小児科医 福富悌氏

 入学式や新学期の季節がやってきました。新しい気持ちになり、新しい世界に希望が広がる季節です。昼間は暖かくなってきましたが、朝夕はまだ時々寒さを感じることもあります。この頃になって、スギの花粉の飛散が落ち着いてきたのに鼻炎症状が長引くことがあります。これには自律神経の乱れが関わっていることがあります。

 季節の変わり目には1日の気温差が大きくなります。この温度差が刺激となって自律神経が反応することにより、鼻の粘膜の血管が広がり、粘膜が腫れます。鼻炎症状は、そのことによって引き起こされる血管運動性鼻炎と考えられます。このような、温度差による鼻炎症状は温度差が7度以上になると出やすいといわれ、特にスギの花粉症で鼻の粘膜が過敏になっていると症状が出やすくなります。

 また、朝起きた時に自律神経が副交感神経優位から交感神経優位の状態に切り替わる事によって、一時的にバランスが乱れて鼻が刺激過敏になり、鼻水、鼻詰まりの症状が出ることがあります。さらに、空調が完備された環境で生活することが多いと自律神経が整いにくくなってしまいます。その他、自律神経は気候、気圧やストレス、生活リズムの乱れなどにも影響されます。

 そのため、花粉の飛散が少ない日や、雨の日の鼻炎症状に、アレルギーを抑える薬を使用していても症状が改善しない場合には、体調を整える漢方薬が効果的なこともあります。

 薄い水様の鼻水やたんの場合は小青竜湯(しょうせいりゅうとう)。鼻詰まりや喉の炎症がある場合は荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)。さらに鼻詰まりが強くなった場合は葛根湯加川芎辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)。鼻炎症状に手足の冷えがある場合は麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)などを用いるとよいでしょう。また夜更かしや生活リズムの乱れにも注意しましょう。漢方薬を使用するときは漢方薬に詳しい医師や薬剤師にまず相談しましょう。

(福富医院院長、岐阜市安食)