寄り)の規制エリア内で行われ、距離を保ってのファンとの対面、記念撮影となった。サインをお願いしたり、プレゼントを手渡して交流することはできなかったが、笠松にも競馬場らしい活気が戻ってきた。セレモニー前には、ファンへのプレゼントとして、長江騎手のサイン入りポストカードや缶バッジが贈られた。

後藤佑耶厩舎に所属。初勝利を目指してレースに挑んだ長江騎手

 「デビューおめでとう」の声には、「すごく緊張していて、気付いたらゴールを過ぎていました」と、10着に終わった初戦を振り返った。ジョッキー人生の第一歩を踏み出し、「少しでも多く騎乗依頼を頂けるようになりたい。目標としている先輩は、藤原幹生騎手です。これから笠松競馬で頑張っていきますので、応援をよろしくお願いします」と元気よくアピール。来場者から「頑張れよー」と大きな声援と拍手が送られた。藤原先輩は憧れの存在で「攻め馬からちゃんと乗られている姿や、力強く追い込むレースぶりを見習いたいです」と話し、豪快な差し切りVを夢見ているようだった。
             
 長江騎手は愛知県春日井市出身で、3人兄弟の長男。この日は両親も応援に駆け付け、紹介セレモニーでは一緒に並んで、ファンとともにデビューを祝福した。父は「性格的には遠慮しがちなところもありますが、先生から『前向きにいけ』と言われています。馬主さんら皆さんにかわいがられ、声を掛けてもらえるジョッキーに」と期待。「プロの馬乗りとして、周りの人に感謝の気持ちと謙虚さを忘れずに頑張ってほしい」とも。母は「優しい子で、我慢強いです。小さい頃から乗馬をやっていたわけでもないのに、ジョッキーになれた。夢がかなって素晴らしいです」と、わが子の成長を喜んでいた。

長江騎手の紹介セレモニーには両親も駆け付けて、集まったファンとデビューを祝福した

 所属する後藤佑耶厩舎は今年、調教師リーディングの5位に躍進(昨年10位)。佑耶調教師の奥さんは、東門近くの愛馬会売店(コロナ対策で休業中)のスタッフとして競馬場活性化もサポート。「(慶悟君は)真面目でいい子。今は言われたことをやるだけですが、プロ意識を出して食らい付いていけるといい。明るいし、頑張ってほしい」とエールを送っていた。

 半年間励んだ笠松実習では、早朝の調教から先輩騎手たちに鍛えられた。初日3頭だった攻め馬は、徐々に増えて25頭ほどになり、多くの経験を積んで騎乗技術を磨いた。レースを終えた先輩たちの馬具の手入れでは、ベテランの向山牧騎手から「遅いぞ、まだか」などと厳しい声も飛んでいた。これについては「厩舎暮らしなどで、慶悟君は牧さんと仲が良くてね。かわいがってもらって、(競馬について)いろいろと教えてもらっている」とのことだった。

 来場者からは「笠松に新人騎手が入ってくれて、うれしいです。(不足していた)所属騎手が14人から15人に増えて良かった。(水色十字たすきの)勝負服は黒い部分も新鮮ですし、若手の活躍で観客増につながるといいです」と期待する声も聞かれた。
「プロ野球・ロッテの佐々木朗希投手に似ているとよく言われる」(本人、両親)そうで、職場のロッテファンに写真を見せて聞いてみると、やはり一番に「(似ているのは)佐々木投手」の名前が挙がった。

 ■返し馬の途中、落馬のアクシデント

 「早くレースに慣れて、初勝利を飾りたい」と闘志満々だったが、開催中にアクシデントが起きてしまった。3日目第7R、長江騎手は自厩舎のタッチウェーブ(牝3歳)に騎乗予定だったが、レース直前に行われた返し馬の途中、落馬して病院に運ばれた。第2コーナー辺りで振り落とされたようで、騎乗馬と接触し、肝臓に損傷を負った。このため、第7Rと翌日のレースは騎乗変更になった。

