放射線治療医 田中修氏

 きょう1月11日は鏡開きです。お正月に供えた鏡餅を割り、おしるこなどにして食べる日本の伝統行事。年神様と同じものを食べ、家族の無病息災を願うもの。皆さんにも良い一年になるといいですね。

 さて、話は変わりますが、がんになった場合、どのような変化が起きるのか一緒に見ていきましょう。

 がんと診断された場合、感情や考え方が変化する過程にはさまざまな側面があります。ダメージがもちろん大きいので、まずはその過程におけるマイナス面を述べたいと思います。

 ①心理的な苦痛 がん診断は精神的な苦痛を伴います。衝撃や不安、将来への不安などが引き起こされ、これらの感情は日常生活に影響を与えることがあります。

 ②治療の副作用 がん治療にはしばしば強い副作用が伴います。これにより身体的な苦痛や不快感が生じ、日常生活が制約されることがあります。

 ③経済的な負担 長期間にわたる治療や入院により、医療費が膨れ上がることがあります。これは経済的な負担をもたらし、家計に大きな影響を与える可能性があります。

 ④社会的な孤立 がんとの闘いは社会的な孤立感を生むことがあります。他者とのコミュニケーションが難しくなり、理解されにくくなることがあります。

 このようにマイナス面がありますが、全てが悪いことばかりではありません。次にプラス面を挙げたいと思います。

 ①強さの発見 がんとの闘いは、多くの人が自分に内在する強さや意志の力を発見する契機となります。逆境に打ち勝つための精神的な強さが芽生え、新しい力が湧き起こることがあります。

 ②人間関係の深化 がんの診断は家族や友人との絆を強化することがあります。共に困難に立ち向かうことで、お互いのサポートや理解が深まり、絆がより強固になることがあります。

 ③人生の優先順位の見直し がん診断を受けた人々は、人生の優先順位を再評価し、大切なものに焦点を当てることがあります。ささいなことに時間を浪費することなく、本当に大切な価値観を見つめ直すことができるでしょう。

 ④精神的な成長 がんとの闘いは、精神的な成長を促進することがあります。困難に立ち向かう経験は、感謝の念や深い洞察をもたらし、人々をより成熟させることがあります。

 がん診断は複雑で個人によって異なる経験です。先ほど挙げた側面は一般的な観点からの考察であり、実際の経験には個人差があります。ですので、マイナス面に心が傾きそうになった場合は、誰かに話す、患者会に行ってみる、などいろいろ行動することが大事だと思います。ただしインターネットは間違った情報の方が多いため、できるだけ見ないようにしましょう。セカンドオピニオンなども非常に有用だと思います。