ライデンリーダー記念をフーククリスタルで制覇した高木健騎手

 笠松競馬・最年長ジョッキーの愛馬が先頭で4コーナーを回り、スタンドから大きな拍手が沸き起こった。コロナ禍で声援は控えるべきだったが、ゴールインでは、うれしくて「たかぎー」と叫んでしまった。

年末の30日に笠松で行われた第24回ライデンリーダー記念(1400メートル、SPⅠ)は、高木健騎手(56)=水野善太厩舎=が騎乗した3番人気・フーククリスタル(牡2歳、井上孝彦厩舎)が逃げ切って制覇。高木騎手は12年ぶりの重賞Vを飾った。

 ライデンリーダー記念は、2012年から牝馬限定で行われていたが、再び牡馬も参戦可能になった。フーククリスタルはスピードを生かして快調な逃げ。最後の直線では、外から金沢のマナバレンシアが強襲。ヒヤリとしたが、「早く、先にゴールしてくれ」という笠松ファンの願いが届いたようで、何とかクビ差で押し切ってくれた。

 高木騎手としては、前走のジュニアキングで吉原寛人騎手騎乗のベニスビーチに差し切られて、悔しいハナ差負け。ライデンリーダー記念では、騎乗馬をゴールまで持たせて粘り込み、ベテランの手腕が光ったレースになった。

 高木健騎手 「光栄でうれしいです。4コーナーではフワフワしたが、最後は何とか粘ってくれと。ゴールでは勝ったと分かりました。前回は気性面から負けたことが悔しかった。今回は仕上げてくれた厩舎のスタッフさんに恩を返せて良かったです。逃げた方が持ち味を発揮する馬。距離を持つようにして、今後は東海ダービーなどに向けて成長していけるといいです」  

ライデンリーダー記念で12年ぶりの重賞Vを飾った高木騎手と喜びの関係者

 高木騎手は2017~19年の年間騎乗数が100戦余りで、勝利数は15、14、10と減っていた。それが昨年は222戦して28勝を挙げ、前半戦は勝率の高さが目立った。重賞は7勝目。08年、ロードバクシンでのくろゆり賞以来となった。アラブダービー(1993年、フワノフレーム)、名古屋杯(99年、マルタカフレンズ)も勝っており、オールドファンには懐かしい馬たちを重賞Vに導いた。

 ライデンリーダー記念Vは、地方競馬通算では「1」並びの1111勝目。生え抜き馬で達成した。高木騎手も1982年デビューで笠松一筋に38年。出走表に▲印が付いていた新人時代に穴馬を好走させてくれて、馬券でお世話になったことが懐かしく思い出される。装鞍所では、若手騎手の背後でVサインを見せてくれる愉快なおじさん。向山牧騎手とともに還暦ジョッキーを目指してほしい。
               
 ■県馬主会「抽選馬」が大当たりの重賞V

 ライデンリーダー記念を勝ったフーククリスタルは、岐阜県馬主会が昨年5月に行った2歳馬の抽選馬事業で購入した5頭のうちの1頭。函館でのトレーニングセールはコロナ禍で中止になったが、吉田勝利馬主会副会長は「牧場にかけあって、せり名簿で予定していた5頭を購入しました。1頭500万円ほどでしたが、抽選の結果、100万円で競馬場渡しにした馬たちです。このうち、フーククリスタルとスーチャンの2頭がライデンリーダー記念に出走。抽選馬から重賞勝ち馬が出たのは初めてことで、馬主会としても大変喜んでいます」と満足そう。

 抽選参加者にとって、希望馬を格安で購入できる当たりくじを引き当てる確率は4分の1ほど。「KIZUNA組合」がオーナーとなったフーククリスタルは、高木騎手の手綱さばきに応えた果敢な逃げで「大当たり」の幸運をもたらしてくれた。昨年は5頭のうち1頭について、ファンからの馬名募集も行われ、キソノクィーン(木曽川と女王をイメージ)=山際孝幸厩舎=が誕生。12月の笠松デビュー馬未勝利戦(向山牧騎手)で初勝利を飾った。

 馬主会の会員数はピーク時に比べ半数以下。減少していた笠松の競走馬数は、増えつつあるが約530頭で、名古屋の約730頭より少ない。笠松新春シリーズ初日は、終盤3レースが6頭、5頭、5頭立てと寂しいゲートが続いた。年末特別シリーズから連闘の馬がほとんどだった。

 1月からは笠松競馬の賞金・手当も増額されており、全国の馬主さんにはより多くの競走馬を笠松の厩舎に預けていただきたい。抽選馬事業は昨年が最後の年となり、今年からは新たに補助馬事業に移行するという。「全国の舞台で活躍できる強い馬を育ててもらい、笠松競馬をどんどん盛り上げていきたい」と願ってきた馬主会。期待に応えてくれたフーククリスタルは、地元中心のローテが予定されており、笠松、名古屋での重賞戦線で、高木騎手を背に飛躍する姿を見せてほしい。