 ジョッキーには常に落馬事故の危険があり、命懸けの真剣勝負である。厩舎スタッフは絶えず馬体の状態に気を配るが、競走馬はいつどんな動きをするか分からない。ジョッキーは、けがとの闘いでもある。昨年には、デビュー3カ月の東川慎騎手がレース中の落馬事故に巻き込まれて大けがを負ったが、復帰後は勝利を重ねている。長江騎手はデビューしたばかりで、いきなり試練を迎えてしまったが、我慢強くゆっくり治してもらいたい。そして、競馬場で元気な姿を見せて、ファンの前で初勝利のゴールを飾ってくれたら最高だ。

湯前良人厩舎所属の深沢杏花騎手。遠征競馬が増え、南部杯にもチャレンジする

 ■「花・花」がGⅠ・南部杯で初対決へ

 盛岡競馬場では深沢杏花騎手(笠松)、関本玲花騎手(岩手)の「花・花コンビ」初対決が実現する。12日に行われるGⅠ「マイルチャンピオンシップ南部杯」(ダート、1600メートル)に、笠松勢3頭が挑戦。栗本陽一厩舎のキタノイットウセイ(牡10歳)に池田敏樹騎手が騎乗。湯前良人厩舎からはナラ(牝4歳)のほか、補欠繰り上がりでリンクスゼロ(牡6歳)が参戦。ナラに深沢騎手、リンクスゼロには関本騎手が騎乗することになった。

 深沢騎手は笠松でナラに騎乗し、逃げ切りVを飾っており相性が良い。リンクスゼロは白山大賞典で12着(深沢騎手)、笠松での前走・JRA交流戦では8着(高木健騎手)。南部杯には中4日で挑むことになった。関本騎手は笠松での実習や期間限定騎乗で、深沢騎手が所属している湯前厩舎で世話になった縁もあり、騎乗依頼を受けた。

 JRAからは昨年Vのサンライズノヴァをはじめ、フェブラリーSを制覇したインティ、ゴールドドリーム、モズアスコットなどのGⅠ馬が勢ぞろい。JRA勢での上位決着が濃厚だ。

 笠松勢のナラとリンクスゼロの比較では、佐賀サマーチャンピオン(GⅢ)6着のナラの方が格上。深沢騎手には、関本騎手へのライバル意識もあるようで、騎乗ぶりが注目される。キタノイットウセイは、全国のダートグレード戦線に挑み続けており、池田騎手の手腕に期待したい。超強力メンバーが相手で、JRA勢の後ろを付いて回るだけになりそうだが、地方馬9頭のうちでは最先着を目指したい。

 GⅠステージでの女性ジョッキーの挑戦は、地方競馬を華やかに盛り上げてくれる。「花・花」の初対決は笠松ではなく、盛岡が先になってしまったが、深沢騎手と関本騎手にとっては、パドック周回から熱視線を浴び、JRAのファンにもアピールできる大きなチャンス。日本のトップジョッキーたちの騎乗ぶりから何かを学んで、今後の成長につなげてほしい。

 ■ダービーグランプリ、笠松のダルマワンサは10着

 4日に盛岡競馬場で行われた「ダービーグランプリ」(3歳、2000メートル)は、高松亮騎手騎乗のフレッチャビアンカ(牡3歳、岩手)が好位から抜け出して優勝した。笠松から参戦した岐阜金賞馬ダルマワンサ(牡3歳、田口輝彦厩舎)は7番人気。筒井勇介騎手が騎乗し、後方2番手から末脚に懸けたが、伸び切れずに10着に終わった。筒井騎手は19日、各地方競馬のリーディング12人が腕を競う「ジョッキーズチャンピオンシップ」(盛岡)にも初挑戦。1日2競走で地方競馬No.1ジョッキーの座を争う。笠松リーディングとして、岩手の地でも1着ゴールを狙いたい。