精神科医 塩入俊樹氏

 前回まで依存症について書いてきた5回分を振り返ります。

 ① 依存症は誰でもなる可能性のある心の病気で、特に海外にはないパチンコやスロットマシンが普及している日本ではその発生頻度が高い

 ② 依存症を引き起こす物質や行動(依存性物質・行動)には、アルコールやタバコなどの嗜好(しこう)品から麻薬性鎮痛薬や抗不安薬などの医薬品、あるいは覚醒剤に代表される違法薬物、さらに最近ではインターネットやゲームなどの習慣性の行動も含まれる

 ③ 原因は性格や意思が弱いためではなく、生命を維持し、種を保存するために必要な行動(食行動・性行動など)を維持するための「報酬系」と呼ばれている脳内の神経回路が関係する

 ④ 依存性物質・行動には耐性(慣れ)が生じてしまい、同じ快感を得るために量や頻度が増える

 ⑤ 急にそれらの物質や行動を止めるとさまざまな不快な症状(離脱症状)が出現し、「止めたい」「減らしたい」と思っても止められない―ことをお話ししてきました。

 これからの4回では、代表的な依存症についてお話しします。今回は、ごく最近、初めて病気として正式に認められた、ゲーム依存症(世界保健機関、WHOでは「ゲーム症(ゲーム障害)」という病名)について述べます。

 2018年に承認され、22年から施行予定の、WHOが定める国際疾病分類ICD-11によると、ゲーム症とは、少なくとも12カ月間にわたる“持続的または反復的なゲーム行動”があること。加えて、①ゲーム(例…コンピュータゲーム、インターネットによるゲームなど)をすることに対する制御ができないこと(例えば、ゲームをする開始時間、頻度、強度、持続時間、終了時間、状況を自分でコントロールできない)②ゲームに没頭することへの優先順位が高まり、他の生活上の利益や日常の活動よりもゲームをすることが優先されてしまうこと③ゲーム行動によって否定的な(マイナスの)結果が生じているにもかかわらず、ゲームの使用が持続、またはエスカレートしてしまうこと―の3点の特徴を満たすものです。

 さらに、ゲーム行動によって、個人的、家庭的、社会的、学業的、職業的に著しい支障が出ていることが条件となります。

 具体的には、ゲームをすることで、生徒や学生であれば学校に行けない、宿題や提出物などができないなど、社会人であれば仕事に行けない、仕事がおろそかになるなど、本来、その人がやらなければならないことが全くできなくなってしまうということです。ちなみに、このゲーム症は、ゲームがオンライン(インターネット利用)かオフラインかで、さらに二つに分かれます。

 このように書くと、「うちの子は、絶対にゲーム症、ゲーム依存症になっている!」と確信する親御さんも多いことと思います。実際、岐阜県教育委員会の調査では、ゲーム症につながりかねない1日5時間以上のスマホ使用の児童生徒が、小・中学生で5%、高校生で15%程度、3時間以上では、中学生では5人に1人、高校生では実に半数近くが当てはまるといったデータがあります。ご心配ならば、ぜひ、一度、専門家の診察を受けるようにしてください。

(岐阜大学医学部付属病院教授)