東海ゴールドカップは加藤聡一騎手が騎乗した名古屋のウインハイラントが優勝。2着はニューホープ

 ■東海ゴールドカップは名古屋のウインハイラント制覇

 雪が舞う中、年の瀬を彩った東海ゴールドカップ(1900メートル、SPⅠ)は、加藤聡一騎手騎乗の名古屋・ウインハイラント(牡6歳、坂口義幸厩舎)が5番人気で制覇した。4番手から3コーナーでは先頭を奪い、昨年覇者の笠松・ニューホープの追い上げをかわし、4分の3馬身差で押し切った。重賞は初勝利。9連勝中で単勝1.0倍と人気を集めたキースペシャル(牡4歳、川西毅厩舎)は3着に沈み、3番人気のダルワワンサは6着に終わった。

 加藤聡一騎手 「しぶとさを発揮して、最後まで踏ん張ってくれた。好位置から折り合いがついたんで、ロスなく運べた。坂の下でスピードが出せ、3コーナーでは先頭に立ち、後続馬がいつ来てもいい状態に。キースペシャルには楽をさせず、うまく内に閉じ込める形になって、こちらとしては良かったです」

 加藤騎手は、名古屋で重賞Vがないのに、笠松では3勝目と得意のコース。くろゆり賞をヴェリイブライトで、岐阜金賞をダルマワンサで制している。坂口義幸調教師(58)にとっては、東海地区では初めての重賞勝利で、喜びは格別となった。ウインハイラントの次走は笠松のウインター争覇(2月4日)を予定している。

 2着・ニューホープ=岡部誠騎手=は中団からスパートし、勝ち馬を追い上げたが、もう一伸びが足りずに連覇を逃した。3着・キースペシャル=戸部尚実騎手=は3コーナーへの勝負どころで笠松勢に包囲されるなど、ちぐはぐな競馬になり、最後の直線で猛追したが手遅れだった。

年末開催の入場者は500人前後で、場内の売店に並ぶ人の姿は少なかった

 ■コロナ禍、上限1000人でも入場は半分程度

 一昨年末には3日間で1万人を超える入場者があった笠松競馬場。昨年末はコロナ禍のため、上限1000人での事前応募となり、往復はがきのみで受け付けた。初日・28日の入場者は274人と寂しい数字。29~31日も567人、524人、499人と上限の半分ほど。当選はがきを持たずに訪れて、入場を断られたファンも多かった。

 はがき1通で3人(人数を記入)までの応募が可能だったが、「落選にならないように、3人がそれぞれ応募したケースもあった。年末開催を楽しみにされているファンは多く、新聞などでもお知らせしていましたが...」と競馬場サイド。
 
 整理券を配って先着順にしていれば、確実に1000人は入場できただろうが、残念だった。笠松の常連客は、スマホでのネット投票などやったことがなく、紙の馬券を手にして生観戦を楽しむスタイルが多い。「きょうは暇だから、笠松に遊びに行こうか」という感じだろう。当選はがきを持たないファンは名古屋場外に流れたようで、30日には1631人もの入場があった。
 
 笠松競馬場内の売店では、お客さんの姿はちらほら。焼きそばや串カツを買い求めながら聞いてみると「今年はすごく少なくて、並ばなくても買えます。いつもは行列ができるのに...」と残念そう。場内は雪景色となって、寒さが身に染みた。

 県地方競馬組合管理者の古田聖人笠松町長は「1000人の入場制限のため、抽選方式にしましたが、実際の入場者数は大きく下回ってしまいました。もう少し知恵を絞るべきだったと、反省しています」とツイッターでコメントした。

 1月4日、名古屋競馬場での新春シリーズ。正門では「当選はがきを持たないで来た人を200人までカウントしました。(最終的には)250人ほどの入場をお断りしました」とのこと。「新年の運試しで、せっかく来たのに門前払いでは...」などとがっかりして帰った人も多かったことだろう。
 
 一般席への入場応募はインターネット、場内応募箱への投かん、封書による郵送の3種類で上限1000人。4日の応募は約800人で全員が当選(1通で2人まで入場可)したが、当選はがきを持って入場した人は半数ほどの431人だった。有料席へはインターネット予約で対応。4日はグリーンホール(上限300人)に288人、特別観覧席(上限200人)には193人が来場。午後1時以降は、キャンセル待ちのファンが入場した。それでも計921人と少なかった。

 笠松競馬にも有料席の特別観覧席、ユーホールがあるが、空席が目立った。コロナ禍が長引きそうで先が見えない現状だが、JRA(中山)や南関東のように無観客レースの再開にはならないよう願いたい。例年、盛況となるオグリキャップ記念開催日をはじめ、お盆や年末開催では有料席のインターネット予約なども取り入れて、一人でも多くのファンに入場してもらいたい。