高田明浩さんが小学4年生のときに粘土で作った将棋盤と駒

 将棋のしおり、将棋のキーホルダー、将棋のうちわ、将棋の定規、将棋盤と駒。息子の明浩が小学生のときに作った将棋に関係した工作は、たくさんあります。

 特に、4年生の秋に粘土で作った将棋盤と駒は、力作でした。私は、こんなにたくさんの駒を根気よく作ったんだなと、驚いたことを覚えています。

 息子は、1年生のときから3年生のときまで、毎年、夏休みに木製のパチンコ台を作るなど、工作が大好きな子でした。将棋大会の会場となっている施設で、工作体験などのイベントがあったときは、大会後に必ず参加していました。

 また、息子は、将棋を始めた頃、駒の音が好きだとよく話していました。そんな息子は、駒や盤に、早い時期からこだわりがありました。

 将棋を始めてまだ1年半しかたっていない2012年12月24日、私は、息子にせがまれて、駒を買いに名古屋の碁盤店まで行きました。息子は、どの書体にするか迷っていましたが、「水無瀬」という書体の駒を購入しました。息子は、その2年後にも、お年玉を持って、同じお店に駒を買いに出かけています。

 息子は、書体、駒や盤の材質、音などの違いについて、よく話してくれました。私は、木を彫って作られた駒は手間がかかっていてすごいなと感じましたが、その違いはよく分かりませんでした。

 しかし、第17回に登場したアマ四段の繁田浩一さんから、道具にこだわりを持つのも良いことだと伺い、たしかにそうだなと納得したことを覚えています。そんな繁田さんからプロ入りのときにいただいた大山名人の書体の駒は、今も息子の宝物です。

 息子はしばしば、一つ一つの駒を、椿(つばき)油を垂らした布で丁寧に磨いていました。駒が好きだからこそ、大切に扱っていたのだと思います。奨励会に入ると、棋士が対局で使う駒を磨くことも仕事の一つになりますが、それも苦にならないようでした。

 私は毎年、教室でけん玉大会を開いていますが、けん玉を大切に扱う子ほど上達が早いです。上手になる子ほど、たくさん練習して真っ黒になったけん玉を、ひもを変えてでもずっと使い続けようとします。

 元メジャーリーガーのイチロー選手がバットやグローブなどの道具を大事にし、入念にケアされていたことは有名です。道具を大切に扱う姿勢は、その物事に丁寧に向き合うことにつながり、上達に通じるように感じます。

(「文聞分」主宰・高田浩史)